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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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もう一つの100年クエスト

 
前書き
前々から言っていた大魔闘演武編1話目だけは書いてみたけど更新するか迷ってます。
出しても問題はないと思うけど色々面倒な点もあるのがネック(;-Д-) 

 
デュークへと強烈な一撃を放ったグラシアンさん。それを受けたデュークは少し怒っているものの、彼はすぐに冷静さを取り戻していた。

「今のアテナを制御できるのは俺だけだ。いいのかい?敵に回しちゃいけねぇ女だぜ」

なおも交渉を続けようとするデューク。てっきり先ほどの一撃で交渉は決裂したと思ったが、彼はまだ諦めてなかったらしい。

「そのアテナを完全体にするのに魔導士の魔力が必要ってわけか」
「さっきも話したが俺には魔法の才能がない。魔力を集めるには魔導士が必要だろ?」
「だったらこいつらに拘る必要もまたないんじゃないのか?」

グラシアンさんの発言はもっともだと思う。この大陸にも魔導士はたくさんいるはず。それなのに捕まえられたのは妖精の尻尾(フェアリーテイル)の俺たちに標的を絞ってきた。それが謎で仕方がない。

「いやいや、魔力なら誰でもいいわけじゃない」
「??」

その瞬間俺たちの方へと視線が向いたのに気がついた。それに危険を察知した俺たちは慌てて後方へと飛び去る。

「ほう。いい反応だな」

俺たちがいたところから魔力の波動が吹き上がってくる。もしそれを受けていたらどうなっていたら想像するとゾッとする。

「なんだ?突然・・・」

ただ、その攻撃が放たれなかった人物が一人いた。それは俺の隣にいたグレイさん。ローグさんとグラシアンさんも攻撃を放たれたにも関わらず、彼だけはその攻撃の対象になっていなかった。

「まさかお前らの狙いは・・・」

それにより彼らがなぜ俺たちを狙ったのか、真っ先に妖精の尻尾(フェアリーテイル)を狙ったのかがわかった。その理由は俺とウェンディ・・・そしてナツさんがいたからだろう。

「欲しいのはドラゴンの魔力」

アテナが完全体になるために必要なのはドラゴンの力。なぜドラゴンの力に限定されているのかはわからないが、それなら一般の魔導士を狙わない理由は説明がつく。

「オロオロ・・・てっとり早くドラゴンの魔力を集めようとドグラコアを回収しようとしたんだが・・・」
「お前たちに邪魔されたというわけだ」

ゲンナイとコウテツがそう言う。あの大迷宮に彼らの仲間の一人が来ていたようなようなのだが、偶然鉢合わせたグレイさんに倒されてしまったため、その力を手にすることができなかったらしい。

「これじゃあますます協力することなんかできないね」
「うん。そうだね」

だが、今の攻撃は悪手だっただろう。俺たちの目の前の敵に対する警戒心をよりいっそう高めることとなったのだから。

「もっと穏便に行きたかったが・・・ゲンナイ、コウテツ」

デュークの指示を受けて二人は動き出す。そのうちの一人、歌舞伎のような姿のゲンナイが錬金術を放とうとしてくるが・・・

「だからそれは意味がないって!!」
「ぐっ!!」

またしても煙に変化していたグラシアンさんが姿を現し、難なく彼へと攻撃を加える。

「こいつは俺がやる。そっちは任せる」
「「はい!!」」
「「おう!!」」

相性的に有利なのを見てゲンナイはグラシアンさんへと任せることにした。そのため俺たちは四人がかりでコウテツさんへと向かっていく。

「全く・・・」

絶対的に不利な状況にも関わらず彼に焦る様子はない。顔が見えていないからというのもあるだろうが、声色的にも平常心を保っているのはよくわかった。

「それでも・・・」

ただ、それでも俺たちが焦る必要は一切なかった。この状況で彼から攻撃を仕掛けてくることはほぼあり得ない。そのため真っ先に俺が突っ込むと、相手はそれに合わせてこちらに視線を向ける。

