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全く逆

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第一章

                全く逆
 北朝鮮は地上の楽園と自称していた、そしてだった。
 日本の政治家や知識人の一部もその通りだと主張していた。
「いや、本当に素晴らしい国だよ」
「どんどん発展していってるし」
「住めば何の心配も憂いもない」
「まさに地上の楽園だよ」
「日本なんか比べものにならないよ」
 こう言っていた、しかも。
 それを一流と言われる新聞や雑誌で言っていた、それを聞いてだった。
「そんなにいい国ならな」
「日本にいても仕方ないな」
「俺達は所詮半島出身だ」
「日本人じゃないからな」
「それなら祖国に戻ろう」
「そうしようか」
「祖国に戻るのが筋だし」
 日本にいる朝鮮半島出身の人達特に北朝鮮が統治する地域にルーツを持つ人達はその話を聞いて本気で考えた。
「それにそんなに素晴らしい国なら」
「ああ、戻らないとな」
「心配も憂いもない」
「それこそ身体一つで行ってもいい」
「日に日にとんでもない勢いで発展していて」
「ものは何でもある」
「税金がないらしいな」
 知識人や政治家の一部が一流とされる新聞社や雑誌で言うことを聞いて考えるのだった。
「医療費とかもただらしい」
「そんないい国ならな」
「是非戻らないと」
「そして暮らさないと」
「祖国に戻ろう」
「そうしよう」
「偉い学者さんが言ってるんだ」
 ここでこうした意見が出た。
「政治家の人達だってな」
「実際に行ってみて言ってるんだ」
「それも新聞や雑誌で」
「新聞は嘘を吐かないぞ」
「一流の雑誌だってな」
「なら間違いない」
「戻って幸せになろう」
 地上の楽園に入ってとだ、彼等は決断を下した。そうして。
 多くの者が新潟の港から北朝鮮に帰って行った、彼等は幸せになったと多くの者が思った。だがその後で。
 八条大学教授稻垣武志、四角い顔で穏やかな顔立ちで小太りの身体で黒髪が少なくなってきている彼が若い当選したばかりのとある地方議員とたまたま出会った時にこう語った。
「今北朝鮮のことが話題ですね」
「はい、滅茶苦茶酷いですね」
 議員は稲垣に難しい顔で答えた。
「あの国は」
「あの国はずっとです」
 稻垣は議員に話した。
「実像がわからなかったんですよ」
「テロとかやってますよね」
「飢餓状態で何もないですね」
「それに核兵器の製造とか」
「軍隊ばかり力を入れてますね」
「言論の自由はなくて強制収容所もある」
「この世の地獄ですね」
 稻垣は言い切った。
「そうですね」
「そうとしか言えないですね」
 議員もこう返した。
「あの国は」
「ですがずっとです」
 稻垣は議員にそれでもと話した。 
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