| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

仮面ライダーAP

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

凶兆編 仮面ライダータキオン&エージェントガール 前編

 
前書き
◆今話の登場ヒロイン

◆ヘレン・アーヴィング
 アメリカ合衆国出身の特務捜査官であり、かつて仮面ライダーAPと共にシェードと戦っていた、ロビン・アーヴィング捜査官の実妹。自分を救ってくれた仮面ライダーを慕い、兄の背中を追う形で特務捜査官となった現在は、ノバシェードのテロを追い続けている。使用銃器はワルサーPPK。年齢は21歳。
 スリーサイズはバスト106cm、ウエスト61cm、ヒップ98cm。カップサイズはJ。

 

 
 ――2021年3月23日。北欧の最果てとも呼ばれている某国の首都、「エンデバーランド」。
 曇天の空に見下ろされているこの大都市は今、阿鼻叫喚の煉獄に飲み込まれていた。銃声、悲鳴、そして怒号が鳴り響く街道を逃げ惑う人々の多くは我を失い、パニックに陥っている。

「きゃあぁあーっ!」
「に、逃げろぉおっ! ノバシェードだ、ノバシェードの奴らが現れやがったんだっ!」

 街中で突如武装蜂起を開始した、人ならざる「改造人間」で編成された愚連隊。「ノバシェード」と名乗る彼らのテロに巻き込まれた人々の絶叫が、街全体に轟いていた。

 世間からの迫害と排斥に晒され続け、居場所を持てず彷徨い歩くしかない改造被験者達は、どこにでも居る。そしてどこにでも居るからこそ、彼らは人間達の日常に紛れ込み、牙を研いでいたのだ。
 行き場がないアウトローだけではない。世界各国の正規軍の中にすら、裏でノバシェードと繋がっている者がいる。そのルートを通じて得た彼らの銃器が人々を襲い、この街を狂気の渦に叩き込んでいた。

「ほらほらァッ! さっさと逃げないと俺達の弾に当たっちまうぜぇ!? 哀れで脆く、愚かな人間共がよォッ!」
「小突けばくたばる脆弱な雑魚共が、寄ってたかって俺達改造人間を迫害しやがって! その罪はてめぇらの命で精算しやがれッ!」

 ノバシェード構成員の証である、独特の野戦服に袖を通した無数の男達。彼らの手に握られた黒塗りの突撃銃(アサルトライフル)――「M4カービン」が火を噴き、無辜の民衆の背中に弾丸の嵐を浴びせている。
 だが、彼らにとっては「無辜」ではない。旧シェードが原因で改造被験者となり、改造人間の「失敗作」として見捨てられた彼らは、人間社会からも存在を拒絶されて今に至っている。

 シェードではないというのに、自分達も被害者だと言うのに、誰もそれを認めない。ならば、「本物」になるしかない。そのように追い詰められた彼らの「結論」こそが、ノバシェードという組織に顕われているのだ。
 この世の誰にも、自分達を糾弾する権利などない。正義の名の下に自分達を断罪しようとする者が居るのなら、そいつらこそが真の悪。

 その過激な思想に傾倒した彼らに、人間の声など届くはずもなく――制止を呼び掛けた現地の警官隊も正規軍の即応部隊も、瞬く間に蜂の巣にされてしまった。
 失敗作と言っても、それは旧シェードの要求スペックに満たなかったからそう呼ばれているに過ぎない。当たりどころによっては通常兵器の銃弾でも斃れる程度の耐久性ではあるが、やはり運動能力においては人間のそれを遥かに超越しているのだ。

 常人の照準速度では到底追い付かない疾さで複数同時に突撃して来る上、急所に当たらなければ命中しても倒れない。そんな超人兵士達が徒党を組めば、並の警察や軍隊ではひとたまりもないのだ。
 仮にも戦闘のプロフェッショナルである軍人達でさえ歯が立たない、改造人間達の愚連隊。その暴走を即座に止められる戦力がこの街に居ない今、逃げ惑う市民達は狩られるだけの獲物でしかない。

 その地獄絵図を目の当たりにしている、恰幅の良い1人の男性は、あまりの光景に腰を抜かして震え上がっていた。
 遠方の小都市から出張でこの首都に来ていた、観光都市「オーファンズヘブン」の市長こと、ドナルド・ベイカー。ノバシェードの暴虐に恐れをなした彼は、近くに停車していた黒塗りの高級車の影に飛び込んで行く。

(なんなのだ、これは……! これが本当に、現実の光景なのか……! あ、悪夢だ……!)

 先ほどまで周りに居たはずの秘書も護衛も、血の池に沈んだ骸と化している。高級車に隠れている自分も、今に発見されて同じ命運を辿るのだろう。
 彼がその覚悟を固める暇もなく――武装したノバシェードの戦闘員達は、高級車の陰で震えていたベイカーの姿を見つけてしまうのだった。

「おぉ〜? なんだなんだ、こんなところにもくたばり損ないが隠れていやがったぜぇ」
「ひ、ひぃっ……!?」
「いかにもな上流階級、って感じのオッサンだなァ。ぶっ殺し甲斐があるってもんよ……!」

 懸命に生き延びようと足掻いていた者を嘲笑う、常人ならざる改造人間の兵士達。いつしか身体のみならず、心までも怪物に成り果てていた彼らは口角をあげ、容赦なくベイカーの頭に銃口を向ける。

 もう逃げられない。自分は間違いなく殺される。そう思い至った彼の脳裏に過ぎったのは――故郷の街に残して来た、自身の家族だった。

(あぁ……済まない、皆……! 君達を置いて逝くことになる、非力な私を許しておくれッ……!)

