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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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滅神魔法と滅悪魔法

 
前書き
今出てる原作分までは完全に出し切りましたので、次は今後の原作の進み具合になります。
が、たぶん同時進行でオリジナル大魔闘演武編をやると思います。てかやります←さんざんいってる。
たぶんみんなもう好きにやっても怒ったりしなさそうなので自由にやっちゃいます(*・ω・)ノ 

 
シリルside

俺たちの方を見下ろしているレオンたち。そんな彼らは覚悟が決まっているのか、戦いに出てくる気配が伝わってくる。

「俺はグレイをやる」
「じゃあソフィアはどっちにしよっかなぁ」

リオンさんは兄弟弟子であるグレイさんをターゲットにしている様子。その横でソフィアが俺とウェンディを交互に見ていたが、その間にレオンが割って入った。

「俺がシリルだ」
「いいよぉ、ウェンディとイチャイチャできるし!!」

舌なめずりをしているソフィアにウェンディの顔がひきつっていたけど、それをフォローするために動くことができない。なぜなら既にレオンが俺の目の前へと現れ攻撃を仕掛けてきているのだから。

「ぐっ」

ギリギリ視界で捉えることができたため防ぐことができた。しかし彼はまだ魔法を使っていない。それなのに防いだ左腕に激痛が走る拳に顔をしかめる。

「さすが、いい反応するよな、シリル」
「そっちこそ」

ニヤリと笑みを浮かべているレオンに俺も同様の反応で答える。俺は手に水を纏うとそのまま拳を振るい、彼はそれを弾くように受け止めた。

















第三者side

「あの二組が戦っている状況になっているのか」
「うん。しかもシリルとレオンのマッチングだよ」

状況を確認してきたヨザイネからの報告にタメ息が漏れ出るカミューニ。他のメンバーたちも一対一での戦いが行われていることに全員が頭を抱える。

「止めに行くべき?」
「いや・・・下手なことをするとその時点で計画がおじゃんになりかねない」

様々な情報を仕入れていることもあり迂闊に動くことも憚れる彼らは頭を悩ませていた。そんな中、黒装束の男だけは冷静な様子で腕組みをし、ただ黙している。

「あんたは冷静でいいわね、天海」
「お前たちが焦りすぎなんじゃないのか?」
「そりゃ焦るでしょ。下手したらせっかく強化するために送り出した人員が削れちゃうかもしれないのに」

リュシーの言葉を聞いた彼は呆れたようにタメ息を漏らしながら首を振る。それが何を意味しているのか他の三人はわからず顔を見合わせた。

「逆だろ。さらなる進化が得られる可能性があるじゃないか」

わずかに見えた口元が緩んだのを見て、三人はタメ息をついた。この事態がどれだけ彼らにとって最悪であるのか、男は把握できていないようだからだ。

「進化も何も、ここで負けて重大なケガをする可能性の方が高いだろ?特にレオン相手じゃ・・・」
「俺はそうは思わない。あいつはティオスの一部だからな」

ニヤリと笑みを浮かべる男。そんな彼を見てヨザイネは目を細めた。

「それを言ったらレオンもティオスの一部よ」

彼らが戦った最大の敵であるティオス。その存在はシリルの身体を器にして蘇ったレオン。それゆえに二人はそのティオスになりうる存在と危惧することもできるが、男は首を横に振る。

「確かにあいつもティオスの一部だ。だが、あいつはもう(・・)ティオスになることはできない」
「もう?」

意味深な彼の言葉に目を細めるリュシー。その問いに男は頷いてから、言葉を紡ぐ。

「そもそもなぜレオンがあれだけの魔力を手にしているか、考えたことはあるか?」
「「「??」」」

彼の問いに三人は顔を見合わせた後、その答えを模索しようと頭を回転させる。考えが纏まったのか、カミューニが最初に口を開いた。

「シンプルに才能があったからじゃねぇのぉ?」
「でも、それだと造形魔法が使いこなせてなかった理由がわからないわ」
「それもそっか」

レオンは魔法に関して元々は苦手にしていた部分がある。しかし彼は滅神魔法を覚えた途端、フィオーレ最強クラスの魔導士にまで進化することができた。

「滅神魔法がレオンの身体に合っていた?」

ヨザイネの言葉に頷く男。彼はそれに付け足して話を続ける。

「レオンの身体・・・というよりレオンがあの魔法を手にいれた経緯として、力を発揮しやすくなったというのが正しいか」
「どういうこと?」

一度理解できたと思ったところでまたしても別の理論が出てきたために困惑する面々。男は立ち上がり、窓の外を見ながら口を開く。

「お前には前に話したよな。シリルとティオスはある魔法を有しているから天使に近い力を使うことができると」
「そんな話あったわね」

以前シリルを助けに向かった後、男から話された仮説。それが何のことなのかわかっていなかったヨザイネはその答えが聞けるのかと思い、静かに彼の方へと視線を向けていた。

「俺たちは滅竜魔法のせいで勘違いしていたんだ。ドラゴン同士は争いを起こすから互いに互いを滅する力を保有していなければならない。だが、あの二人が有している魔法はどうだ?」
「滅神魔法と滅悪魔法のこと?」
「・・・あ」
「「??」」

