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リュカ伝の外伝

作者:あちゃ
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暗躍.1「身柄確保」

 
前書き
今回のエピソードはアルルが温泉で事件に巻き込まれ、
ティミー等から報告を受けた直後の物語です。 

 
(グランバニア城:プックル邸)
プックルSIDE

「プックル……寝てるとこゴメン。ちょっとお願いがある」
「ニャァ?(何ですか?)」
突如真夜中にリュカ様が訊ねてきた。

私は妻や子供達を起こさぬ様にソッと寝床を抜け出してリュカ様の待つ廊下へ……
「ガゥ?(何か?)」
冬の寒い廊下へ出ると、そこには私と同じように起こされたであろうホイミンも居る。

「実はさ……直ぐに誰にも見つからずに、とある人物を探して確保して欲しいんだ」
「グァ?(はぁ?)」
こんな真夜中に人捜し? しかも秘密裏に……

「ちょっと前にさ、アルカパでビアンカをナンパしてる男を引きずり回した事あるじゃん」
「ガウガァゥ(ありましたねぇ)」
おふざけではあったが、証拠隠滅の為に骨まで喰えと言われて驚いた記憶がある(笑)

「其奴の匂いを憶えてる?」
「ニャァ~……ニャンニャアニャ(まぁ~……何となく)」
「良かった……其奴を探してくれ」
「ニャァ!?(はぁ!?)」

「勿論、大体の場所は分かってるよ。サラボナの山奥の村付近だ」
「ニャアァ(なるほど)」
あの山奥で遭難してるって事か。

「アイツさ、色々やらかしすぎてて指名手配寸前なんだ。勿論指名手配させるのは僕なんだけどね(笑)」
「ニャァァ~~……(笑い事では……)」
何で笑ってられるんですか?

「でね、このチャンスを有効に利用したいから、サラボナやラインハットが身柄を確保する前に、プックルとホイミンに確保してもらいたいワケ」
「グァ?(はぁ?)」

「サラボナは明け方から。ラインハットなんかは、もっと出遅れるだろう。時間的余裕は十分にあるから先んじて欲しい。プックルの嗅覚とホイミンの上空からの視野があれば可能だと思う」
「ガウガァ……ニャ(私も同意見です……けど)」

「言いたいことは解ってる……と、思う。でも今は一刻を争う。だから直ぐに出立して欲しい。山奥の村までは僕がルーラで送る。帰りはこの新発明のRS(ルーラストーン)で帰って来て欲しい。因みにこのRS(ルーラストーン)の目的地点はプービルに設定してある。そこの2階の音楽室に君等の食料とかを用意しておく。だからそこに其奴を監禁して、絶対に誰にも会わせない様に見張っててくれ」

結構物騒な単語に思わず私はホイミンと目を合わせる。
だけど相変わらず彼は何を考えてるか解らない。
だがリュカ様からの頼みとあれば、お互い反対する理由はない。

「もしもね……其奴が逃げだそうと暴れる様だったら、欠損しない程度に痛めつけちゃって良いよ。足とか腕の骨を折っちゃえ。直ぐにホイミンが治癒してやれば大人しくなるだろう(笑)」
だから笑えませんって!

「もしサラボナの連中に先を越されたら、無理しなくて良い。姿を見られる前に帰って来てくれ」
「ガウア?(良いんですか?)」
サラボナの捜索隊くらいは蹴散らして確保出来るのだが……

「良いんだよ。重要なのは誰にも知られないことだから。誰かに見つかって僕等が関与してることがバレる方がリカバリーが難しい。でも上手く確保出来たら、監禁する。申し訳ないけど、僕は僕で別件があるから、監禁場所に行けるのは夕方以降になると思う……それまで見張っていてくれ」

「ニャァン!(了解です!)」
リュカ様が『良い』と言うのなら間違いは無い。
だから準備は大丈夫だと態度で表した。

それに釣られてホイミンも私の首に巻き付いて準備完了を告げる。
いざ出陣である!

プックルSIDE END



(サラボナ:ルドマン邸)
アンディーSIDE

夜も明けきらぬ早朝。
突然リュカさんが怒鳴り込んできた。
いや、物の例えではなくて本当に大声で怒鳴り込んできた。
本来なら激怒してもいい態度なのだが、その剣幕にお義父さんもたじろいでいる。

何をそんなに怒っているのか尋ねると……
昨晩、山奥の村の温泉で女性が襲われる事件が発生していたらしい。
しかもその被害者があろうことか王太子妃殿下。

リュカさんはこの国の治安に対して激怒をしているのだ。
だがこれは不可抗力としか言いようが無い。
まず王太子夫妻が旅行に来ていることすら連絡されてなかったのだから。

その事を言ったが『誰が何時(いつ)何しに入国しようが、安全な国作りをするのが国家主席の仕事だろ!』と一喝された。
理想はその通りだが、現実は上手くいかない。
でもそんな事を言える訳も無く、黙ってリュカさんの怒気が収まるのを待っていた。

暫く怒鳴り散らして落ち着いたのか、
『お前等に言っても埒が明かない。もういい……直接ラインハットに文句を言ってやる! この件は俺が直接解決するから手を出すんじゃねーぞ!』
と言って、出て行こうとする。

何故ラインハットが関係するのか問い質すと、
『この男……如何やらラインハット王国の子爵家の者らしい。自らドン・ファン・ネルと名乗ったそうだ』
との爆弾発言!

ヤバいです。
ネル子爵家はラインハット王家にとって重要な貴族家。
このまま放置して我が国で死なれたら国際問題になりかねない。

ってか何でグランバニアもラインハットも勝手に入国しておいて問題を起こすのだろう!

だがそんな文句を言ってる場合ではないので、リュカさんが去るや直ぐに捜索隊を組織して山奥の村近辺に向かわせた。
リュカさんの言い分では事件が起こったのは“昨晩”との事なので、既に夜が明けてる現段階では大分時間が経過してしまっている。

だがせめて遺体だけでも見つけないことには言い訳も出来ない。
死んだ原因をグランバニアに押し付けるにも、当人の体を確保しなければならない。
時間が……

昼前に捜索隊が山の麓へ到着出来れば良いのだが……
それでも事件発生から12時間以上は経過してしまっている。
多分……死んでいるだろう。

真夜中の雪深い山奥に放り出されたのだ……
生きていても凍傷で四肢の欠損は免れない。
最悪は凍死しているはず。

だが責任は、女性を襲ったネル子爵家の者と手加減無しで雪山に突き落としたグランバニア王太子にある!
そう持って行くしか無い!!

アンディーSIDE END



 
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