リュカ伝の外伝
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巧い話にゃ裏がある
前書き
今回は珍しく、
原作のDQ5オリジナルキャラだけが登場。
リュカ伝オリジナルキャラは名前だけ登場。
(サラボナ:ルドマン邸)
アンディーSIDE
夕食時に差し掛かる少し前……
突然リュカさんとビアンカさんが訪れた。
普段なら相当しつこくお義父さんが呼び出さないと来ないのに、何故だか今日は夫婦揃ってやって来た。
「よぅ! 今日もハゲ上がってんな(笑)」
相変わらずである。
「何だ突然やって来て……お前、ワシに何か頼み事があるんだろ!? ソレが頼み事がある者の態度なのか?」
「頼み事など無い。それよりも……良いのか? 美味しい話しを持って来たのに、そんな事を言っちゃってぇ?」
「美味しい話しぃ~? アサルトライフルを売る気になったのか?」
アサルトライフル……アレはダメだ! あんな殺戮兵器は広めてはいけない!
「売るわけ無いだろハゲ! そんなこと言ってるからお前はハゲマンなんだ!」
「ふざけた名前を付けるな!」
こんな事をお義父さんに言えるのはリュカさんくらい……あとウルフ宰相も言うか?
「あははははっ。まぁ良いじゃんそんな事は。それよりさぁ立ち話もなんだから夕食でも食べながら話そうよ。今日のディナーは何だい?」
「何で来客のお前が決めるんだ!?」
この図々しさは真似できない。
「済みませんルドマンさん。一旦私の実家に帰って時間調整をしてたから、丁度夕食時に訪れる事になってしまいました」
今『時間調整』って言った。
「ビアンカさん、アンタも……はぁ……入りなさい」
何かを言おうとし諦めたお義父さんが深い溜息と共にダイニングへと招き入れる。
デボラはリュカさんとの夕食を嫌がるだろうな。
もし別々に食事するのなら、子供達(ルディー・デイジー)もそちらで面倒見てもらおう。
リュカさんは子供の教育に良くない気がする。
ティミー殿下も賛成してくれるはずだ。
そんなに手は掛からないが、子供達の面倒をデボラだけに任せるのは申し訳ないという事と、リュカさんの相手をさせるのは大変であると言う事で、お義母さんもデボラ達と食事をすることにしてもらう。
なので今日の夕食はお義父さん・リュカさん・ビアンカさん・フローラ・僕の5人だ。
「それで……話しとは?」
「……?」
早速話しを聞きたいお義父さんはリュカさんに訊ねるが、訊ねられた方はラム肉のリンゴソースステーキを頬張り小首を傾げる。
「ふざけるなよ! お前が『美味しい話がある』と言ったんだろう!」
「ああ……大丈夫。美味しいよ、この肉。さぁさぁ遠慮せずに食べて」
子供達とお義母さんを別室にして正解だな。
「……………っ」
お義父さんの苛立ちが伝わってくる。
付き合いが長いからある程度は分かってるつもりなのだが、それでもリュカさんは斜め上を行く人柄だ。(良くも悪くも)
「冗談の通じないハゲだなぁ……分かったよぉ、ゆっくり食事をしたかったけど、今日の出来事を話すよぉ」
「今日の出来事?」
何だろう……リュカさんの今日の出来事が美味しい話しに繋がるのかな?
「今日はさぁ……仕事を部下に押し付けてさぁ……ビアンカとデートしたんだよね。最高に美味しいでしょ!」
「こ、このっ……!!」
落ち着いて下さいお義父さん。これはリュカさんの通常行動です。
「まぁ焦らずに聞けって(笑) デートで久しぶりにビアンカの故郷であるアルカパに行ったんだよね。そこでね……もぐもぐ……」
わざとなのは分かっている。話しながらも食事の手を止めない。
リュカさん初心者なら、ここで怒っているだろう。
初心者ではないお義父さんも、もう怒っているからね。
だけど余計なことを言うと、より話しが遅くなるから黙っているのが正解だ。
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我慢の甲斐あって話しの全容が見えてきた。
要するに……アルカパという町が町興しでブドウを使った商品展開をする予定らしい。
まだプロジェクトは始まったばかりだから、参入する(特に資金面)なら今の内だと言う事らしい。
「なるほどな……確かに町興しなどと言うモノはヒットすればリターンも大きい。今まさにヒットしているサンタローズの件も、出来れば事前に教えて欲しかった所だ。ピアノとバイオリンだけ奪っていって、些かズルいのではないか?」
「神事で金儲けしようとすんな!」
「まぁ良いだろう。とは言え、今回の件……如何するべきかのぅ? ブドウで町興しか……ヒットしなければ無駄金になる恐れの方が大きいのだが?」
「そこは関わってる当人達次第でしょ」
「随分と他人事ではないか? お前は何もしないのか?」
絶対リュカさんがこの案件の発案者だと思うのだが?
