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がりがりだった娘が今では

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第一章

             がりがりだった娘が今では
 小学三年生の白井房江は二重の大きな目と赤く微笑んでいる唇に黒いロングヘアを持っている、彼女は兎に角痩せていた。
 それでだ、クラスメイトの黒川こはく小さめの黒目がちの目を持ち赤く大きい唇を持つ色白で黒髪を長く伸ばしセットしている彼女はこう言っていた。
「あんたもっと太った方がいいんじゃない?」
「それがいくら食べても太らないの」
 房江はこはくに残念そうに答えた。
「私は」
「そうなの」
「牛乳もいつも沢山飲んでるけれど」
 それでもというのだ。
「私はね」
「痩せてるの」
「そうなの」
 体型は普通だがいささか小柄なこはくに言った。
「太れないのよ」
「まあそう言ったら私もね」
 こはくはこはくで残念そうに言った。
「背もっと欲しくてしっかり食べてるけれど」
「大きくならないの」
「もうちょっと欲しいのよ」
 背がというのだ。
「そう思ってるけれど」
「それがなのね」
「どうしてもね」
 これがというのだ。
「大きくならないの」
「そうなのね」
「だからあんたが痩せていいても」 
 房江のがりがりと言っていいまでの身体と見つつ言った。
「それでも同じね」
「そうなのね」
「そう思うわ」
 こんなことを言うのだった、兎角子供の頃の房江は痩せていた。二人は小学校は一緒だったが中学から房江が中高一貫の私立に進学しこはくは公立に進み。
 二人は別々になった、だが二人共八条大学に進学して。
 入学式でばったり会った、すると二人共仰天して言い合った。
「えっ、こはくちゃん!?」
「房江ちゃん!?」
 二人はお互いの顔の面影を見て言った。
「ひょっとして」
「そうなの!?」
「いや、まさかと思ったけれど」
「同じ大学なんて」
 二人共入学式で着物姿で話した。
「思わなかったわね」
「ここで再会するなんてね」
「しかも同じ学部なんてね」
「文学部でね」
 二人でこのことも話した。
「本当に奇遇ね」
「そうよね」
 二人でこう話してだ、また友達同士になったが。
 四月の桜が散ったばかりのキャンバスの中でこはくは今の房江を見てこんなことを言ったのだった。
「あんたお顔はそのままだけれど」
「変わってない?」
「大人になったけれど基本はね」
 素性のそれはというのだ。
「もうね」
「変わってないの」
「けれどね」
 今は白のブラウスと青のジーンズ姿の房江を見て言うのだった、琥珀は黄色いシャツに赤い半ズボンそれに黒ストッキングといったものだ。 
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