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桐と琴

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第三章

「褒美は好きなものを取らす、言ってみよ」
「では長きに渡る天下泰平を」
 仙人は皇帝に畏まり微笑んで答えた。
「頂きたいです」
「それをか」
「いけませぬか」
「いや、わかった」
 皇帝は仙人の頼みに顔を綻ばせて応えた。
「それではな」
「それがしの欲しいものをですか」
「やろう、朕は必ずな」
「天下をですか」
「一つにしてな」
「そうしてくれてですか」
「うむ」
 そうすると答えた。
 皇帝はその返事の約束を守ってだった。
 まだ完全に一つになっていない中華の統一を進め国の仕組みも整えてだった。
 宋は見事に長く保つ国となった、その頃には皇帝は世を去り太祖と呼ばれる様になっていたが仙人は。
 宮廷に参上し次の皇帝太宗と呼ばれる様になる彼と趙普に桐がなった琴の声を聴かせた、するとこの皇帝もこう言った。
「見事だ、先帝の言われたことは聞いている」
「それでは」
「朕も同じだ、本朝を末永くだ」
「泰平になる様にですか」
「治めていく、しかし自然の声もな」
「よいものですね」
「実にな、聴いていて実に心地よい」
 こう言うのだった。
「ではな」
「これよりもですな」
「この声が長く聴ける様な」
「自然の声がですか」
「泰平ならこうした音を山や林に行けば聞けるであろう」 
 皇帝は述べた。
「そうした心の余裕もあればな」
「戦乱ならばとても」
「そうであるな、竹林の七賢の様なことは本来はな」
「泰平の世で為すべきことです」
「ではな」
 皇帝は仙人に話した。
「朕は太祖に続きな」
「天下を泰平にされる様な」
「政をしていく」
 皇帝は仙人に約束してだった、趙普はその皇帝に話した。
「ではこれより天下の政について」
「話すか」
「そうしましょうぞ」
「ではな」
「その様に励んで頂ければ何よりです」  
 仙人も笑顔で応えた、そうしてだった。
 再びその琴の声を出させてから宮廷を後にした、宋代初期の話である。以後宋は百五十年に渡る泰平の世となったがそのはじまりにはこうしたことがあったのである。


桐と琴   完


                2022・12・11 
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