「僕が? 何で?? アルカパはラインハットだ。そしてラインハットはグランバニアからしたら外国だ。僕は手を出しては拙い。そのくらいはハゲ上がったお前の頭でも解るだろ?」
そうだよな……リュカさんはグランバニアの王様なのだから、他国への干渉は拙い。
「だとすると……リスクの方が大きすぎてワシは手を出せぬな」
「それは仕方ないね。僕も美味しいであろうと思った話しを持ち込んだだけで、強要する気は微塵も無い。ただ……」
「ただ……何だ?」
「アルカパの町興し委員会は近隣の農村にブドウの育成・栽培・量産を委託したんだ。委託された担当者は、まだ若い少年なのだけど、才能があり努力を惜しまない有望な人材だ。しかもその彼女は、その農村の教会の娘で聖歌隊のメンバーでもある。既に世界的に有名になってる聖歌隊で宣伝してくれることは疑いないだろう」
「それはそれは……だが聖歌隊で宣伝してもらえることが確定してるとは言え、世の中の人々に購買意欲を湧かせなければ意味は無いと思わぬか?」
リュカさんの態度に対しての意趣返しかなとも思える返答に、返されたリュカさんは気にすること無く自分とビアンカさんの目の前にあるグラスを見詰める。
リュカさんはあまりお酒は好まぬと言う事で、ビアンカさんとともに冷水を提供していたのだが、食事が進むにつれグラスも空になりお替わりを欲してるのだろう。
僕は慌てて給仕に水を持ってこさせようとしたが……スッと左手を翳してそれを制した。
そして徐に僕やフローラ・お義父さんが飲んでいたワインボトルに手を伸ばし、自分とビアンカさんのグラスへと注ぐ。
「うん。酒の味はよく分からんが、美味しいんだと思う」
「十分美味しいわよリュカ」
夫婦揃って一口飲むと、興味深げにワインボトルを観察してる。
「これは何て名前のワインだ? ……え~っと……ビジョ……ヌード?」
「『ビジョレーヌードー』です」
ボトルのラベルを見ながら、辿々しく読み上げるリュカさんに教えてあげる。
「何かエロい名前(笑) でもお高いんでしょう?」
「そのワインは先日に今年のが解禁されたばかりの物でして、ブドウの質も量も共に良作でしたから45Gで出回ってます」
「まぁお得。今なら高級ハンドバッグ付きかな?」
「……よ、よく分かりませんがオマケは付いてないです」
「金利・手数料はサラボネットが負担してくれるのかい?」
「サラボネット? い、いえ……良く解りませんが送料は別です。お買いになりますか?」
「ふ~ん……ブドウを使って何かを作るとしたら、やっぱりワインになるよね? ワインって確か……“ポリエチレン”だとか“ポリリズム”だとかが入っていて健康と美容に良いんだよね?」
「“ポリフェノール”ですか?」
「そう、それ!」
「そう聞きますね」
何を言いたいのだろうか?
