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魔法戦史リリカルなのはSAGA(サーガ)

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【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
 【第2章】StrikerSの補完、および、後日譚。
  【第8節】新暦76年と77年の出来事。

 
前書き
 この節はまた年表形式になりますが、なるべく読み飛ばさない方向でお願いします。(苦笑) 

 


・新暦76年1月末日  〈無128ドルバザウム〉で、先代の長老ハドロの「10回忌」がささやかに(もよお)された。
 →しかし、ユーノはいろいろと仕事も忙しく、また、ガウルゥからも『お前は来なくて良い』と明言されていたため、最初からドルバザウムには行かなかった。

・同76年2月  エルセア地方で「歴史に残るレベル」の大規模な列車事故が起きた。
 →名門ドルガン家の老当主を始め、百名以上が死亡する大惨事となった。

・同76年3月  まだ「発掘調査に(たずさ)わる人員に限って」の話ではあるが、ベルカ世界への渡航が解禁された。

・同3月  アルフは管理局で「学芸員」の資格を取得して、正式に「現地駐在員・補佐」の職に就き、さらには「三者契約」により、リンディからも直接に魔力供給を受けることができるようになった。
【この「三者契約」については、「キャラ設定2」を御参照ください。】

・同76年4月  機動六課の解散に合わせて、なのは(20歳)は首都クラナガン旧市街の北側に隣接する「アラル市」の南東地区に私費で自宅を購入し、ヴィヴィオ(7歳)はSt.ヒルデ魔法学院の「首都圏キャンパス」の初等科に入学した。
【アラル市や「首都圏キャンパス」については、「背景設定2」を御参照ください。】

 →六課の解散後、ティアナ(17歳)はフェイト執務官の二人目の補佐官となり、スバル(16歳)は「特別救助隊」に転属。キャロ(11歳)は原隊(スプールス第五大陸の自然保護隊)に戻り、エリオもそれに同行した。
 なお、エイミィも地球を離れて正式に仕事に復帰し、まずは〈本局〉に勤務するオペレーターとなった。

・同4月  一方で、長らく三元老の「御世話役」を務めていたリナルド・アリオスティ(53歳)は、正式に「局史編纂室」という閑職に退き、これ以降は、みずから選んで「他者と接することの無い孤独な晩年」を送った。
 ただ一人、例外的に彼と親しく接触していた人物が、ザドヴァン・ペルゼスカ(41歳)であったと伝えられる。

 →同月、謹慎中のリゼル・ラッカード(37歳)は、(もと)部下のカラム・スタイロ艦長(29歳)と「電撃結婚」をした。
(いわゆる「デキ婚」だったので、この半年後には、リゼルは早くも次女パムディを出産することとなる。しかし、結果から先に言えば、今回の結婚もまた前回と同様に、二年あまりの間しか続かなかった。)

・同4月  新暦初期の〈大航海時代〉の資料が、初めて〈無限書庫〉に搬入された。
 →ミゼットたち〈三元老〉が『あれから半世紀を経て、あの時代も「歴史」になった。そろそろ「総括」が必要だろう』と判断した結果だったのだが、旧暦の時代の資料にも未整理のものがまだ大量にあり、当分は、さしものユーノもちょっと手が回らない状況が続いた。

 →一方、スクライア一族では、長老アグンゼイド(65歳)の支族が、発掘調査のためにベルカ世界に招聘(しょうへい)され、この頃から、ユーノも再びスクライア一族と連絡を取り合うようになった。
 なお、アグンゼイドの支族に所属する若者ダールヴ・スクライア(20歳)が、ユーノとの連絡役を買って出た。

