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仮面ライダーファイズ 小さな星の話

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第四十章

「いいな」
「はい。じゃあ」
 長田はこくりと頷いた。彼女もまた姿を消す。しかし彼女の居場所はもう決まっていた。
「オルフェノクだけれどもいいのか」
 乾が草加に問うてきた。
「それで」
「俺もオルフェノクだ」
 それが今の草加の返事であった。
「それだけだ」
「そうか」
「ああ」
 三人のところに津上達が来た。まずは津上が乾に声をかける。
「終わったみたいだな」
「一応はな」
 ぶっきらぼうな調子で言葉を返す。
「倒したさ。今度は復活はない」
「そうか」
「そっちも何とか終わったみたいだな」
「はい。こっちはすぐに」
 氷川が答える。
「ライオトルーパーも来ましたけれど」
「やっぱり来たか」
「それでも大した数じゃなかった」
 葦原がそう述べる。
「だから俺達はそんなに苦労はしなかったな」
「そうか」
「けれど他の連中はな」
 津上は答える。
「結構苦労したみたいだ」
「大丈夫か、あいつ等」
 三原がそれを聞いて言う。
「まさかとは思うけれど普通の人もいたし」
「心配なら見ればいいだけだな」
 草加がここで言う。
「そうじゃないかな」
「そうだな。じゃあ」
 三人は津上達と一緒に行くと戦いはもう終わっていた。ライオトルーパー達の灰になった屍が累々と横たわるだけであった。
「遅かったな」
 木野が津上達の姿を見て声をかけてきた。
「こちらはもう終わった」
「みたいですね」
 津上はそれに応えて述べる。
「何かあっという間で」
「数は凄かったがな」
 木野はそう言葉を返してきた。
「しかしこの程度ではな。他のライダーもいたしな」
「ですか」
 周りではG5の部隊が撤収を開始していた。一条と五代もそれについていた。
「では一条さん、これで」
「うん、また」
 北條と一条が別れの言葉を交わしている。そこには元に戻った五代もいる。
 北條は負傷者を連れてその場を後にする。五代はその間に乾達ににこりと笑ってサムズアップをしてきた。だが乾はぶっきらぼうに手で挨拶をするだけだった。
「それだけか」
「また一緒に戦うことになるだろうからな」
 そう木野に返す。
「だからな」
「そうだな。それは俺もだ」
 木野はその言葉に頷いた。否定はしなかった。
「また君達と会うことになるだろうな」
「木野さん、何処へ」
「俺の居場所は決まってるさ」
 葦原に対して答える。
「元の場所だ」
「ですか」
「何かあったら来てくれ」
 すっと優しげな笑みを浮かべて述べる。
「ではな」
 木野も去った。五代も一条と共に戦場を後にしていた。他のライダー達も次々と戦場を後にしていく。
 彼等はまるで無愛想な様子だった。だが城戸と秋山だけは乾達に声をかけてきた。
「またな」
「今度会った時はこうはいかないかもな」
 そう言い残して姿を消す。乾達はやはり無愛想な様子であった。津上達の方が愛想がある位であった。
 木村も先に去りそこへ黒衣の青年とスマートレディが来た。黒衣の青年が彼等に対して語り掛けてくる。
「これでまずはオルフェノクとの戦いは終わりですね」
「ああ。けれどな」
 乾が彼等に言葉を返す。
「まだ色々わかってないところがあるよな」
「わかっていないところ」
「そもそも君は何者なのかな」
 草加はスマートレディに問うた。
「オルフェノクじゃないのはわかったけれど」
「それも次の戦いでわかりまあ~~す」
「次の」
「はい。津上君達はこのまま帰っていいけれど乾君達はまだ大きな戦いがあるの」
「やっぱりな」
 三原はそれを聞いても驚かなかった。納得している顔であった。
「そうなったか」
「はい。ですがそれは貴方達が運命に導かれてのことなので」
「今じゃないが近いうちにか」
「はい」
 青年は津上に対して答える。
「その時は私は動きません。貴方達だけが」
「じゃあそれでいいや」
 草加はぶっきらぼうとも取れる言葉を出した。さながら乾のように。
「どんなライダーか知らないけれどな。それが運命なら」
「戦うしかないよな」
 三原も言う。強い決意のある顔で。
「この力で」
「俺は決めたんだ」
 乾は青年達に対して述べる。
「世界を真っ白にするってな。だから俺は」
「ならば先に進むのです」
 青年の声が優しくなった。
「いいですね」
「ああ。また会うんだな、あんたとは」
「私はいつもスマートブレイン社にいま~~~す」
「オルフェノクが滅んだのにか?」
 草加はそれを聞いて彼女に問う。
「どうしてまた」
「スマートブレイン社は買収されたの」
 彼女は答える。
「色々な人に分割されて」
「そうか。じゃあ俺はネット部門が欲しいな」
 草加は笑ってそう述べてきた。
「それでいいかな」
「ネット部門なの?別にいいけれど」
「じゃあそれでな。次の敵がどんな奴か調べたくてな」
「俺は啓太郎のところにいる」
「あそこか」
「ああ、何かあったら来てくれ」
 そう津上達に述べる。
「何時でもな」
「わかった、じゃあな」
「僕は警察にいますので」
 氷川の居場所はそこであった。そして葦原もまた居場所があった。
「俺はここだ」
「そこに電話すればいいのか」
「ちょっと地方の方にいてな」
 少し苦笑いになっていた。
「電話してくれたらすぐに行く」
「何かあったらすぐに呼ばせてもらうぜ」
「そういうことでな」
 津上達と話をつけた。それが終わってから津上達はそれぞれの場所に帰った。
 乾達だけになった。まずは草加が去る。
「おい、啓太郎のところに帰るじゃないのか」
「沙耶のところに行って来る」
 彼は答えた。
「あいつも流星塾の生き残りだからな。話したいことがある」
 草加は一旦彼等と別れた。そして三原も。
「ちょっと保育園に寄る」
「御前もか」
「少しだけな。里奈のところへ」
「御前の帰る場所だな」
「そういうことだな」
 彼もまた一旦別れる。黒衣の青年とスマートレディがそこにいた。
「貴方も戻られるのですね」
「少しな」
 青年に答える。
「貴方の戻る場所は」
「それは今そこにあるさ」
「ですか」
 青年は彼の返事に頬を緩めさせる。見れば前から真理と啓太郎が来ていた。
「俺はこれからも戦わなくちゃいけないだろうがな。それでも」
 微かに笑みを浮かべながらの言葉になっていた。彼は真理と啓太郎を見て笑っていた。
「帰る場所があるってのはやっぱり有り難いな」
 そう言って二人のところへ歩いていく。彼は長い戦いの中で自分を支えてくれる者達に向かって歩いていく。その先には笑顔があった。


仮面ライダーファイズ  小さな星の話   完


                               2007・2・16
 
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