男の言葉を聞いて何が言いたいのか理解したカミューニは顔を挙げる。いまだに理解が追い付かない女性陣二人は二人の顔を交互に見合わせていた。

「そうか・・・そういうことか」

自分の言いたいことに理解を示すものが現れたことで満足げな表情を浮かべる男。彼は三人の方を向き直り、自身の仮説を述べた。

「レオンは魔法学校での出来事のせいで"負の感情"が強く人格形成されてしまった。だが、そのおかげで滅神魔法の効果を最大にまで引き上げられているんだ」
「負の感情で強くなる魔法?」
「なんで?」

首をかしげる二人。その二人に後ろからカミューニも言葉を述べる。

「ドラゴンが教えたことにより滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)はドラゴンを滅する力を手にいれた。じゃあ滅神魔法と滅悪魔法は誰が伝えた?」
「神様と悪魔?」
「じゃあ神と悪魔はなんで自分を滅する魔法を与えたんだ?」
「・・・そういうこと?」

そこまで聞いてヨザイネも理解できたのか二人の顔を交互に見る。いまだに事態を把握しきれていないリュシーだけは、取り残されていることに焦っている様子だ。

「滅神魔法は神が授けた魔法じゃないんだ」
「じゃあ誰が・・・あ!!」

そこで最後の一人もようやく事態を理解し、驚愕した。そしてその仮説が正しければ、彼の言いたいことが全て繋がるのだ。

「滅神魔法は神を敵と見なす存在・・・悪魔から与えられた魔法なんだろう」


















シリルside

一対一の戦いが五ヶ所で行われている黄金の梟(ゴールドオウル)。そこでの戦いは各所で熱気に覆われていた。

「「アイスメイク・・・」」

氷の造形魔導士同士の戦いになっているグレイさんとリオンさん。その奥ではゲンナイとグラシアンさん、コウテツとローグさんが戦いを繰り広げており、どこも気が抜けない戦いになっているようだ。

「ウェンディちょっと胸大きくなった?」
「やめ・・・ソフィア・・・」

そんな中一組だけ戦いというか・・・何やらいかがわしい光景になっているところもある。ウェンディが放つ攻撃を全て返し魔法(カウンター)で跳ね返し彼女へと密着することができたソフィアは、その身体をひたすらにまさぐっている。たぶんレオンとリオンさんという男二人と一緒にここまで来たから、その鬱憤が溜まっていたのだろう。

「でも・・・ウェンディを助けに行く余裕がない・・・」

本当は今すぐにでもウェンディを助けに行きたいんだけど、それを許してくれるような相手ではない。なぜなら相手はレオンなのだから。

「氷神の怒号!!」

ギルドを壊すのではないかというほどの勢いで放たれるブレス。俺はそのブレスにあるわずかに弱い箇所を見つけ出し、そこから彼へと接近するために突進する。

「竜魔の・・・」

なんとかその場を乗り切り距離を詰めることに成功した俺は二つの魔法を解放して彼へと拳を振り抜く。

「鉄拳!!」

魔法を放った直後で隙がある敵の顔面目掛けて振り抜かれる拳。しかし彼はそれを寸でのところで倒れるようにして回避する。

「ぐっ・・・」

今の一撃が決められなかったのは大きい。思わず奥歯を噛んだ俺に、ハンドスプリングで飛び上がるように起き上がると、そのまま拳をこちらへと向ける。

「氷神・・・」

彼の得意技の一つである永久凍土。それが来ると考えた俺は後方へと飛び去ろうとした。しかし、その時わずかに彼の表情が緩んだことに気がつく。

氷結(コンゲラート)!!」

こちらに向かってくる勢いをうまく使い身体を一回転させながら、頭上からの回し蹴りを打ち込んでくるレオン。拳をちらつかせてからのフェイクのせいで反応することもできなかった俺はそれを受けるしかない。

