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仮面ライダーBLACK RX〜ネオゴルゴムの陰謀〜

作者:紡ぐ風
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第十八話『文明を喰らう嵐』

 それは、突然起きた。都庁周辺を囲うように嵐が巻き起こり、植林された樹木が薙ぎ倒され、巻き上げられた樹木や歩行者は自動車に叩きつけられる。
 「南光太郎!早く現われろ!私と戦わなければ、被害者は増えるぞ!」
 逆巻く嵐の中でリシュナルは叫ぶ。その騒ぎに光太郎は駆けつける。
 「リシュナル、罪のない人々を傷つけるのはやめるんだ!お前の狙いは俺だけのはずだ!」
 光太郎は自家用バイクから降りヘルメットを外すが、バイクとヘルメットは嵐に巻き上げられ空中で分解しながら爆発する。
 「まっていたぞ、南光太郎。貴様の首を、今度こそクリムゾンエクリプスに献上してやる!」
 リシュナルは翼から真空波を放ち、光太郎の命を狙う。
 「人々の平和を、これ以上奪わせるものか!変身!」
 光太郎はRXに変身し、嵐の中へ向かってゆき、中心部にいるリシュナルに掴みかかる。リシュナルが体勢を崩したことで嵐は消え、巻き上げられたものは勢い良く地面に落下する。
 「これならどうだ!」
 リシュナルは真空波を連続で放ちRXを狙うが、RXはすぐさまロボライダーへ変身し、その装甲で真空波を防ぐ。
 「ええい!貴様の首を持ち帰らねば、私に明日が来ない。命に変えてでも貴様の首を討ち取らせてもらう!」
 リシュナルは回し蹴りを放つが、その脚はロボライダーによって掴まれ、ジャイアントスイングで投げ飛ばされる。
 「おのれ…」
 リシュナルは立ち上がりながら風の弾丸を放つが、ロボライダーの装甲に傷をつけること一つできなかった。
 「ボルティックシューター!」
 ロボライダーはその銃口の狙いをリシュナルの心臓に定める。しかし、
 「シューッ!」
 クモ怪人達の妨害により狙いは外れ、ハードショットはリシュナルの翼を掠める程度で終わってしまう。
 「リシュナル様、ここは我らに任せてください。」
 後から駆けつけてきたコウモリ怪人はリシュナルを立ち上がらせる。
 「だが!」
 「クリムゾンエクリプス様からの指示です。さあ!」
 リシュナルはコウモリ怪人の言葉を聞き撤退する。
 「待て!」
 ロボライダーはリシュナルを追いかけようとするが、
 「お前の相手は俺達だ!」
 コウモリ怪人の妨害を受け、撤退を許してしまう。
 「くっ!」
 ロボライダーは怪力から放たれるロボライダーパンチによってクモ怪人達を一掃する。
 「なんて強さだ!」
 コウモリ怪人は滑空し飛びかかる。
 「これでどうだ!」
 ロボライダーは再びエネルギーを溜め、ハードショットによってコウモリ怪人を撃破する。
 「逃げられたか…これじゃあ、持ち帰るのも無理だな。」
 光太郎は変身を解除し、バラバラになったバイクを見ながら言った。