【ダールヴは、初対面でいきなり『お会いできて光栄です。お噂はかねがね伺っておりました』とやや()い気味に言うと、ユーノに「両手で」握手を求めて来ました。
 聞けば、彼はベルカ系移民も多い〈管9ドナリム〉の「廃都オルバラン」の出身で、小さい頃に親兄弟を失い、しばらくは浮浪児をしていましたが、7歳の時にアグンゼイド(当時、52歳)に拾われたのだそうです。
 肌はやや色黒で、髪は黒褐色。それらの色合いは典型的な「ドナリム南方人」のものでしたが、ダールヴという名前は明らかにベルカ系のものでした。おそらくは、父方の遠い先祖がベルカ世界から脱出して来た人物だったのでしょう。
 ダールヴの体格は中肉中背で、全体的に特徴に乏しく、顔立ちも全く平凡なものでした。支族は別々ですが、同い年のせいでしょうか。昔から「ユーノの天才ぶり」は、よく聞き及んでいたようです。】

・同4月  機動六課の解散後に、はやては「少しまとまった有給休暇」を取って地球の敷浜市へ行き、昭和26年(新暦15年)当時のことを公立の図書館などで個人的に調べてみたのだが、特に自然災害のデータは出て来なかった。

【そこで、はやてはふと思いました。
『いや。そもそも、彼等が被災者やったとして、何故(なんで)それを「管理局が」救済せなアカンかったんや?』
 冷静に考えると、これはいろいろと異常(おか)しい状況です。一度、実際にアラミィ地方の地球人街へ行って、現地の人に話を聞いてみる必要があるのかも知れません。
 はやては忘れずにゲンヤへの手土産(純米酒)を買って、ミッドに帰りました。】

・同76年5月  高名な考古学者、フランツ・バールシュタイン博士(実は、ヴィクトーリアの母方伯父)が、ダールグリュン家の援助を得てベルカ世界に渡航した。
 →以後、彼は毎年のようにベルカとミッドの間を往復し、文字どおり「二つの世界で」生きてゆくことになった。

・同5月  (こよみ)では「立夏」の頃に、管理局はいよいよ「創設150周年記念祭」を始めた。
 →各世界の聖王教会も、一斉に「(はらえ)の儀式」を()(おこ)なった。表向きは、この150年で蓄積された「歴史の(よど)み」を、多少なりとも(はら)い清めるための儀式である。

【元々の予定では、『この年に「記念祭」を大々的に執り行なう』という案は、『充分な費用対効果が望めそうにない』という理由で廃案になりかけていたのですが、〈三元老〉の強い意向によって急遽(きゅうきょ)復活しました。
 今も「非常事態宣言」は継続中であり、『そうした中で局員らの士気を維持するためには、多少の「儀式」も必要だろう』という判断です。
 そして、管理局は聖王教会とも連携を取り、教会はそれを受けて、あたかも昨年の〈JS事件〉を歴史の上から丸ごと抹消しようとでもするかのように、何十個もの世界で一斉に大がかりな「(はらえ)の儀式」と「祝祭」を執り行なったのでした。
 なお、あえて言うならば、『伝説の〈ゆりかご〉が、今度こそ本当に失われた』という事実は、ベルカ系の血を引く人々にとって心情的にはそれなりに(つら)いものでもありました。彼等の気持ちとしては、こうした一連の祝祭も「伝説の〈ゆりかご〉に対する鎮魂」の意味合いを多少は帯びていたのでしょう。】

・同76年6月  ザフィーラが中心となって、八神家が地元で「八神道場」を開設した。

・同76年7月  地球のドイツでは、西暦2012年。忍(29歳)が、第二子の(しずく)を出産した。
 →一方、日本では、平成24年。美由希(28歳)が、6月に「喫茶(きっさ)翠屋(みどりや)」に来店した日仏ハーフのパティシエ、ロベール・ススム・デュラン(26歳)から唐突に求婚(プロポーズ)され、7月には彼を婿に取る形で「電撃結婚」をした。

・同76年8月  スバル(16歳)が休暇中に、「問題児」のガルバス陸曹(19歳)たちから理不尽なケンカを吹っ掛けられ、やむなく彼等全員をコテンパンにして、「ケンカ両成敗」とばかりに若干の処分を受けた。
 →この一件で、「灰色熊」の異名(いみょう)を取るガルバス・ドストーレスはキッパリと心を入れ替え、以後、実際には三歳も年下のスバルを「(あね)さん」と呼ぶようになってしまうのだが、それはまた別の物語である。

