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インフィニット・ストラトス~黒き守護者~

作者:eibro
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クラス代表選出で………

 放課後になり、ようやく寮に戻れると思ったところで事件が起きた。

「唐突で悪いが、今度行われるクラス対抗戦に出場するクラス代表を決める。クラス代表とはそのままの意味で、対抗戦だけでなく、生徒会の開く会議や委員会への出席……まあ、一般校でいう学級代表だ。ちなみにクラス対抗戦は、入学時点での各クラスの実力推移を測るものだ。今の時点で大した差はないが、競争は向上心を生む。一度決まると一年間変更はないからそのつもりで」

 一般校に通った覚えが全くないが、要は面倒な仕事なのだろう。だが、俺には黒髪の地味ウィッグがある。
 これは山田先生の部屋に住んでいた時に、彼女が女子校の出身だと言うことが判明した。

『やっぱり、女子校に通う女って男に興味を持つものなんですか?』
『ええ。特に風宮くんみたいな容姿だと間違いなく興味を持つと思いますね。逆に地味だとどうかわかりませんが………』
『じゃあ、目立たないために髪を染めて切ります』
『ま、待ってください! せめて染めるのは止めてください!』
『じゃあ、適当にウィッグでも買います』
『……ウィッグ、ですか? あ、それなら古いものが……』

 そして俺にそれを渡す山田先生。

『……やっぱり外してください。地味だと思います』
『いえ。これなら目立たないのでいいかと』
『ダメですよ! そんな格好だと女の子にモテませんよ!!』
『俺は別にモテたいなんて思ってませんし。自分がどんな存在か充分に理解しているので。それに、クラス代表とか決めないといけないみたいですし』
『で、でも―――』
『……わかりました。そこまで言うのならクラス代表が決まったら外します』
『本当ですか!? 絶対ですよ!!』

 という条件で俺はウィッグを借りた。
 そして今は効果があったようで次々と一夏に票が入る。

「では候補者は織斑一夏……他にはいないか? 自薦他薦は問わないぞ」
「お、俺!?」

 一夏は立ち上がると同時に女子たちが『彼ならきっとなんとかしてくれる』という期待が篭った眼差しを向けた。これで俺に票が入らなければ完璧だ。

「織斑。席に着け、邪魔だ。さて、他にはいないのか? いないなら無投票当選だぞ」
(早く決まれ早く決まれ)
「ちょっ、ちょっと待った! 俺はそんなのやらな―――」
「自薦他薦は問わないと言った。他薦されたものに拒否権などない。選ばれた以上は覚悟をしろ」
「くっ……。あ、そうか、なら―――」

 ―――バンッ!

「待ってください! 納得がいきませんわ!」

 いや、たぶん投票しても負けると思うぞ。
 なにせ向こうは珍しい男性操縦者だけでなく、イケメン。そしてそっちはただ高飛車な女。

「そのような選出は認められません! 大体、男がクラス代表だなんていい恥さらしですわ! わたくしに、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」

 誰も一言も言ってないだろう。ただクラスメイトは一夏に期待して票を入れただけだろうに。

「実力から行けばわたくしがクラス代表になるのは必然。それを、物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります! わたくしはこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!」

 そんなこと、代表候補生がどんな立場か知っている人間ならわかっていることだ。あとイギリスも島国だ。

「いいですか!? クラス代表は実力トップがなるべき、そしてそれはわたくしですわ!」

 誰もお前の実力なんて知らないし、興味もない。言うだけ損だ。それに俺からしたら『弱い犬ほどよく吠える』ということわざに当てはまっている気しかしない。

「大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体、わたくしにとっては耐え難い苦痛で―――」
「―――イギリスだって大してお国自慢ないだろ。世界一まずい料理で何年覇者だよ」

 とうとうキレたのか、一夏はそんなことを言った。

(お菓子は美味かったぞ……)

 そう思うのは俺だけだろうか。
 それにしても、この話はどっちもどっちだろうな。お互いが侮蔑し合っているだけのただの醜い言い争いだ。

「あなたねえ! わたくしの祖国を侮辱しますの!?」
「先にしてきたのはそっちだろうが! いい加減に自分の非を認めろよ! 結局さっきのことも祐人に謝ってないじゃないか!!」

 ……別に気にしなくてもいいのに。
 俺は諦めて静観しようとすると、

「決闘ですわ!!」
「おう、いいぜ! 四の五の言うよりわかりやすい!」

 一夏、お前は簡単に挑発に乗りすぎだ。あとお前、どこの主人公だよ。
 これ以上くだらないことに巻き込まれる気はないと思い、机の中にある荷物を出すと、

「お待ちなさい。あなた、どこに行くつもりですの? まさか、このまま逃げれるとお思いで? あなたもこの決闘を受けてもらいますわよ」
「やりたきゃ二人でやってろ。俺はパスだ」

