イベリス
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第百二十四話 相手の好みその八
「死ぬ人もね」
「いるのね」
「だからね」
それでというのだ。
「そんなこと言えるのも」
「生きてこそなのね」
「癌とかね」
母は真っ先にこの病気を挙げた。
「なるから」
「癌ね」
「これはなるのよ」
咲に嫌そうな顔で答えた。
「なる時はね」
「どうしてもなの」
「そうよ」
否定せずに言うのだった。
「これがね」
「私もよね」
「お母さんだってよ」
「人間誰でもなの」
「病気になってね」
そうしてというのだ。
「癌にもよ」
「そうなのね」
「だからね」
それでというのだ。
「四十代になるまでよ」
「いなくなる人もいるのね」
「そうよ、だからね」
「太ってるとか言えるだけ」
「いいのよ」
「生きてるってことだから」
「そう、生きてこそね」
そうであってこそというのだ。
「いいのよ」
「ううん、十代でもなのね」
「ええ、今からでもこうしたことはね」
「頭に入れておくことね」
「そうしてね」
咲に言うのだった。
「いいわね」
「わかったわ」
咲もそれならと頷いた。
「そうしていくわね」
「お願いね」
「歳取ったら気を付けないと太って」
「髪の毛がなくなったりね」
「そうしたことを言えるだけいい」
「全部覚えていてね」
「太ったとか髪の毛とか」
咲も言った。
「嫌なことでも」
「そうしたことが言えるのは生きてるからでね」
「死んでると言えなくて」
「歳取っていくとね」
「死んでいくのね」
「クラスメイトがね」
母ば微妙な顔になって話した。
「いなくなるのよ」
「生きていったら」
「徐々にね、それでわかるわよ」
「そう思えるだけ幸せね」
「それに癌にでもなったらね」
「また言うのね、癌のこと」
「怖いからね」
どうしとという言葉での返事だった。
「お母さんにとっては」
「お母さん癌怖いのね」
「嫌いでね、だからね」
「今私にも言うのね」
「そうよ、なったらね」
その癌にというのだ。
「一発で痩せて髪の毛もよ」
「抜けるの」
「抗癌剤使ったら」
その時はというのだ。
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