・同8月下旬  ヴァイゼンの「ゼムリス鉱山」で崩壊事故が発生。トーマ(10歳)以外の全員が死亡し、「ヴィスラス(タウン)」も廃墟となった。
 →トーマは、それが『単なる事故ではなく、意図的な虐殺だった』と確信し、以後、身を隠して偽名を名乗り、浮浪児生活を送りながらも、心ひそかに犯人への復讐を誓った。
(現地では、「トーマ・アヴェニール」もまた事故で死亡したことになっている。)

【なお、Forceのコミックス第1巻では、ヴァイゼンの「遺跡鉱山崩壊事故」が7年前の出来事として描写されていますが、新暦74年の時点で、すでに「感染者」がいたのだとすると、管理局の対応はあまりにも遅すぎます。
 しかも、それだと、『トーマは8歳の時から3年もの間、(言わば「人格の成長に関して、とても大切な時期」を)丸々、浮浪児として過ごして来た』ということになってしまいます。
ここで言う「浮浪児」の生活レベルが『具体的にどの程度のものだったか』にもよりますが……個人的な意見ですが、『そのような経歴で「あのような性格と体格」の持ち主に成長する』というのは、ちょっと不自然なのではないでしょうか。
 そこで、この作品では、『あの遺跡鉱山崩壊事故は、76年8月の出来事だった』ということにしておきます。
 そうすれば、『トーマは、以後、スバルと出逢うまで「浮浪児生活」を送ってはいたが、それはせいぜい1年たらずのことだった』ということになるからです。】

・同9月  ミウラ・リナルディ(9歳)が下校中、はやてとシャマルに勧誘されて、八神道場に入門した。
【この件に関しては、Vividのコミックス第5巻を御参照ください。】

 →翌77年の春には、アンナ・ク・ファーリエ(8歳)も同様に入門した。
【このアンナについては、「キャラ設定5」を御参照ください。】

・同76年10月  ティアナが、執務官試験に「一発合格」した。

・同76年11月  この頃から、チンクたち四人はようやく「日常的にナカジマ家で」生活することが認められた。

・同76年12月  はやてたち一行は、休暇中に「家族旅行」と称してアラミィ地方を訪れ、港町ヴィナーロの「地球人街」でそれとなく話を聞いて回ったが、「移民第一世代」の生き残りたち(全員、七、八十代の老人たち)はみな口が固く、結局のところ、「新暦15年の一件」に関しては何の情報も得られなかった。

 →翌日、ふとしたことから「地球系移民の、三世・四世」の少年少女らも通っている「抜刀術、天瞳(てんどう)流」の第一道場へ(身分を隠して)見学に行ったところ、ただ正座していただけのシグナムやザフィーラの「隙の無さ」に感心した総師範から『皆さん、首都の方から来られた方々(かたがた)でしたか。ウチの流派はクラナガンの南部にも「第四道場」を構えていますから、機会があったら、是非また覗いてみてください』と言って「紹介状」を手渡された。


・新暦77年2月  思いがけず、また同時に休暇が取れたので、はやて(21歳)はシグナムたちを連れて、実際にクラナガン南部の「天瞳流、第四道場」を訪ねた。
 →そこで、当時すでにIMCSで有名な選手となっていたミカヤ(16歳)と、ふとしたことから懇意(こんい)になり、「成り行きで」こっそりと身分を明かした。
【翌3月には、はやては、ミカヤにノーヴェを紹介したりもしました。】

・同77年3月  首都クラナガンで、小児誘拐事件が発生した。
 →犯人はすぐに逮捕されたが、スバルは、ヴィヴィオ(8歳)にも『自分の身は、自分で守れるようになってほしい』と思い、護身術のつもりで格闘の「基礎」だけを教えた。
(本来は、『一発くらわせて、すぐに逃げる』ということを教えたつもりだった。)

・同3月  ミゼットたち〈三元老〉は、わずか一年半で「その時点で可能な改革」をひととおり全部やり遂げると、最後にラプトヴォク・カルヂェティス大将(63歳)を正式に第11代の総代に任命して、速やかにすべての権限を「総代」とそれを議長とする〈中央評議会〉に委譲した上で、三人そろって正式に管理局のすべての役職から引退した。
 →こうして、「元老大権」に基づく管理局の「非常事態」は一年半で終了した。