 そう言って俺は読書を始める。

「あら、意外に呆気ないんですわね。あなたには意地やプライドなんてものはないんですの?」
「ねぇよ」

 そんなものを持っていざというときに死んだら元も子もない。そんなことを二年間も送ってきたんだ。

「これだから男というものは………」

 そういう声が聞こえた時でさえ、俺は冷静でいた。

「風宮。本当に出る気はないのか?」

 織斑先生が確認のために質問してくる。

「ええ。こんなくだらない決闘のために、ましてや自分が言ったことを認めず、事の重大さを認識していない、事を決闘と持ち込んでしまうアホでわがままな女の相手なんてするだけ無駄だ」
「わ、わたくしのどこがアホでわがままだというんですの!?」

 しかも無自覚かよ。やれやれ、こんなやつがクラス代表なら俺はボイコットするだろうな。

「………風宮。前に来て説明しろ。いや、説明してやれだな」
「……わかりました」

 俺は教卓と呼ばれるでかい机の前に立ち、視線が集中した。

「まず最初に―――織斑先生、今回のクラス代表はどのように選出するつもりでしたか?」
「二名以上が出れば投票のつもりだった」
「そうですか。では最初に織斑一夏とセシリア・オルコットでどっちをクラス代表に選出するか挙手してもらう。選出された二人は手を挙げるなよ」

 そして出たのは28人中一夏対オルコットは26対2だった。

「で、次にオルコット、お前は日本相手に戦争起こす気か? 確か、代表候補生の言葉は国が言った言葉だとして受け止められるんだろ? それにお前は元世界最強の前でその人の出身地を侮辱するのか? それと地図見ろ。お前の国も島国だ。それと―――最初に侮辱したのはお前だろうが」

 俺の指摘に次々と顔が青くなっていくオルコット。

「で、次に一夏だが、イギリス人に謝れ」
「初っ端そこ!?」
「当たり前だろう。決闘決闘とうるさいのはお前が安易にあいつの本音に合わせるからだ。ここを戦線にする気か?」
「う、ううぅ」

 俺が一夏に指摘させていると、

「……等ですわ……」
「ん?」

 オルコットの様子がおかしいことに気づく。見れば何人かが引いていた。

「上等ですわ、風宮祐人!! あなたに決闘を申し込みますわ!!」
「断る」
「精々今の内に―――って、断りますの?!」
「ああ。はっきり言って面倒だ」

 どうして決闘なんて受けないといけないんだ。テストはともかく、ここにいると安全保証だからいて手に職を付けるためにここに来ているんであって、俺は戦うために来ているわけじゃないのに……。

「奴隷のくせに………生意気な………」
「………はぁ」

 やっぱりそっちの方かと思った。

「決闘を受けないと言うのなら、今すぐここで―――」
「俺を殺した瞬間にお前は専用機を取り上げられるだけでなく、逮捕されるだろうけどな」
「ぐぎぎ……」

 納得いかないのかよ。

「……風宮、受けてやれ」
「嫌ですよ。そもそもクラス代表は一夏に決定なんですから、その方向で話を進めるべきだと思いますけど?」
「いや、受けてやれよ。何か見てて可哀想になってきた」
「まぁ、あれだけ図星を突かれているからな。怒るのも無理はない」

 俺は冷静に分析した。敵を潰すのに相手の特徴を把握するのに越したことはない。
 そんなことをしていると、布仏本音がこっちに来た。

「かざみん。せっしーと勝負してあげて~」

 う~んと俺は唸り、あることを思いついた。

「先生、このIS学園には射撃場はありますか?」
「ああ。IS学園でだと消費した弾丸は無料で支給されることもあり、持っていない者のためにも貸出用の銃が置かれている」
「それは心強いな」

 だったらこれからの訓練に適している。特に俺みたいなイレギュラーには必要なことだ。だとしたら、

(やはり報酬でだと金がいいだろうな………)

 それなら生活には困らないだろう。

「風宮、お前は何を考えている」
「いえ。どうせ受けるなら金をもらおうかなと……」
「………はぁ。風宮、決闘ぐらい受けてやれ。授業で見せる機会を無くすという条件ではダメなのか?」
「……それは見本を見せるということですか?」
「そういうことだ」
「………わかりました。今回は手を打ちましょう」

 ということで、俺はクラス対抗戦に出ることになった。 
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