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太子の霊木

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第二章

「四百年も違うから」
「厩戸皇子、聖徳太子が植えられた木ではないですね」
「科学的に考えるとね」
「そうですね」
「ああ、しかしな」
「子孫ですね」
「皇子が植えられて」
 飛鳥時代にというのだ。
「その子孫がだよ」
「今も二つの町にありますね」
「東近江市にな」
「そういうことですね」
「ああ、ただな」
「ただ?」
「思えばな」  
 腕を組んでだ、老人は学者に話した。
「その頃から今もな」
「木が子孫でも残っていることはですか」
「凄いよな」
「そうですね、千数百年前ですからね」
「その頃から残ってるからな」
「ええ、そして皇子が願われた様に」
「それでだよ」
 老人は学者に話した。
「今も仏教があるんだからな」
「滋賀県にも」
「凄いよ、そうなったのはな」
 それはというと。
「皇子のお願いがな」
「適いましたね」
「二本の木はその象徴だな」
「そうですね」
 学者もその通りだと頷いた。
「まさに」
「ああ、だからこれからもな」
「どちらの木もですね」
「大事にしないとな」
 老人は確かな声で言った。
「そうしないとな」
「駄目ですね」
「ああ」
「そうですね、ではこれから」
 学者は確かな声で言った。
「その二本のハナノキ達をです」
「その目で見て来るか」
「そうします」
 こう答えてだった。
 学者は実際に二本のハナノキ達を見た、するとどちらの木も立派に立って花を咲かせていた。その姿はまさに皇子の頃のままであったが彼が知る由もなかった、それでだった。
 見た後で老人にだ、彼は笑顔で言った。
「子孫でもですね」
「今も立派にあるだろ」
「はい、皇子のお心はです」
 御仏に対するそれはというのだ。
「今もありますね」
「そうだよ、だからな」
「地元の人達もですね」
「今も大事にしてるんだよ」
 そうしているというのだ。
「本当にな」
「そうしていますね」
「ああ、今もな」
 皇子のお心を汲んでというのだった、そしてだった。
 学者はこのことを大学に帰ると論文に書いた、そうしてまた書こうと思うのだった。


太子の霊木   完


                 2023・7・12 
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