【三元老の制度は元々、最高評議会議長オルランド・マドリガルが自分たちのために作ったものでした。だからこそ、「元老大権」などというムチャな規定があるのです。
 ミゼットたちは、ドナリム人のラプトヴォク総代たちに対して『もうこんな規定は廃止して良い』と伝えたのですが、将軍たちはみな、後世の人々から糾弾されることを怖れて、その規定の廃止を「先送り」にしました。
 結果として、ミゼットたちがこの世を去った後も、「元老大権」の規定は廃止されること無く、〈三元老〉も「制度としては」残されたのですが、実際には、それから四十年余に(わた)って、長らく空席のままとされたのでした。】

・同3月末  ハウロン・シェンドリール三佐(45歳)が異動により、エルセア地方の陸士387部隊の部隊長を退任し、代わって首都圏の陸士104部隊の部隊長に就任。家族(妻子)とともに首都圏に引っ越して来た。
 →彼の長女デュマウザ(19歳)が、ギンガの訓練校時代からの親友だったため、後に、父親同士のハウロンとゲンヤも、仲の良い「()(とも)」となった。
(とし)も近く、階級や役職も同じだったので、話もよく合ったのだろう。)

・同77年4月  スバル(17歳)が特別救助隊で、早くも「防災士長」に昇進した。
 →しかし、6月末の火災事件では、救助が「完全には」間に合わず、何人もの犠牲者を出してしまい、スバルはかなり意気消沈した。
 翌7月になると、スバルは直接の上司からも長期休暇を勧められ、また改めて一人きりで自分を鍛え直すため、ヴァイゼンにまで遠出(とおで)をした。

【機動六課が解散した後も、スバルは(ヴァイゼン生まれの)アルトと「親しい友人づきあい」をずっと続けており、今回もアルトの側から『私、これから向こうの祖父母に会いに行くんだけど、途中まで一緒にどう?』と誘われてヴァイゼンに来たのだ、という設定です。
 なお、ヴァイゼン在住の「アルトの父方の祖父母」は(アルトの父は彼等の末っ子だったので)すでに90歳に近い老齢であり、実を言うと、アルトも今回は『出先で不意に倒れてしまった』という祖父母を見舞うために、仕事の忙しい両親よりも一足先にヴァイゼンに来たのでした。
 しかし、残念ながら、同7月の末には、アルトの父方の祖父母は(あい)()いで他界してしまいました。】

・同77年4~7月  新人執務官ティアナ(18歳)が最初に担当した案件は予想外の規模の凶悪事件に発展してしまったが、彼女はそれを「独力で、あまりにも上手に」解決してしまったため、彼女は管理局の〈上層部〉から「変な形で」見込まれてしまい、以後、凶悪事件ばかりを専門的に担当させられる破目に陥ってしまう。
(これが、ゼナドリィの首都圏では今も語り継がれる〈グランヴェル事件〉である。)

・同77年7月  ミッドでは、スバル不在の折り、ノーヴェがヴィヴィオに本格的にストライクアーツを教え始めた。
(コロナがこの練習に付き合い始めるのは、翌78年度になってからのことである。)

・同7月  ヴァイゼン首都圏の北西部で、スバル(17歳)は十名余の「浮浪児」たちと出逢い、後に、彼等をまとめてミッド首都郊外の「特別養護施設」に引き取らせた。
 →トーマ(11歳)は最初、偽名を名乗っていたが、スバルがそれを察し、トーマの耳元に小声で『本当の名前は何て言うの?』とささやきかけると、トーマはぐっと涙をこらえながらも『ヴァイゼンにいる(あいだ)は言えない。父さんたちのように殺されるかも知れないから』と答えた。
 そこで、スバルは(トーマだけを引き取れば、「敵」にその動きを気取(けど)られてしまう可能性があったので)ヴァイゼンの出入国管理局に対しては無理を(とお)し、浮浪児たち全員をミッドに引き取ることにしたのである。