「アイスメイク・・・」

攻撃の間合いに入りかけたそのタイミングで急ブレーキをかける俺。この攻撃はフェイク、反対方向からコウテツの背後を取ったグレイさんが攻撃を放った。

槍騎兵(ランス)!!」

死角から放たれた氷の槍。だが、それに反応したコウテツは全てを鉄へと変えてそれを防いでいた。

「影竜の斬撃!!」
「ぐっ!!」

グレイさんの攻撃を完全に防いでみせたコウテツさん。だが、その後ろからローグさんが攻撃を加えると彼は反応することができず地面を転がる。

「天竜の翼撃!!」
「ぐわあああああ!!」

そんな彼にさらなる攻撃を加えるのは天空の巫女。彼女の風により打ち上げられた相手へ俺も追撃しようとジャンプする。

「水竜の・・・」

大きく息を吸い込みブレスの体勢に入る。コウテツはそれに気が付いているようだが、とてもじゃないが錬金術を出せような状況には見えない。

「咆哮!!」

相手の全てを飲み込むほどの大きな水の波動。空中で身動きの取れないコウテツはそれを避けることはできないはずだった。

封印の氷地獄(コキュートス)!!」

完全に決まったはずの攻撃。しかしそれは彼に届く前に黒い氷により遮られてしまった。

「え?」
「この魔法は・・・」

地面に着地して魔法を放った人物の方へと視線を向ける。そこにいたのは三人。

「わぁ!!シリルとウェンディだぁ!!久しぶり!!」

一人は俺たちよりも少し背の高い銀色の髪をした少女。彼女は満面の笑みで俺たちへと手を振るが、その顔を見た俺とウェンディは背筋が凍ったのは言うまでもない。

「こんなところでお前に会えるとは・・・面倒なことだな、グレイ」

真ん中にいる背の高い銀色の髪をした青年は弟弟子である黒髪の氷の魔導士を睨み付ける。ただでさえも鋭いその眼光は、よりいっそうの鋭さへとなっていた。

「まさかあの依頼からお前と戦わなきゃいけなくなるなんて・・・」

そして最後の一人。金色の髪をした青年は俺の方へと視線を向ける。その表情は非常に複雑なものになっており、困惑している俺たちと同じ感情であることは言うまでもない。

「レオン」
「リオン!!」
「ソフィア!?なんでここに!?」

デュークの後ろから現れた同じフィオーレの魔導士である三人。なぜ彼らがここにいるのか・・・そして俺たちへと敵意を向けているのかわからず俺たちはただ困惑することしかできなかった。




















第三者side

評議院のある一室。その場にいる四人は悩ましげな表情を見せ、頭を抱えていた。

「ずいぶん面倒なことになったようだな」
「あぁ・・・まさかこんなことになるとは・・・」

黒装束を身に纏っている男の言葉にカミューニは頷く。その表情は隣にいる少女からの報告によって歪められていた。

「なんでこんなことに?」
「私が聞きたいよ。まさかあの依頼がこんなところで繋がるなんて・・・」

不貞腐れたような表情を見せているリュシーに一時帰還してきているヨザイネは首を振る。その場にいる全員がこの事態に頭を悩ませていた。

「これじゃあますます事態を悪化させているだけだ」

身体を丸めるように頭を抱えながら小さくなるカミューニ。彼らがこうなっている原因は、シリルたちが100年クエストを受注する時にまでさかのぼる。


















「お姉ちゃん久しぶりぃ!!」

シリルたちが100年クエストの件をカミューニから伝えられているその隣の部屋。そこにも数人の魔導士が集められていた。

「ソフィ、元気そうね」
「お姉ちゃんと会えるの楽しみだったんだぁ!!」

評議院の一員として活動しているリュシー。そんな彼女に呼ばれたソフィアは姉との再会に歓喜して飛び付いていた。

「相変わらず元気だな、ソフィアは」
「お姉ちゃんにはセクハラしないんだね」
「お尻まで手が回ってないね」

そんな彼女を姿を見ながらそう呟いたのはレオン、シェリア、ラウルの三人。シェリアとラウルはハグのためにリュシーの背中へと回されている手が下の方に降りてこないことに驚きを隠せない様子だった。

「まぁ・・・さすがに姉にはな」
「お前で満足してるわけか」

その分なのかはわからないが顔が赤く息が上がっているカグラを何かを察したリオン。それにますます剣士は顔を赤くしていたが、話が進まないと思ったリュシーはソフィアを離すと、咳払いして話を始める。

「今回呼んだのは大事な依頼をお願いしたくてね」
「大事な依頼?」
「またどこかの国に行くのか?」

世界中を飛び回ることになっている彼女たちは次はどこに行くのかと、リュシーから渡された依頼書に視線を落とす。だが、そこに書かれていたのは彼らが考えていたものとは違うものだった。

「あれ?これって・・・」
「前に俺が受けた奴じゃ・・・」

蛇姫の鱗(ラミアスケイル)のメンバーたちには見覚えのある依頼。それは以前シリルとウェンディが蛇姫の鱗(ラミアスケイル)に在籍していたこと、レオンがジュラからの頼みで引き受けたもう一つの100年クエストだった。

