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第二章

「あの国は地上の楽園とです」
「言われていましたか」
「はい」
「地上の楽園って」
 議員は稻垣の話にまさかという顔になって言った。
「あの国は」
「どう見ても違いますね」
「今地獄とです」
「私が言いましたね」
「私もそう思いますが」 
 とある店で共に食事を摂りつつ言った、食べているのはどちらもうどんである。
「違いませんよね」
「はい、その通りです」 
 稻垣も否定しなかった。
「あの国程酷い国はそうはないです」
「日本も色々問題がありますが」
 それでもというのだ。
「流石にです」
「あの国はまた」
「戦前の日本をあれこれ言う人もいますが」
「いや、戦前の日本普通に生きられましたよ」
 人がとだ、議員は自分のうどんである若布うどんをすすりつつ答えた。
「明治、大正と見事な文化も華開いて」
「食文化も発達して」
「悪い時代じゃなかったですよ」
「そうですね、ですが」
 それでもとだ、稻垣は話した。
「あの国はそんな文化も」
「得体のしれない個人崇拝って文化か」
「違いますね」
「変な銅像や絵や曲ばかりで」
 北朝鮮にあるものはというのだ。
「碌でもないですよ」
「あの国はそうですね」
「地上の楽園じゃなくて」
「この世の地獄ですね」
「そうですよ」
 まさにというのだ。
「そう言うしかないです」
「それが昔は地上の楽園で」
 そうした場所でとだ、稻垣は自分のうどんである釜あげうどんをすすりながら議員に話していった。
「身一つで行っていい、何も心配も苦労もない」
「そんな国だと宣伝していましたか」
「日本の知識人や政治家の一部が」
「大きな間違いですね」
「はい、それもオピニオンリーダーと言われる新聞や雑誌で」
 そうした媒体でというのだ。
「そうしていました」
「信じられないですね」
「権威ある人達が権威ある場所で言ったのです、しかも」
 稻垣は議員と向かい合いつつさらに話した。 
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