【原作の回想シーン(Forceのコミックス第2巻)では、『それが何年何月の出来事だったのか』について何も描写が無いのですが、スバルはその時点で、すでに「防災士長」になっています。
 彼女は、76年の春に「特別救助隊」に引き抜かれましたが、新人がいきなり士長になれるはずはありません。また、「SSX」の時点では、彼女はすでに士長になっているのですが、78年だと、〈マリアージュ事件〉と時期が重なってしまい、79年でも、今度はVividと時期が重なってしまいます。
そこで、この作品では、これを77年の出来事と考えておくことにします。
(なお、この作品では、防災士長は「下士官待遇」という設定にしておきます。)】

 →その後、スバルは全員でミッドに到着してから、改めてトーマから本名と事情を訊き出すと、今度は一人でヴァイゼンに戻り、トーマの証言に基づいて、昨年(76年)の「ゼムリス鉱山」での事故について現地陸士隊に「追加調査」を依頼した。
(そして、アルトに乞われて、彼女の祖父母の葬儀にも参列した後、アルトと二人でミッドに戻った。)

 →数か月後、追加調査の報告書はスバルの許にも送られて来たが、その内容は「トーマの証言が決して『小児(こども)の妄想』ではないこと」を強く示唆するものだった。
(ただし、その時点では、「襲撃犯の正体」については全く見当がついてはいなかった。)

・同77年8月  はやての脚、完治10周年記念。
【この件に関しては、「リリカルなのはStrikerS サウンドステージM4」を御参照ください。】

・同77年9月  地球では、美由希(29歳)が第一子の美琴(みこと)を出産した。

・同77年10月上旬  エルセア地方で、クイントの「10回忌」が営まれた。
 →ギンガ(19歳)とスバル(17歳)は、初めてパリアーニ夫妻(母クイントの両親)と正式に会って話をした。
(当時すでに、クイントの父ラウロは73歳、母カーラは77歳だった。)

 →同じ頃、リゼル(38歳)は産休を終えて、まずは艦長に復職した。
(この時点で、次女パムディ・スタイロは満1歳である。)

・同10月下旬  ミゼット(98歳)ら、〈三元老〉が相次いで死去した。
 →実際の葬儀そのものは密葬となったが、管理局は以後、30年に(わた)って、節目ごとに局を挙げて彼等の身魂(みたま)を祀り続けることになる。
(結果としては、『事実上の「局葬」だったと言って過言ではない』という状況である。)

【新暦77年の3月に、三元老は三人そろって正式に、管理局のすべての役職から引退しました。もちろん、それまでも、新暦52年以降はもう長らく「ただ時おり、管理局主催の催し物などに顔を出したりするだけの名誉職」だったのですが、その春、三人はそろって、そんな名誉職すら辞して各々の小さな別宅へと引きこもったのです。
 そして……今までずっと彼等を支え続けて来た「使命感」が、達成されてしまったからでしょうか。それから間もなく、三人はまるで互いに申し合わせたかのように、揃って(やまい)(とこ)()くと、速やかに衰弱し、その秋には(あい)次いで息を引き取りました。
 まるで、『この世での自分たちの役目は、もう終わったのだ』とでも言うかのように。

 最後の半年間、三人は各々の小さな別宅に最低限の医療スタッフだけを置き、見舞い客もすべて断り、遺産相続などもすべて生前に済ませ、自分の血を引く孫や曽孫(ひまご)らにすら会うことも無く、必要以上にひっそりとした静かな日々を過ごしました。
 実際には、ミゼット・クローベルは9月(死の一か月前)になってから、ただ一人、八神はやて二佐だけを極秘裏に自分の許へ呼びつけ、彼女に「とあるモノ」を託して死んでいったのですが、その事実は「公式の記録」には一切残されてはいません。
(そして、実は、ラルゴ・キールもクロノ・ハラオウンに、レオーネ・フィルスもヴェロッサ・アコースに、同様のモノを託して死んでいったのでした。)】