「・・・ん?」

完全に決まったはずの一撃。しかしレオンは不思議そうに首をかしげていた。その理由は俺は理解できている。

「天竜水!!」
「!!」

レオンが首をかしげたのは手応えがなかったから。それもそのはず、彼の攻撃が永久凍土ではないことに気が付いた俺はしゃがむようにして衝撃を吸収していた。ダメージこそは受けたものの戦闘不能になるほどではなかったこともあり、俺は自分からこちらの間合いに入ってきた青年へと両手から打ち出す高火力の魔法でカウンターを試みる。

「ぐっ・・・やるなぁ、シリル」

至近距離で打ち出された一撃。こちらのように衝撃を和らげたり回避することもできるような状態ではなかったはずなのに、レオンは両手を身体の前でクロスさせるだけでそれを乗り切ってしまっていた。

「チッ。今のでダメなのかよ」

思わずそんな声が漏れ出た。天海さんからのアドバイスのおかげで目の活用方法がよりよくなっただけに対処はできるが、それでもレオンにはまだ及ばないことに歯痒さを感じる。

「でも、確実に差は埋まってるな」

身体の成長的には完全に置いていかれてしまっているけど、魔力に関しては差が確実に縮まっている。このまま成長できればいつか絶対レオンを越えれるはず。

「まぁ・・・今をどうやって乗り切るかが問題なんだけどね・・・」

将来的には互角以上になれたとしてもここで負けてしまっては話にならない。ここでやられてしまえばデュークに魔力を吸い取られて悪用されてしまうのだから。

「もっと魔力を解放していくしか・・・」

ドラゴンフォースを解放しつつ滅悪魔法もギリギリまで引き出していく。それを見たレオンは一つ息をつくと、同様に魔力を高めていった。

























第三者side

「滅神魔法が悪魔の力・・・それなら確かにレオンが強い理由に説明がつくわね」

男の言葉に納得したといった反応を見せるリュシー。それについては他の二人も同様らしく、理解を示していた。

「ナツがENDになった時、私にダメージを与えることができていたのは悪魔になっていた彼が無意識下で滅神魔法と同様の力を得ていたからということね」
「そうだ。それにインベルも滅悪魔法を見た時、それらしいことを言っていたしな」
「グレイのことか?」
「あぁ。あいつは滅悪魔法を見て『悪魔を滅する人間は正常ではいられなくなる』と言っていた。もし滅悪魔法が悪魔の力なら、『悪魔の力を使う人間は』と言うのが正解のはずだ」
「確かに・・・な」

今までの出来事を思い返せば返すほどにより信憑性を増していく仮説。すると、リュシーはあることに気が付いた。

「あれ?じゃあ滅悪魔法は神が使う魔法でいいんだよね?」
「神か・・・それに類する存在が使う魔法なんだろう」

そう言って男はヨザイネの方を見る。神からの使いである天使だった彼女はそのことを言われていることに気が付き、小さく頷いていた。

「じゃあティオスが異常に強かった理由は?負の感情が強すぎて滅神魔法に影響を与えたから?」

レオンは魔法学校での出来事により人に対しての感情が他者よりも悪い方向に向かってしまう傾向がある。それにより悪魔が使っていたと仮定される滅神魔法が絶対的な威力を発揮していたが、ティオスもそれだけであそこまで行ったのかとリュシーは疑問を投げ掛けた。

「それもある。だが、それだけじゃない。ティオスはシリルの身体を器にして蘇ったレオン。そしてシリルは天使の子供でもある」
「天使の使う魔法は神が使うものと同義。その結果、神から与えられたと考えられる滅悪魔法を持っていたからより覚醒した力を得られたと考えられるのか」

カミューニのその言葉に頷く男。しかし、リュシーはあることを思い出し、問いかけた。

「あれ?でもシリルとグレイって滅悪魔法に飲み込まれかけておかしくなったことなかった?」

その瞬間に原因の一因である少女は顔を伏せる。誰も彼女の行動を咎めることはしないが、彼女なりに責任を感じているようではあった。

「そもそも失われた魔法(ロストマジック)はその副作用ゆえに使い手がいなくなった魔法だからな」
「そっか。滅悪魔法が神の力だとすれば、それを私たちが使い続けたらおかしくなっても不思議はないのか」

悪魔の心臓(グリモアハート)にいたことがあるカミューニだからこそ、失われた魔法(ロストマジック)がどのようなものなのか・・・そしてその末路をわかっている。利害が一致していただけの関係とは言え、かつて行動を共にした存在たちのことを思い出し、その表情は少し暗くなっていた。

