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七十過ぎの爺の現実

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第五章

「二人共ブラやパンツのラインもな」
「出ていたか」
「次男さんの嫁さんの後ろ姿見たらな」
 家を出る時に見たそれをだ。
「セーターからはな」
「ブラの線がか」
「出ていてスカートにはな」
 タイトスカートのそれにはというのだ。
「ぴたって感じでな」
「パンツのラインがか」
「出てたぞ、さっきの長男さんの嫁さんもな」
 美沙緒もというのだ。
「ブラの線出てひらひらのスカートでもな」
「線出てたか」
「ああ、はっきりとな」
「道理でな」
 ここで若尾は真顔で言った。
「息子達もそれぞれの嫁さんにな」
「ぞっこんなんだな」
「家にいる時はいつもな」
 それこそというのだ。
「嫁さんにべったりだよ」
「美人で性格良くて家事も出来てか」
「それでそんなのだとな」
 スタイルがよく服装も刺激的ならというのだ。
「そうなるな」
「二人共浮気もしないしか」
「ああ、あと実は美沙緒さん空手五段でな」
 長男の嫁のそのことも話した。
「杏奈さんは骨法の達人なんだよ」
「二人共強いんだな」
「それこそ大勢で拳銃でも持ってないとな」
 そうでないと、というのだ。
「勝てる男はいないわ」
「じゃあ襲われることもないか」
「わしが二人を襲うとか考えていたか」
「そうした漫画あるあるだろ」
「だからそもそもその欲がないしわしは文科系だぞ」
 このことも言うのだった。
「学生時代は美術部でな」
「身体動かしてなかったか」
「仕事は事務で今もな」
 シルバーワークの方もというのだ。
「身体動かさないんだぞ」
「それならか」
「どうしてなんだ」
 それこそというのだ。
「美沙緒さんと杏奈さん襲えるんだ」
「返り討ちだな」
「二人共強いしな」
 自分がそうしたことを出来る者でなくというのだ。
「それならな」
「無理か」
「二人共浮気するタイプでもないぞ」
「浮気するならお前さんといつも一緒にいないな」
「ああ、そうだろ」
「それもそうだな」
「それでな」
 若尾はここまで話してさらに言った。
「息子は二人共な」
「奥さんにか」
「惚れ込んでるな」
「そうした服装にもだな」
「それならな」
 真顔で言った。
「孫の顔もな」
「見られるか」
「それも近いか」
「それはいいことだな」
「ああ、わし等はもうな」
 それこそというのだ。
「そうした欲はなくなってもな」
「若いとな」
「あるからな」
 だからだというのだ。 
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