・同77年11月  ルーテシアは、母メガーヌとともに〈無34マウクラン〉で極めて個人的に「父セルジオと四人の祖父母たち」の10回忌を(おこ)ない、それから、〈無2カルナージ〉に転居して、そこで正式に管理局の「嘱託魔導師」となった。
(はやてがルーテシアの法的後見人となっていた関係で、彼女はこれ以降、もっぱらはやてのために働くようになる。)

【原作では、ホテル・アルピーノなどが建っている「あの場所」がどういう立地なのか、特に説明が無いようですが、この作品では、『あの場所は、北半球の中緯度地帯にあり、「惑星カルナージにおける最大の大陸」からは遠く西方に離れた「絶海の孤島」である』という設定で行きます。
 ただし、「孤島」とは言っても、面積はそれなりに広く、ざっと1万8千平方キロメートルほどあります。
(日本で言うと、ちょうど四国ぐらいの面積です。)
 外形はほぼ南北200キロメートル、東西100キロメートルほどの「(かど)を丸めた縦長の長方形」ですが、プレート運動の関係で島の東岸部には海岸線に沿って「相当な規模の山脈」が南北に走っており、偏西風を受け止めて島内の陸地に多くの雨をもたらしています。
 島の土地は全体として東高西低で「東の山脈」から「西の海岸」に向かって、三本の大きな川がほぼ等間隔で流れており、今は、これらを仮に「北大川(きただいせん)」、「中大川(なかだいせん)」、「南大川(みなみだいせん)」と呼称することにします。

 管理局は「南海岸の中央部あたりから、北へ30キロメートルほど入った場所」に「簡易型の次元港」を設営しました。普通の次元航行船なら発着できるが、物理燃料の補給などは一切できないタイプの簡易施設です。
(最悪の想定として、ルーテシアの召喚魔法が暴走した場合には、『島ごと切り捨てて、大陸の側に対「白天王」用の防衛線を敷く』ということまで考えた上での、立地の選定でした。)
 水に恵まれた島なので、多くの土地が豊かな森に覆われており、また、山脈の中には火山もあるので、豊富な地下水はしばしば温泉となって、島の西側では自然に地上へと湧き出しています。
 なお、ホテル・アルピーノが建っているのは、簡易型の次元港からほんの3キロメートルあまり北側に入った場所で、「南大川(みなみだいせん)の中流部へと合流する支流」のほとりです。
 新暦79年の5月に、ヴィヴィオたちが「川遊び」をしていたのも、この支流です。
(この「川遊び」に関しては、Vividのコミックス第2巻を御参照ください。)
 ホテルを始めとする建築物はみな、その支流が氾濫(はんらん)しても浸水しない土地を選んで建てられているので、あの一帯は周囲に比べてやや高台になっており、そのために、ルーテシアが後に温泉を掘り当てるに際しては、少し深めに掘らなければなりませんでした。】

【なお、細かな話で恐縮ですが、この時点ではまだ、メガーヌにとってもルーテシアにとっても、カルナージはただの「現住所」であって、戸籍上の「本籍地」はミッド地上のクラムディン地方の旧住所のままになっています。
 だからこそ、ルーテシアも79年のIMCSでは、本籍がある「ミッド中央」の地区予選に参加することができたのです。
(なお、管理局の方針によって、一般に『カルナージを「本籍地」として選択すること』が認められるのは、新暦86年度からのこととなります。)】

・同77年12月  IMCSの第25回大会が終了した。
 →結果は、『初出場で「全く無名」の選手であるジークリンデ・エレミア(14歳)が、いきなり「次元世界チャンピオン」になる』という、なかなかに衝撃的なものだった。
(なお、10月の時点で、ジークリンデはクイントの「都市本戦優勝の最年少記録」を21年ぶりに塗り替えている。)

・同12月  地球では、美由希が育児に忙殺されていたため、「喫茶翠屋」は人手不足で大忙しとなった。
 →なのは(21歳)は、この年末年始にはおよそ一か月もの長期休暇を取って地球に帰省し、お店では母や義兄の手伝いを、家では姉の家事や育児の手伝いを精力的にこなした。
なのはにとっても「おむつの交換」などは、人生でほぼ初体験だったが、結果として、美琴には随分と(なつ)かれた。


 
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