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Fate/WizarDragonknight

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太陽

 
前書き
このお話を作ったのは2023年4月です。念のため 

 
「まだまだぶっ壊したりねえ!」

 叫ぶフェニックス。
 その翼が大きく揺らぎ、羽根のように炎の鳥がそこから飛び立つ。
 ハルトを狙う炎の鳥たち。だが、ディケイドは別のカードをすでに発動していた。

『アタックライド バリア』

 すると、ディケイドの前にマゼンタ色のバリアが発生した。円状に回転するそれは、生身のハルトをフェニックスの攻撃から庇った。

「お前……何で、助けたんだ? 俺の敵じゃないのか?」
「お前がどこまで頭の狂った奴なのか、見てみたくなっただけだ」
「……あっそう!」

 ハルトは息を吐き、ウィザードライバーのつまみを操作する。

「俺も、他の世界の聖杯戦争にいた人と同じかどうかを見定めたいわけね」
「そんなところだ」
「だったら見ていなよ」

 ハルトは、すでに左手に付けられているルビーの指輪を掲げる。

「アンタの望み通り、俺がこの戦いを止めるからさ! 変身!」
『フレイム プリーズ』

 立ち上ったハルトは、ルビーの指輪を再度使用し、フレイムスタイルになる。
 ウィザーソードガンを再び手にしたウィザードは、同じくカタストロフを構えたフェニックスと打ち合う。
 両者とも、剣の斬撃に赤い軌跡を宿らせる。走る炎の斬撃は、それぞれ相手に向けて互いの刃から逸れて、それぞれに火花を散らす。

「やるじゃねえか……なら、これならどうだ!?」

 フェニックスの翼が、再び業火を高めていく。
 その両肩より、炎の翼が広がり始める。彼の身長にも匹敵する大きさの翼は、周囲の花々に炎を着火させ、桜の花々たちに炎の彩を与える。
 そのままそれは、ウィザードとディケイド、それぞれを挟み込むようにそびえる。

「しまった……これじゃ動けない!」
「フン」

 ディケイドはライドブッカーを撫でる。

「ならここからが……ハイライトだ」

 ディケイドはそう言って、そのカードをディケイドライバーに装填する。
 それは。

『カメンライド ギーツ』

 ディケイドの左右に、白と赤、それぞれ上半身と下半身のような形のパーツが現れる。ディケイドの背中にも出現した円形の機構が、左右に伸ばしたマジックハンドで、それぞれのパーツを掴む。

『デュアル オン マグナム ブースト レディ ファイト』

 そして、パーツがディケイドに引き寄せられ、その変身が完了する。
 その名はギーツ。
 キツネを模した、白い仮面ライダー。その姿を写し取ったディケイドギーツは、手に持った白い銃、マグナムシューター40Xを回転させる。
 そして。

「はあっ!」

 その赤い下半身、足のところに取り付けられているバイクのマフラーのような機構が火を噴いた。
 炎を纏ったその蹴りは、フェニックスの炎とぶつかり合い、互いに霧散。消滅していく。

「何!? ……このキツネ野郎!」

 フェニックスの手から、無数の火の鳥がディケイドギーツに狙いを変える。
 だが、ディケイドギーツは手を大きく振る。
 その最中、引き金のところに指をかけ、マグナムシューター40が回転。その最中だろうと、しっかりと発砲し、炎の鳥たちは明確に撃ち落されていった。

「すごい……」
「まだだ」

 ディケイドギーツは更に、その左腕も伸ばす。
 すると、左腕に仕組まれていた機能が解放。袖の部分がめくり上がり、新たな仕込み銃が顔を見せる。
 マグナムシューター40Xと仕込み銃(アーマードガン)。二つの銃から連続的に発射される銃弾は、フェニックスの全身を容赦なく蜂の巣にしていく。
 大きく後退したフェニックス。特に傷むのであろう胸部分を抑えながら、舌打ちする。

「覚えてろよ、このピンク……次は必ず八つ裂きにしてやる!」

 背を見せ、空へと飛翔するフェニックス。

「逃がさない!」

 ウィザードはホルスターからエメラルドの指輪を取り出し、ハリケーンスタイルで追いかけようとする。だが、元の姿に戻ったディケイドが手で制した。

「何?」
「折角だ。こっちの方が面白そうだ」

 ディケイドはそう言いながら、いつの間にか手にしていたそのカードをウィザードに見せつける。左下半分にはウィザードが描かれており、その右上半分には……

「それは……!」
『ファイナルフォームライド ウィ ウィ ウィ ウィザード』

 そのカードを入れたディケイドは、そのままウィザードの背後に回り込む。

「ちょっとくすぐったいぞ」
「ちょっとって……? う、うわっ!」

 ウィザードが準備する間もなく、その感覚はウィザードを襲った。
 全身がだんだんと変形(・・)していく。手足が本来とは真逆の方向に傾き、その頭には魔力で作られた、ワニのような頭部が装着される。
 そうして、ウィザードが変形したそれ。
 それは、とある別の世界におけるウィザードが、力の根源としている強大な魔力である、魔力の塊、ウィザードラゴンの姿をしていた。
 ウィザードがディケイドの助力によって変身したそれは、ウィザードウィザードラゴンとなる。