「これは確か中止にされたはずでは?」
「アクノロギアが彷徨いているからと・・・」

リオンとカグラがリュシーへと問いかける。それに彼女は頷いた後、返答した。

「確かにその依頼は中止された。依頼主も一度はそれに納得してくれたらしいんだけど、今はもうアクノロギアがいないでしょ?そのことを知ったからかもう一度引き受けてほしいと依頼の再申請が来たのよ」

ティオスと天海により仕留められたアクノロギア。その存在がこの依頼を中止した理由だったのは間違いないが、その脅威が取り除かれた以上もう一度それを受けてほしいと考えるのは依頼者としても当然と言える。しかし、そのことで引っ掛かる点もあった。

「依頼主がまだ生きてるってこと?」

首をかしげながら問いかける銀髪の少女。100年クエストは100年間誰一人として達成できたものがいなかったことにより命名された依頼。つまり依頼した人物もその頃から存命していることになる。

「依頼主のことは私たちもよくわからないの。色んなところを経由して依頼を送ってきてるらしくて・・・」
「お前たちも大変なんだな」
「なんでソフィアの方を見るの?カグラさん」

まるで自分がいると大変とでも言われているような気がした少女は目を細めるが、カグラは何も言うことはない。実際にそう思っているのは間違いないのだろうから。

「それでこの100分クエストを俺たちでやってこいと」
「何?100分クエストって」
「リアルタイムアタックでもしてたの?」

本気なのか冗談なのかわからないレオンのボケへシェリアとラウルが突っ込みをいれると、リュシーは苦笑しながらも頷いて答える。

「そう。本当は一つのギルドにお願いした方がいいんだけど、状況が状況だからね。少人数で確実に遂行できるメンバーを選定した結果、あなたたちにお願いすることになったの」
「状況が状況・・・ね」

どこか不満げな表情を見せたリオンだったが、姉のことが大好きなソフィアが彼女へと厳しい表情を見せる青年の足を踏みつけ何も言えない状況にしていた。

「出発の日とかはそっちで決めていいから、任せていいよね?」
「もちろん!!」
「心得た」
「リベンジになるのか」
「そうとも言えるよね」
「頑張ろう!!レオン!!リオン!!」
「あぁ、そうだな」

全員が納得したことで安堵の息を漏らすリュシー。こうして正式に依頼を受注した彼らは霊峰ゾニアへと向かった。

















以前までは常に雪に覆われていた霊峰ゾニア。しかし今そこはアイリーンの魔法により自然豊かな場所へと変わっている。

「それで?その宝玉はどこにあるんだ?」

以前この依頼を受けたことがある青年へと問いかけるリオン。それに彼は首をかしげてみせた。

「え?もしかして見つけられなかったの?」
「見つけたら持って帰ってるよね」
「それもそうか」

どこにあるかもわからない宝玉を見つけるためにと一度手分けして探すことにしたレオンたち。だが、しばらくして集合した彼らは誰一人として収穫を得ることができずにいるようだった。

「手がかりなしか」
「怪しい何かもなかったのか?」
「洞穴とかも見てみたけど・・・」
「どこも行き止まり!!」

シェリアのお尻を触っていたソフィアはレオンに手を叩かれていたが、何も収穫がなかったことに元気に答えていた。それから数日間探し回った彼らは何も情報を得ることもできないままついに頂上へとたどり着いていた。

「ここまでくれば何かあるかと思ったが・・・」
「甘かったみたいだな」

ただ、そこにも何かの手がかりになるようなものは何もない。彼らは困り果て、しばらくその場から動けなかった。

「確かにこれじゃあそう簡単に依頼が遂行されないのも納得だな」
「捜索範囲が広すぎるよ」

どこにあるのかもどんなものなのかもわからないため手詰まりになってしまった彼らはため息を漏らす。そんな中、レオンは近くにあった岩に休憩のために腰を下ろした。

ガチャッ

「「「「「ん?」」」」」

その瞬間、何か音が聞こえ全員がそちらを見る。

「これは・・・」
「何かやったな」
「イヤな予感しかしない」

その予想通り、レオンが座っていた岩が真っ二つに割れると、彼はそのまま中へと落ちていってしまう。

「レオン!!」
「待ってよ!!」

それに付いていくように飛び込むシェリアとラウル。取り残された三人は顔を見合わせた後、意を決したようにその中へと飛び込んでいくのだった。


















「いててて」
「レオン!!大丈夫!?」

お尻から落下した彼はそこを押さえていると、上からラウルによってゆっくりと下降してきたシェリアに声をかけられる。

「なんとか」
「よかったぁ」
「全く・・・何をやってるんだお前は」

彼女に続いてそこへと降りてきた三人。彼らはたまたま持っていた縄を使って降りてきたようだが、見上げる限り元いた場所が見えないほどのところまで落下しているのがわかる。