 「クリムゾンエクリプス、リシュナルを帰還させるとは、どのようなおつもりですか!」
 ボロボロの体でネオゴルゴム神殿に帰還してきたリシュナルを見ながらソフィルは苦言を呈する。
 「確かに、リシュナルは度重なる実態の償いとしてRXの討伐を指示した。しかし、碌な備えも与えずに大怪人を無駄に失うのは非効率の極み。明日の早朝までに最後の準備期間を与えよう。その力で、必ず仮面ライダーBLACK RXを討ち取るのだ!」
 「この好機、必ずや勝利へ導いてみせます!」
 クリムゾンエクリプスの号令にリシュナルは立膝をつきながら答え、自身の研究室へ入っていった。
 「力も体力も備えていないリシュナルに何ができるか、見ものだな。」
 エピメルはニヤつきながら言う。
 「エピメル、リシュナルの次は貴様だということを忘れてはいないだろうな。」
 余裕の表情を見せるエピメルに対し、クリムゾンエクリプスは釘を差すように言う。
 「それは…重々承知しています…」
 エピメルは焦る感情を隠せずにいた。
 「ノルゾトルゾは私にとっての切り札だった。でも、私が手に入れたものはあれだけではないわ。私の最後のお遊びで、今度こそソフィル達に目にものをくれてやるわ!」
 研究室に入ったリシュナルは個別のガラスケースに保管してある禍々しいものを見ながら言う。
 「そうね、まずはバダンニウム84とコズミックエナジーから始めようかしら。」
 リシュナルは試験管に保管されてある気体状の物体を取り込む。
 「ぐっ…これだけでも力が漲ってくるわ。でも、これだけじゃ足りない!次はゲブロンにワーム隕石ね。」
 リシュナルは更に銅色の鉱石と緑色の隕石を下腹部に突き刺して埋め込む。
 「グァァァッ!ダメ、これでも奴に勝てる可能性が見えない!次は力と体力、闘争心を高めるためにバイラルコアとネビュラガスね。」
 リシュナルはコウモリを象ったミニカーのようなものと紫色の煙状の物体を飲み込む。
 「力が…チカラが漲ってくる!最後は、サタン虫にゴールドビールス、それとヘルヘイムの果実を食べれば…」
 そして、リシュナルは金色の粉をまぶした奇妙な蜘蛛のような虫とこの世のものとは思えぬ果物を食す。すると、
 「ゥグッ!グァァァ!」
 悲鳴のような叫び声を上げ、リシュナルの体は体色が黒ずんでいき、ボロボロになった翼には何かが蠢くようにくすんだ色の血管が浮き出る。
 「このちからが…このチカラがあれば、ヤツにかてる!」
 リシュナルが取り込んでいったものは今まで様々な仮面ライダー達が戦っていった、一つ一つでも強力な悪の組織達のエネルギーであり、それらを取り込んだことで強大な力を手に入れたが、その代償は重く、力の制御などできるはずもなく、リシュナルの高い知性と自制心、そして理性は失われてしまった。リシュナルは力を押さえ込むことができず、扉を破壊して部屋を出る。
 「リシュナル!?何だその姿は!一体何をしたんだ!」
 エピメルは禍々しくなったリシュナルを見て驚く。
 「うるさい!まずはオマエからけしてヤロウか!」
 リシュナルは今までとは段違いの威力の暴風を発生させ、廊下を破壊しながらエピメルを吹き飛ばす。
 「ぐぁっ!」
 エピメルの重厚な身体が宙を舞いながら広間に叩きつけられる。
 「エピメル、何があった!」
 その異様な光景にソフィルもただごとではないと察する。
 「クリムゾンエクリプス、このチカラで、かならずライダーをたおしてミセます!」
 最早言葉遣いすら変わり果てたリシュナルを、ソフィルは憐れむような目で見る。
 「それが、リシュナルの真の隠し玉だったということか。」
 クリムゾンエクリプスはリシュナルのただならぬ状態に対しても臆することなく話しかける。
 「もうアサになった!ライダーのくびをてにいれてきます!」
 リシュナルはネオゴルゴム神殿の天井を破壊しながら市街地へ向かっていった。
 「クリムゾンエクリプス、行かせてもよろしかったのでしょうか?」
 ソフィルはこの事態を考え、クリムゾンエクリプスに問う。
 「構わぬ。あのエネルギーに、リシュナルの肉体が耐えられるとは思えぬ。RXを倒せたとしても、その頃には限界を迎えて自壊するだろう。リシュナルに命じたことは仮面ライダーBLACK RXを倒すこと。生きて帰ってこいとは一言も言っていない。大怪人を一人失うのは痛手だが、やむ無し、と言ったところだ。」
 ソフィルの問いかけにクリムゾンエクリプスは平然と答える。
 「なるほど。そういう事でしたか。」
 ソフィルとクリムゾンエクリプスのやり取りにエピメルは、次は自分がこのようになるのか、と怯えることしかできなかった。

