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無意味ブランク

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第二章

「弾けない間もずっとイメージとレーニングとかしていたら」
「実力は落ちない」
「そうなんだな」
「例えブランクがあっても」
「それでも」
「スポーツ選手でも」 
 彼等もというのだ。
「怪我をしても復帰してすぐに活躍する人がいるけれど」
「元から実力が高くて」
「動けない間もそのことばかり考えていて」
「イメージトレーニングもしているから」
「だから復帰してすぐに戦える」
「そうなんだな」
「そう、それで」
 そのうえでというのだ。
「時任さんもね」
「ブランクを感じさせないか」
「確かに元々凄い実力があったし」
「入院している間もバイオリンのことばかり考えていたから」
「それでか」
「きっとね、凄い人はブランクがあっても」
 様々な事情でというのだ。
「復帰してもね」
「実力は落ちない」
「そういうことか」
「そうなっても」
「ええ、要するにね」
 七菜香を見ながら話した、そして七菜香は。
 実際にすぐにコンクールに出たが無事に実力を発揮して入賞した、だが本人は難しい顔でこう言った。
「本調子じゃないわね、まだ」
「本人としてはか」
「そうなんだな」
「落ちてないと思っても」
「やっぱりブランクあったの」
「ええ、もっと練習して勉強して」
 そうしてとだ、周りに話した。
「元の実力にしていくわ」
「そうか、それじゃあな」
「頑張ってね」
「そうしていってね」
「そうするわ」 
 こう言って練習を続けていった、本人が入院前の調子になったと言ったのは数ヶ月後だった。その時に言ったのだった。
 だが周り、コンクールの審査員達もこう言った。
「相変わらずだな」
「安定しているわ」
「いい腕だ」
「入院前から全く落ちていない」
「むしろ成長しているかも」
 こんなことを話した、そしてだった。
 七菜香の音楽を聴いていった、そしてそう言い続けるのだった。ブランクは全く感じさせなかったと。


無意味ブランク   完


                 2023・3・13 
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