「これは登るのは無理だな」
「てかレオン良く無事だったね」

どれ程の高さから落下したのかわからないが、普通なら命を落としてもおかしくないほどの高さは余裕である。そしてそれを確信付けるように、レオンは立ち上がろうと地面に手を付いた際、あるものに手が触れ顔が青くなった。

「これは・・・」

それはどう見ても骨。それも一つではない。いくつもの骨が周囲に落ちており、中には人の頭部と思われるものまである。

「なるほど。これが100年クエスト」
「あそこの入口を探し出すまでが困難な上にそれを見つけても無事にここまで降りてこなければならない」
「降りれなければ死、あるのみってことか」

その空間は奥へと続いており、その先に何かがあるのは誰の目から見ても明らかだった。そのため彼らはできる限りの警戒と準備を行い進んでいく。

「わぁ!!」
「なんだこれは!?」

その道はとにかく険しかった。100年も前のものとは思えないほどの多彩な罠が張り巡らせてあり、それを掻い潜ろうとすればさらなる罠が待ち受けている。少しでも気を緩めれば命を奪われかねないその道を彼らは助け合い、協力しながら進んでいった。

「「「「「ハァ・・・ハァ・・・」」」」」

何日ほど経ったのだろうか、彼らはあらゆる道を進んでいくうちに広く開かれた空間へとたどり着いていた。そしてその空間の中心には、台座に丁寧に置かれた金色の宝玉があった。

「あれが今回の依頼の・・・」
「これは確かに・・・長い間遂行されなかったのも頷けるな」

ここに来るまでに多くの人の骨を見かけた彼らは進んできた道を見ながらそう言う。しかし、ようやく依頼達成ができそうなこともありレオンは真っ先にその宝玉を掴みにいった。

「待て!!」

手を伸ばしかけた青年。しかし、そんな彼に待ったをかけたのは彼の従兄弟だった。

「どうしたの?リオンくん」
「何があるかわからんからな。不用意に取りに行くな」
「いやいや・・・さすがにもう大丈ーーー」

彼の忠告を無視して掴もうとしたレオン。しかし、彼はそれに手を触れる直前で手を止めたまま固まってしまった。

「どうした?」
「何かあったの?」
「あ・・・いや・・・」

何かを見つけてしばし固まっていたレオン。しばらく動けなくなっている彼を見たカグラは痺れを切らしたのか、彼を押し退け宝玉に手を伸ばす。

「全く・・・何をやっているんだ」
「あ!!カグラさん!!」

止めようとしたレオンよりも早くカグラはその宝玉を手に取る。ただ、特に何も起こることもなく彼女は宝玉を手に取ることができていた。

「最後は意外と呆気なかったな」
「そうですね!!あとはこれを持ってーーー」

そこまで言いかけて、ソフィアはあることに気が付いた。宝玉を掴んだカグラが動かなくなっているのだ。

「どうしたの?カグラさん」
「何かあった?」

ソフィアとシェリアが彼女の様子を確認しようと顔を覗き込み、言葉を失った。宝玉を手にした彼女の顔がみるみる青ざめているのだから。

「カグラさん!!どうしたの!?」
「シェリア!!カグラさんに触るな!!」

異常を察知したシェリアは自身の治癒魔法で何とかしようと彼女の肩に手を置く。すると、カグラに触れた瞬間、少女の顔も同様に血の気が引いていく。

「何・・・これ・・・」
「身体が・・・」

そのまま力なく倒れる二人。その手から溢れ落ちた宝玉はレオンの前へと転がるが、彼はそれを靴の裏で受け止めそのまま押さえ付けている。

「どういうことだ?レオン」
「わかんない。けど、あれ見てよ」
「「「??」」」

何が起きているのかわからずにいる四人。彼らはレオンが指さす方向を見て言葉を失った。そこには無数の人の骨が転がっているのだから。

「まさかこれに触れると死んじゃうの!?」
「カグラさん!!シェリア!!」

最悪の事態を考え彼女たちへと駆け寄るソフィア。その際彼女は二人の胸を揺らして反応を見ようとしていたので、リオンとレオンから頭を叩かれていた。

「「うぅ・・・」」
「息はあるな」
「魔力が吸いとられたみたいだけど・・・」
「急いで戻ればなんとかなるかな」

ここまでやってきた道を見つめながら険しい表情の四人。それでも今はすぐに二人を連れ出さなければならないと彼らは元来た道を全速力で駆けていった。


















「魔力欠乏症だね、これは」

罠が全て出切っていたこともあってか帰ってくるのにはそう時間がかからなかった。彼らは一番近かった蛇姫の鱗(ラミアスケイル)に二人を運び込むと、オーバに症状を見てもらっている。