「ドラゴンの強大な力を手にいれたせいで滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)は三管器官に狂いが生じている。神の人の身体にそぐわない力を手にいれたことで滅悪魔導士(デビルスレイヤー)は闇に飲み込まれそうになる。
だが、元々はスプリガンが作った悪魔(エーテリアス)の力を使っている滅神魔導士(ゴッドスレイヤー)には大きな副作用が認められない」
「人間が生み出したものだから、まだ耐性があるというわけか」

そしてここまで来ると、なぜ男がシリルに期待を寄せているのか、その理由が自然と浮かび上がってきた。

「シリルは天使の子。そしてそれと思われる魔法を保有しているからこそ、より伸び代が期待できる」
「あぁ、そういうことだ」
「でもレオンは?レオンもまだまだ伸び代は期待できるでしょ?」

二人とも年齢は一つしか変わらない。元々の力の差もある上に肉体の成長はレオンの方が早く起きた。そうなるとレオンの方がさらなる進化を遂げそうなものだとリュシーは考えていたが、それを男は否定する。

「レオンはあいつと違って満たされているからな。負の感情が薄れてしまえば、今までのような急激な成長は見込めない」

衰えることはないとしても、と付け加える男。彼らの事情を知っている三人はそれを理解すると、そのうちの一人、ヨザイネは笑みを浮かべた。

「じゃあシリルはレオンに勝てる!?」

期待に胸を膨らませ、満面の笑みでそう問いかけた堕天使だったが、男はそれにタメ息をついた。

「それじゃあレオンが使い物にならない可能性が出てくるだろ?」
「あぁ、それもそっか」
「恐らく二人の勝負は・・・シリルの成長次第で分けになるだろうな」
「それで被害が最小になってくれれば文句はねぇけど・・・」
「二人とも消し飛んだりしたら・・・」
「それはない」

不安そうな彼らの心配をバッサリと切り捨てる男。その表情は自信と言うよりも、祈りのようにも見えた。

「あいつらがそう簡単にくたばらないのは知っている。シリルとレオンを除いた連中もな」
「意外ね、あんたがそんなにみんなを評価するなんて」

まるで虫けらでも見るような目で彼らのことを品定めしていると思っていただけに彼からそのような言葉が出てきて困惑する面々。ただ、それには彼自身のプライドが関係していた。

「あいつらがそんな簡単に壊れられたら、仕留めきれなかった俺がバカすぎる」
「あぁ・・・」
「確かに!!」
「あんたの攻撃に耐えれたんだもん!!絶対大丈夫じゃん!!」

彼と戦ったことのある三人だからこそ、その一撃の重さをよくわかっている。そしてその場にいるのは彼の猛攻に耐え抜いたものたち。そのことを踏まえれば、問題がないような気になってしまった三人は笑顔を覗かせていた。

(まぁ、あとはその場にどんな連中がいるかによるけどな)

彼らの無事を確信しつつも、三人に悟られないようにわずかな不安を抱く男。彼はその後の行く末を、ただ待つことしかできなかった。



















「「うおおおおおお!!」」

ぶつかり合う冷気と冷気。互いのことを誰よりも理解し合っている二人の表情は戦っているというのに楽しげなものになっていた。

「もう限界なんじゃねぇのか!?リオン!!」
「それはお前だろ、グレイ!!」

ますます力を伸ばしている相手に喜びを感じつつも、互いに自らの限界が近いことも悟っていた。

(そろそろ決めねぇと・・・)
(魔力がキツいな)