 時刻は早朝へと移り変わり、リシュナルは目を開き破壊活動を始める。その嵐は凄まじく、本来なら明るい朝の日差しが差し込む時間であるはずの空はまるで夕刻から夜へと変わる間の如き灰色一色となっていた。
 「でてこい!でてこいライダー!」
 リシュナルは嵐で巻き上げた瓦礫をビルに叩きつけて倒壊させ、更に瓦礫を増やしてゆく。
 「リシュナル!これ以上被害は出させない!」
 そこに光太郎が駆けつける。
 「あらわれたなライダー!ワタシとタタカエ!」
 リシュナルは真空波を放ち、光太郎を攻撃するが、光太郎は受け身を取りながら攻撃を回避する。
 「変…身!」
 光太郎の変身の掛け声とともに体組織を変化させる変身ベルト、サンライザーが出現し、キングストーンと太陽、2つのハイブリットエネルギーが全身を駆け巡り、南光太郎は、仮面ライダーBLACK RXへと変身するのだ。
 「俺は太陽の子!仮面ライダーBLACK!RX!」
 RXは名乗り、リシュナルへ向かってゆくが、リシュナルは地面を抉る勢いで破壊光線を放つ。
 「危ない!」
 RXは間一髪で回避するが、直撃したビルは歪曲しながら消滅してゆく。
 「なんて威力だ!」
 RXは立ち上がる。
 「これでもくらえ!」
 リシュナルは竜巻を発生させてRXにぶつけようとする。しかし、軌道はおおきく外れ、竜巻はビルに直撃し、あっという間に瓦礫へと変える。
 「どうだ!ドウダ!ドウダァ!!」
 リシュナルは四方八方に竜巻を放ち、ビルを次々と薙ぎ倒していく。
 「くっ、このままでは!」
 RXは焦りを見せる。
 「これでオワリだ!」
 リシュナルは自身の周囲に巨大な竜巻を発生させ、薙ぎ倒していったビルの瓦礫を吸い込む。
 「あれを放置したら、多くの被害が出てしまう!キングストーンフラッシュ!」
 RXは光の放射を行う。日中であれば光は可視化しづらいが、空に光が差し込まないことで、キングストーンフラッシュはより強い光を放つ。
 「ぐっ!」
 唐突な光によってリシュナルは目を閉じ、集中が途切れたことで竜巻は消え、瓦礫はリシュナル目掛けて落下してくる。しかし、リシュナルは高速移動によって落下する瓦礫を避ける。
 「これでもクラぇ!」
 リシュナルはそのまま高速移動を駆使してRXに突進し、突き飛ばす。
 「力も前より強くなっている…だけど、負けるわけにはいかない!」
 RXは立ち上がり、力強くジャンプする。
 「RXキック!」
 RXは必殺のキックを放つが、リシュナルはそれを腕で振り払う。
 「リボルケイン!」
 RXはすぐに立ち上がりリボルケインを引き抜き、飛びかかる。
 「そんなもので、まけるものか!」
 リシュナルは攻撃を受けきる体勢を取る。リボルケインはそのままリシュナルに突き刺さり、RXのリボルクラッシュが炸裂する。
 「これくらいで…シヌものかぁぁぁっ!」
 RXはリボルケインを引き抜き、そのまま腕を振り、リシュナルは爆散し、蒸発する。
 「リシュナル…まさかここまで強くなるなんて…」
 光太郎は大怪人の脅威を改めて実感したのだった。
 続く

 次回予告
 人気アトラクション、蜘蛛の巣館。凶悪な罠によって子供達に危険が迫る。『蜘蛛の巣館を追え』ぶっちぎるぜ! 
 

 
後書き
 怪人図鑑
 大怪人リシュナル
 身長:194cm
 体重:86kg
 能力:真空波、竜巻の発生、知性
 リシュナルが風の石を取り込んだことで始祖鳥の性質を持つ大怪人へと進化した姿。緑色の羽毛のドレスをまとい、巨大な翼を有している。神官時代には足りなかった戦闘能力が大幅に強化されている。

 大怪人リシュナル(強化)
 身長:194cm
 体重:128kg
 能力:破壊光線、高速移動、真空波、嵐の発生、怪力、凶暴な戦闘本能
 リシュナルが様々な悪の組織の力を取り込んで強化した姿。鮮やかできれいな緑の体色は黒ずみ、赤黒い血管が浮き出ている。強力な力を手に入れ、戦闘能力は大幅に向上したが、力が強すぎるあまり、理性が振り切れてしまった。 
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