「これは……! この姿は……!」

 ウィザードウィザードラゴンは、その赤い眼でディケイドを睨む。

「お前……何でこの姿を……!?」
「どうした?」

 ディケイドは何てこと無さそうに首を傾げる。
 ウィザードウィザードラゴンは、しばらくディケイドを見つめた後、俯く。

「いや……何でもない」
「ふん。行くぞ」
「……うん!」

 ウィザードウィザードラゴンは吠え、その翼を羽ばたかせる。上空のフェニックスへ猛スピードで飛翔し、その上を取る。

「な、何だこの怪物は!?」
「……! ……はあっ!」

 少し体を震わせたウィザードウィザードラゴンは、体を縦に回転させ、その尾でフェニックスを叩き落とす。
 大きく地面へ高度を落としたフェニックスへ、さらにウィザードウィザードラゴンはその肩に食らいつく。

「ぐああああああああっ! 放せ! 放しやがれ!」

 フェニックスは悲鳴を上げ、カタストロフの柄でウィザードウィザードラゴンの頭を叩く。炎を散らすそれは、ウィザードウィザードラゴンにも痛みを与えていくが、そのまま地表に突き落とす。

「はあっ!」

 そして地上に待ち受けていたディケイド。丁度彼の頭上に落ちてきたフェニックスへ、ライドブッカーの刀身が切り裂く。
 切り裂いたマゼンタの斬撃は、フェニックスの炎の翼を掻き消す。

「クソ……クソがああああああああああっ!」

 声を荒げたフェニックスは、また大きな翼を再生させる。
 そのまま炎の翼の抱擁で、ディケイドを焼き尽くそうとするが。

「________」

 吠え猛るウィザードウィザードラゴン。その雄々しき翼により、フェニックスの炎は吹き消されていった。

「バカな!?」
「終わりだ!」

 一時的に、ウィザードウィザードラゴンの変形が解除される。
 元のフレイムスタイルになったウィザードは、着地と同時にその指輪を発動させる。
 同時に、ディケイドもまた最強のカードをディケイドライバーに差し込む。

『チョーイイネ キックストライク サイコー』
『ファイナルアタックライド ディ ディ ディ ディケイド』
「はああ……!」

 地面に広がった魔法陣からの魔力により、力を入れる右足に炎が宿る。
 そのままバク転を繰り返しながら、フェニックスへ放たれるストライクウィザード。
 一方ディケイドもまた、十枚のカード型のエネルギーがその目の前に出現する。
 フェニックスへの道となったそれは、ディメンションキックの威力を高めていく。

「だあああああああああああああっ!」
「やあああああああああああああっ!」

 二つのライダーキックが、同時にフェニックスに炸裂。爆発に爆発が重なったそれは、より一層大きな破壊を巻き起こし、フェニックスの体を粉々に破壊していく。
 だが。

「言っただろうが……」

 すでに、蘇りつつあるフェニックス。
 その灰塵から、腕が。顔が。元通りの形となってきていた。

「何度倒されようが関係ねえ……オレは不死身のフェニックスだ……魔法使いも、ピンクのテメエも八つ裂きにするまで、何度でも……」
「悪いが、その時が来ることは永遠にない」
「何?」
「お前の倒し方は知ってる。無論、その方法もな」

 ディケイドはすでに、そのカードを取り出していた。
 フェニックスを倒せるであろうカード。それは。

『ファイナルアタックライド ウィ ウィ ウィ ウィザード』

 ディケイドの力が、ウィザードにさらに作用していく。
 再びウィザードウィザードラゴンに変形。その尾で、体を形成途中のフェニックスを上空に弾き飛ばす。

「ぐあああああああああっ! て、テメエ、一体何を……!?」

 どんどん上がっていくフェニックスを見上げながら、ウィザードウィザードラゴンとディケイドは、互いにアイコンタクトを取る。
 そして、共に飛び上がった。
 ディケイドの前に入るウィザードウィザードラゴン。そして、その体勢を変更すると、首、両前足がそれぞれ三又に分かれ、変形していく。
 翼を折りたたみ、尾を収納。
 すると、その形はまるで、巨大な龍の足にも見えた。

「はああああああ!」

 雄たけびを上げるディケイド。その右足蹴りは、龍の足となったウィザードウィザードラゴンと一体となり、赤い炎を巻き上げながらフェニックスを蹴り飛ばす。

 ディケイドストライク。

 その衝撃は、元の形に戻ろうとするフェニックスの身体を瞬時に崩壊させた。
 そのまま、またしても再生し始めていくフェニックスの身体。
 だが、形は形勢されていくものの、それはどんどん空の彼方へと追い出されていく。



 やがて、大気圏を越え、地球を越え。ようやく体が再生したころには、フェニックスはすでに太陽の重力の中にいた。

「何……!?」

 体と同じく再生した炎の翼で、太陽からの脱出を図るフェニックス。だが、地球とは比較にならないほどの巨大な星である太陽からフェニックスが逃げることなどできない。あっという間に太陽に飲まれたフェニックスは、再びその体が太陽の重力場に砕かれ、再生する。だが。

「これは……!?」

 フェニックスは、自らの手を見下ろす。摂氏数千度という宇宙の星は、フェニックスの体の破壊を繰り返し、フェニックスは、同じ名を持つ幻獣と同じく、太陽とともにその時を永遠に過ごすのだった。



「……」

 変身を解除し、ハルトは、同じくディケイドの変身を解いた士を見つめる。

「お前……」

 なんてことない顔のまま、ハルトを見返す士。
 ハルトは確信した。
 彼はおそらく、これまで出会ってきた者の中で、最も強い者であると。
 そして、この聖杯戦争を終わらせられ得るのもまた、彼であると。

「……また会おう。じゃあな」

 何てことも無さそうに。
 士はそれだけ言いのし、どこかへ歩み去っていった。
 信用していいのは分からない。だが。
 もう、彼を追いかける気力は失せていた。 
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