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仮面ライダーファイズ 小さな星の話

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第九章

「御前、騙されていたんだよ、あいつ等に」
「そんな、じゃあ俺はあの時」
「ラッキーグローバーの連中がどんな奴等かはわかっていただろう?」
「けれど」
「けれどもどうしたもないんだよ。御前は利用されていただけなんだ」
 海堂はじっと木場を見ていた。咎めるわけではないが彼から目を離しはしない。
「オルフェノク、いやスマートブレインにな」
「木場さん、人間も同じなんですよ」
 長田がここで彼に言う。
「汚いです。私もずっと虐められてきましたし」
「それは知っているけれど」
「御前、俺の仇取ってくれたのな」
 今度は海堂が代わって木場にあの時のことを言った。海堂の夢を奪った彼の師であった男を倒した時のことだ。
「あいつはオルフェノクだったな」
「ああ」
「けれど人間だったんだ、心はな」
「心は」
「そういうことさ。何か俺はやっとわかってきたんだよ」
 顔を俯けさせて言うのであった。今は木場から目を離している。木場は自然に顔を俯けさせてしまっていた。そうして話を聞いているのだ。
「人間もな、オルフェノクも変わりはしねえ。けれど俺は人間として戦うぜ」
「海堂・・・・・・」
「私もです」
 長田も言ってきた。
「啓太郎さんがいるから。だから」
「そうなのか」
「御前はどうするんだ?」
 ここで海堂は顔を上げてまた木場を見てきた。そのうえで彼に問う。
「またオルフェノクにつくか?どうするんだ?」
「いや、少なくとも俺はもうスマートブレインには戻らない」
 彼は顔を左下に向けてこう言った。辛い顔になっていた。
「結花を殺した奴等のところには」
「じゃあまた私達と一緒に」
「それは待ってくれ」
 しかし二人の誘いを素直には受けなかった。受けられなかった。
「今は・・・・・・考えさせてくれ。けれど」
「けれど?」
「少なくとも君達と戦うことはないから」
「そうですか」
「そうだ。だから今は」
 彼はさらに言う。
「一人にさせてくれ。頼む」
「ああ、わかった」
 海堂はこくりと頷いてそれを受けた。
「けれど、待ってるからな」
「私も」
「有り難う」
 木場はその場から姿を消した。海堂もまた。長田だけが啓太郎のところにやって来ていた。そして彼の前でにこりと微笑んできたのであった。
「生きていたんですね、結花さん」
「はい、復活ですけれど」
 長田は笑みを浮かべて彼にこう返した。
「それであの時の約束ですけれど」
「は、はい」
 啓太郎は直立不動になって彼女に応える。
「明日、いいですか。よかったら」
「ええ。じゃあ」
「明日。また携帯でお知らせしますんで」
「はい!」
「楽しみにしています」
 長田は笑顔で最後にこう言ってその場を後にした。彼女は啓太郎のことを忘れてはいなかったのであった。そして啓太郎もまた。
 しかし草加は俯いたままであった。彼は津上達の話を聞くとは言ってもまだ納得できないものがあった。それは自分自身に対してであった。
「草加」
「乾か」 
 彼が声をかけてくるとそちらに顔を上げてきた。そして言う。
「お笑いかな。俺もオルフェノクになっちまった」
「ああ」
「御前を化け物と言ったけれどな。俺も化け物になった」
 自分で自分を嘲笑う感じであった。
「御前が狼で俺が鮫だ。何の因果なんだか」
「けれど御前今は自分で考えているだろ?」
「何?」
「それを考えているのは御前自身じゃないのか?」
 乾はそう草加に言う。声にはあえて感情を込めていないようであった。
「詳しいことはあの人達の話を聞いてからだが御前は姿はオルフェノクでも考えている心は人間なんだろう?じゃあ」
「御前みたいに人間として、カイザとして戦えってことか」
「俺はそう思う。御前がどう考えるかわからないがな」
「どっちにしろだ」
 彼は言った。
 
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