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可愛いマスコットは貴重

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第一章

                可愛いマスコットは貴重
 奈良県に来てだ、八条観光奈良店勤務になったカーチャ=シミオナート一五〇位の背で癖のある金髪を後ろで束ねた黒い目に赤い唇と豊かな胸にやや面長の顔の彼女はまずこう言った。
「何この可愛くないというか気持ち悪いマスコット」
「奈良県の公認マスコットよ」 
 同僚の時任杏美は憮然とした答えた、黒髪をボブにしていて大きな優しい目とすっきりした顎のやや丸い感じの顔と穏やかそうな口元である。背は一五六程で胸は大きく脚も奇麗である。
「この県のね」
「これが?」
「そう、これがね」
 杏美は憮然としたまままた答えた。
「そうなのよ」
「何でこんなの公認にしたのよ」
「平城京遷都一三〇〇年記念に」
 この時にというのだ。
「決まってね」
「それでなの」
「そのままよ」
「ずっと奈良県に祟ってるの」
「祟ってるって妖怪じゃないから」
「いや、これ妖怪でしょ」 
 カーチャは杏美に真顔で言った。
「どう見ても」
「そう見えるけれど違うから」
「マスコットって言い張るの」
「言い張ってるんじゃなくて公式のね」
「奈良県のマスコットなの」
「そうなのよ」
「そうなのね、こんな可愛くないマスコットで」
 カーチャは首を傾げさせ真顔で言った。
「イタリアにもないわよ」
「あんたトリノ出身だったわね」
「そのトリノでもね」
 そこでもというのだ。
「全くね」
「ないわよね」
「というかこんな気持ち悪い可愛くないマスコット他にないでしょ」
「それずっと言われてるのよね」
 杏美も否定しなかった。
「これが」
「あんたこのマスコット嫌いね」
「私ここ生まれよ」
 これが杏美の返事だった。
「奈良県のね」
「奈良市の」
「まさにここにね」
「地元だけあって」
「それで嫌なのね」
「最初に見た時絶望したわ」
 心から、そうした言葉だった。
「何でこんなのマスコットにしたのって」
「本当に妖怪だしね」
「某妖怪漫画だとちゃんちゃんこと下駄の主人公の毛針来るわね」
「でしょうね、悪い意味でインパクト絶大ね」
「グッズに一家もあるから」
「いや、悪ノリし過ぎでしょ」
 カーチャは心から言った、そうしてだった。
 奈良市に住んでそのうえで仕事をしていった、奈良市はのどかで快適で風光明媚で実にいい街だった。しかし。
 そのマスコットだけが嫌だった、それで見る度に妖怪にしか見えないと思って言っていた。そんな中で。
 八条観光の公認マスコットの話が出た、その話を聞いてだった。
 カーチャは昼休み近鉄奈良駅前の商店街にある店で昼食を食べながら共に食べている杏美に対して言った。
「可愛いのがいいわね、マスコット」
「うちの会社のね」
 杏美はうどんを食べつつ応えた、二人共それを食べている。
「それがいいわね」
「そうよね、何かね」
「今ちゃんとしたデザイナーの人に頼んで」
 そうしてというのだ。 
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