体力的に双方ともにピークに達していることもありこれ以上の戦いは厳しいと判断した彼らは己が持つ全快の魔力を相手へと打ち込んだ。

氷欠泉(アイスゲイザー)!!」
「蛟!!」

全力で打ち込んだ一撃。それは辛うじて、弟弟子である青年の力の方が勝った。

「ぐあああああ!!」

破れた青年はその攻撃に飲まれて吹き飛ばされる。その先には二人の少女たちがいた。

「あ!!ウェンディお尻も成長してるね!!」
「もうやめて~・・・」

戦いというよりもソフィアの一方的なセクハラになっていた少女たちの戦い。そこに飛んでくる青年にウェンディは気が付いたが、ソフィアは全く視界に彼を捉えていなかった。

「ソフィアごめん!!」
「へ?」

それを好機と捉えたウェンディは彼女の腕を掴むと、そのまま合気道の要領で彼女を前方へと飛ばす。

「ソフィアどけ!!」
「リオンさん!?ふぎゃっ!!」

飛んできていた青年と身体の自由を奪われた少女は避けることもできずに衝突し、そのまま壁へと打ち付けられる。その衝撃は端から見ても大きく、二人は気を失っていた。

「大丈夫か?ウェンディ」
「グレイさん!!ありがとうございます!!」

貞操の危機を救ってくれた青年に深々と頭を下げる少女。その目には涙が溜まっており、相当に追い詰められていたのがよくわかる。

「あいつ・・・あとで意識取り戻したらボコボコにしてやるか」
「あの・・・あまりひどいことはーーー」

怒り心頭で倒れている少女の方を見ている青年を宥めようとした少女だったが、その身体に異変が襲った。

「あぁ!!」
「ウェンディ!?」

身体から光が吸い上げられていく。あまりにも突然の出来事に青年は困惑しつつも、すぐに事態を理解した。

「しまった!!」

自分たちを見下ろす眼帯をしている老人。彼はその場に倒れる少女を見て笑みを浮かべていた。
















「幻竜の・・・」
「影竜の・・・」
「「咆哮!!」」

息ピッタリで敵へと攻撃を与えていく二頭のドラゴン。そんな彼らも敵を圧倒していることに余裕を見せていた。その時だった。

「がっ!!」
「なっ・・・」

突然身体が光ったかと思うと力が抜けていくことに気がつく。それにより二人は立っていることもできずにその場に倒れてしまった。



















シリルside

響き渡る爆発音。それは俺とレオンの魔法がぶつかり合うことで起きたものだった。

「竜魔の・・・」
「氷神の・・・」

その爆発を利用して距離を詰めようとしたところ、相手も同じ思考だったらしく正面に敵がいる状態。それでも構わないと俺は口へと魔力を溜めていき、相手もまたそれに呼応するように攻撃の体勢に入る。

「咆哮!!」
「怒号!!」

同時に放たれたブレス。その威力は互角だったようで先ほどと同じように爆発が起きて吹き飛ばされた。

「うわっ!!」

転倒した俺は慌てて起き上がる。俺が飛ばされた際レオンは耐え凌いでこちらに向かってくるのが見えたためそれに対応しようとする。

「滅神奥義!!」
「滅竜奥義改!!」

ギリギリ体勢を整えることができた俺はトドメを刺しにきた彼を迎え撃つために最大火力の魔法で迎え撃つ。思ったよりも距離があったため、技を打ち出すには十分な時間があった。

「絶対零度!!」
「水中天嵐舞!!」

衝突した互いの拳。その威力は互角と思われていたが、わずかに青年の方が上回っていた。

「うわあああああ!!」

彼の魔法によりまたしても弾き飛ばされてしまう。だが、自分も魔法を放っていたからか体力がついていたからなのか、なんとか耐えることができた。

「ちぇっ、今のは決まったと思ったのに」

不服そうな顔をしているレオン。だけど、そう言いたくなる気持ちもわかる。今の衝撃でこっちの腕は力が入らなくなっているのだから。

「まぁ、次の一撃で仕留めてやるか」
「くっ・・・ん?」

もうこちらに反撃の余地がないことをわかっているからか、余裕綽々の笑みを見せながら近付いてくるレオン。それを迎え撃つ手立てがなかった俺は顔を歪めたが、直後にあるものが視界に入り、固まった。

「ねぇ、レオン」
「何?」
「そこじゃ危ないかも」
「え?」

気付いていない様子の彼に忠告すると、訳がわからないといった様子の青年は首をかしげる。その直後、その頭に壁を支えるために付けられていた柱が倒れてきた。

「ふぎゃっ!!」
「あ・・・」

互いの魔法が度々衝突していたせいで至るところに痛みが出ていたのだろう。その結果、柱の一部が倒れてきたわけだけど、それがたまたまレオンを直撃してしまったというわけだ。

「おーい、レオン?」

念のため声をかけてみるが当たりどころが悪かったようで青年は完全に目を回してしまっている。つまりこれは・・・

「俺の勝ちってことでーーー」

ラッキーとはいえ勝利は勝利。そう思いガッツポーズをしようとしたところ、突然身体から何かが抜かれるように光だし、力が抜けて立ち上がれなくなってしまう。

「あぁ・・・魔力が・・・」

レオンとの戦いにばかり気を取られていたせいで完全にデュークの存在を頭から消していた。そのせいで反応することができず、魔力を吸い取られてしまったのだった。










 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
VSレオンたち無事に終了です。
それと以前天海が感じていたシリルとティオスが翼を出せる理由とそれに合わせたこの作品での設定の公開でした。
あくまでこの作品でのことなので、実際は違うと思うので悪しからずm(__)m
でも悪魔の力なら滅神魔法が全員黒い魔力を使うのも納得ではあると思うんですよね← 
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