「治りそう?」
「すぐには無理だよ。自然治癒を待つしかないねぇ」

どうやら大事には至らないようでホッとひと安心の彼ら。そんな彼らに向かってオーバは指を立てクルクルと回す動きを見せる。

「ほら!!二人の面倒は見ていくからあんたたちは依頼主のところに早くそれを持っていきな!!ただし、絶対に素手で触るんじゃないよ!!」
「え?でも・・・」

横になっている恋人を見て不安そうな顔を見せるレオン。そんな彼にオーバは鋭い眼光を向ける。

「なんだい!!私が信用できないってのかい!?」
「そんなことは言ってないよ」
「え?ソフィアは信用してないけど?」
「何を言うんだい!!回すよ!!」
「カウンター!!」
「効くか!!」
「ひょええええ!!」

失礼な発言をしたソフィアを得意の魔法で回してみせるオーバ。しばらくして彼女が目を回して倒れたのを確認してから話し始める。

「あんたたちは引き受けた依頼をしっかり遂行してきな。それが魔導士ってもんだよ」
「シェリアさんとカグラさんは私たちが面倒見てるであります!!」
「オオーン!!心配すんなよ!!」
「キレんなよ」 
「ラウもこっちに残るよ!!」

オーバの後ろから蛇姫の鱗(ラミアスケイル)に再加入したサクラとトビー、ユウカも彼らを後押しする。それを受け、三人は顔を見合わせ頷いた。

「わかった」
「成功を伝えたらすぐに戻ってくる」
「カグラさんに変なことしないでね!!特にサクラ!!」
「私が何をすると思ってるんですか!?」

足早にギルドから飛び出す三人。彼らは依頼主がいると言うギルティナ大陸の錬金術師ギルド・黄金の梟(ゴールドオウル)へと向かったのだった。



















「これがアテナがイシュガルに渡った理由の一つか」

ギルドについた彼らを出迎えたのはマスターであるデュークだった。そんな彼はレオンたちが持ってきた宝玉を手に取りじっくりと観察している。

「ねぇ?あれ素手で触ってない?」
「大丈夫なのかな?」
「あいつの魔力じゃカス過ぎて吸収されないんじゃないか?」
「おい、聞こえてるぞ」

リオンの容赦のない言葉にしかめっ面をしていたデュークだったが、彼は咳払いすると彼らにあることを依頼した。

「もし可能ならでいい。実は手伝ってほしいことがあるんだ」
「手伝ってほしいこと?」
「えぇ?ソフィア早く帰ってカグラさんのおっぱい揉みたい」
「病人を労る心はなかったんだな」

帰ってから大変なことになりそうな予感がする二人はタメ息をついていたが、デュークはそれを気にすることなく話し始めた。

「恐らくこの魔水晶(ラクリマ)はアテナが人間になるために必要だと考えていたんだろう。だが、これだけじゃもしかしたら足りないかもしれん」
「それが追加の依頼か」
「あぁ。実は魔力を集めるためにある魔導士たちと戦わなければならなくてな」

ギルドに残してきた二人が心配な彼らは顔を見合わせどうするか考えていた。だが、乗り掛かった船を降りるのも気が引けると彼らはデュークの依頼を引き受けることにした。

















「まさかシリルたちが相手だったとはね」

自分たちの友人でもありもっとも厄介な相手である彼らを見たレオンはタメ息をつく。だが、三人は引くという選択肢は持ち合わせていなかった。

「悪いけど、とっとと依頼をこなして帰らせてもらうよ」

シリルを見下ろしながら鋭い視線を送るレオン。そんな彼を見て、シリルは笑っていた。

「いいじゃん。レオンならこいつらよりずっといいバトルができそうだよ」

思わぬところでの親友(ライバル)との戦い。本来ならピンチであるはずのその状況に、シリルは心踊らせているのだった。






  
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
まだ原作の詳細がわからない中、ワンチャンやれそうと思っていたオリジナル展開をやることにしました。恐らくウェンディたちの魔力が抜かれた後、グレイ当たりがバトルって感じだと思ってるのでそんなに問題はないと思うけど・・・結構リスキーだなとは思ってます。
ヤバそうだったらどうにか辻褄合わせると思うのでご了承くださいm(_ _)m 
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