「話は変わるけど……もうホント全然変わるけど……先刻言った近隣農村の聖歌隊のシスターと、その娘2人って凄ー美人なんだよね。何か秘密があるんじゃないかなぁ……あの美人さ? ポリフェノールを摂ってるとか?」
「つまり……サンタローズのシスターに新商品のワインを宣伝してもらうと言う事だな?」
「はてさて……僕は一言もそんな事は言ってませんが? なんせ僕は関わってない事ですからね……町興し委員会が決める事でしょ?」
なるほど……アルカパの近隣農村って、リュカさんの故郷であるサンタローズの事なんだ。
そしてそこのシスターと娘さん等と言えばリュカさんの……
関わってないと言いつつも、既に話しは出来上がってるのだな。
「……良いだろう。 その話し、乗った! 明日にでも使いを出し、アルカパに融資を申し出よう」
「良いのかい。絶対に儲かるとは限ってないよ? まぁグランバニア王としては愛しい王妃の故郷のワインだから大量に輸入するけどね」
大口の契約も既に決まってる。
「それだけで十分に美味しい話しだ。わっはっはっはっ!」
「喜んでもらえた様で光栄だね。ところでワインって高いイメージがあるんだけど、幾らぐらいする物があるの?」
「ふむ。先程アンディーが言ったが、今お前が飲んでるのは45Gだが、ブランドや品質……それとその年の生産量などで値段も高騰する」
「ほほぅ……大商人様はお高いワインを持ってそうだけど?」
「無論持っておるさ! 最高級ブランドで希少性も高い『ロマン・コンティ』をな! ソルムンド歴170年はブドウが不作の年でな……それでも3本も値は張ったが購入したんだぞ」
「へ~……美味しかった?」
「馬鹿者! その年は600本も生産されなかったのだぞ! そう易々と飲むような代物では無い。何かの記念で飲むワインなのだよ」
「何かの記念……ねぇ。そう言えば170年って、僕とビアンカが結婚した年だね。記念だね、キ・ネ・ン♥」
「やらんからな!」
「くれなんて言ってない!」
言ってないけど要求してる。
「そう言えば話は変わるけど、今アリアハンの協力を得て、とある物を開発してるんだ」
「ほぅ……話しを戻す気は無いので、その話しを詳しく聞きたいな」
リュカさんはそんな甘くない。
「ラジオって言ってね、簡単に言えば音声版の新聞って感じかな? 新聞って空いてるスペースに広告を掲載するじゃん。グランバニアは識字率が高いから大丈夫だけど、低い地域じゃ広告を掲載しても効果が低いじゃん。でもラジオなら音声で宣伝してくれるわけだし、誰にでも色々な商品に対して購買欲を湧かせられる事が出来るよね。出来上がったラジオは基本的に公共の物になる訳だし、ラジオで広告を打ち出すには王家の許可が必要になるよねぇ?」
「な、何が言いたい……」
「べっつにぃ~」
ムカつく。
正直ムカつく顔だ。
「リュ、リュカよ……如何だ……ロマン・コンティを土産に1本持って帰るか……?」
「えぇ~悪いよぉ~……だって3本しか無いんだろぅ? 僕とビアンカの結婚記念年とは言え、お祝いするんだったら子供を含めた家族で祝いたいしぃ~……1本を僕たちだけで飲むのは申し訳ないしぃ~」
「に、2本……やろう……ワシからの心付けじゃ!」
「えぇ、良いのぉ? 僕、お酒の味も分からないし、投機目的じゃ無いから飲んじゃうよ?」
白々しく遠慮(?)する。
「頼む……是非ともプレゼントさせてくれい!」
「そこまで言われたら……如何もありがとうございますルドマンさん♥」
普段ハゲマンとか呼んでるクセに、こういう時だけ礼儀正しい。
緩衝材をふんだんに入れた桐の箱に入ったワインを2ケース持って、リュカさん夫妻が帰っていった。
かなり疲れ切ったお義父さんを横目に妻と自宅に帰りベッドに入る。
「はぁ……」と大きい溜息と共に妻が……
「結局リュカさんの一人勝ちですね」
と、ちょっと嬉しそうに言ってくる。
やっぱりまだ彼に惚れてるのだろうか?
「お義父さんも言っていたが、将来の宣伝効果を見込めば、今回の出費は少額と言える……はずだよ」
「そういう事ではなく……リュカさんは家に来る度に、何かしらの得をしていきます。それが一人勝ちだと思うのです」
確かにその通りだな。
気を引き締めないと全部持って行かれてしまうかも知れない。
気を付けないと……
アンディーSIDE END
後書き
あちゃさんはお酒が飲めません。
だから何か間違ってたら申し訳ございません。
一度書いたけどボツになったネタ:
「そのワインはロマン・コンティって名前だ」
「何かロマンポルノみたい……日活かな?」
ボツ理由:
流石に古いかなと思った。
知ってても面白くはないかなと思った。
『ロマンポルノって何ですか?』と聞かれても困るから。
知りたいピュアな子は"にっかつロマンポルノ"で検索!
続きはwebで……
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