 ベイカーが市長を務めている都市であり、彼自身の故郷でもあるオーファンズヘブン。
 そこで暮らしている孤児の少女達は皆、旧シェードのテロによって親兄弟を失った者ばかりだった。ベイカーが家族として迎え入れ、実の娘達のように育てて来た彼女達は今や、街でも評判の美人に成長している。

 願わくば、彼女達全員が愛する男と出会い、自分の元から巣立って行く日まで生きていたかった。家族を失い、辛い思いを背負って生きて来た彼女達が幸せになる瞬間を、見届けたかった。
 しかし、それはもう叶わない。自分はもう次の瞬間には、ノバシェードの凶弾に斃れてしまうのだろう。ならばせめて、せめて娘達の幸せを願いながら死んで行きたい。

 僅かな時間の間に、その覚悟を決めたベイカーが、きつく瞼を閉じて死の瞬間を待つ。だが、その時が訪れることはなかった。

「がはッ!?」
「おごッ……!」

 乾いた発砲音と共に頭部を撃ち抜かれ、即死したのはベイカーではなく、彼に銃口を向けていた兵士達の方だったのである。

「な、なんだ……!? 何が起きたというのたッ!?」

 死を覚悟したベイカーの前に、頭部から血を流した兵士達が次々と倒れ伏して行く。その予期せぬ展開に、ベイカーは腰を抜かしたまま瞠目していた。
 やがて、そんな彼の前に拳銃を携えた1人の美女が駆け付けて来る。黒のスーツに袖を通した北欧系の美女は、艶やかなブロンドのショートヘアを風に靡かせ、鋭い眼差しで拳銃を構えていた。

「何だあの女……がぁッ!?」
「ぐはッ!?」

 その存在に気付いた他のノバシェード戦闘員達は、彼女を排除しようとM4カービンの銃口を向けるが――彼女の両手に握られた「ワルサーPPK」が、それよりも疾く火を噴く。
 発砲の弾みでばるんっと弾む爆乳は、整然とした黒スーツを内側から押し上げており、今にもはち切れそうになっていた。安産型の巨尻も、破けてしまいそうなほどにパンツの繊維を圧迫している。

 グラビアモデルすら圧倒するほどの暴力的なプロポーションの持ち主である、怜悧な爆乳美女。焦燥故に頬から滴る冷や汗から、甘い女の芳香を漂わせている彼女は、正確無比な射撃で戦闘員達の急所を撃ち抜いていた。

 やがて近辺の戦闘員達を全員排除してしまった彼女は、周囲を警戒しながらベイカーの隣に座るように、高級車の陰へと滑り込んで行く。素早く弾倉(マガジン)を交換して再装填(リロード)を終えながら、彼女はベイカーに手を差し伸べていた。

「オーファンズヘブンの市長、ドナルド・ベイカー様ですね!? 助けに来ました、早くここから逃げましょう!」
「き、君は……!?」
「ノバシェード対策室所属、ヘレン・アーヴィング特務捜査官です。奴らの情報を追ってこの街に来たところだったのですが、一足遅かったようですッ……!」

 彼女の名はヘレン・アーヴィング。5年前、仮面ライダーAPと共に旧シェードのテロと戦っていた、ロビン・アーヴィング捜査官の実妹である。

 かつて旧シェードに攫われ、改造されそうになっていたところをAPに救われて以来、彼女は旧シェードのようなテロリスト達に負けない「力」を渇望して来た。
 その想いから兄の背を追うように過酷な訓練を乗り越え、ノバシェード対策室の特務捜査官にまで登り詰めたのである。鍛え抜かれ、引き締まっている腰回りに対してあまりにもアンバランスな爆乳と巨尻は、黒スーツにぴっちりと密着しており、彼女のボディラインをあるがままに浮立たせていた。

 これまで対峙して来た犯罪者達は元より、共に戦って来た上司や同僚達も生唾を飲むほどの圧倒的な美貌とプロポーション。そのグラマラスな肉体と揺れ動く乳房には、ベイカーも思わず目を奪われていた。
 だが、今はそんなことに気を取られている場合ではない。ヘレンの髪や肌から漂う甘い匂いに惑わされながらも、ベイカーは彼女に促されるまま高級車に乗り込んで行く。

 2人を乗せた車両はこの戦地から一刻も早く離脱するべく、エンジンを全開にして急発進していた。巧みなハンドル捌きで行手を阻む瓦礫の山をかわしつつ、ヘレンは街の惨状に唇を噛み締めている。

(……私も、やっぱりまだまだ未熟ね。やっと奴らの尻尾を掴んだと思ったのに、このテロを未然に防ぐことが出来なかった……!)

 このエンデバーランドに潜伏しているノバシェードの兵士達が武装蜂起の準備を進めている、という情報を掴んでいた彼女は、「応援」を待つ時間も惜しんで街に駆け付けていたのだが。彼女が街に到着した時にはすでに、このテロが始まっていたのである。
 あとほんの少し、情報の入手が早ければテロを未然に防げていたのかも知れない。そう思えば思うほど、自責の念が爆乳女捜査官の豊かな胸を締め付けて行く。

(それでも……せめて、この人だけは何としても逃して見せる! 見てて、ロビン兄さん! 仮面ライダーっ!)

 だが、いくら後悔しても時間を巻き戻すことは叶わない。それを受け入れられないほど子供ではない。だからこそ、今の自分に出来る最善を尽くさねばならない。
 ヘレンはその一心でアクセルを踏み込み、ハンドルを操って行く。だが、巧みなテクニックで瓦礫だらけの道を走っていたのは――彼女だけではなかった。

「俺達ノバシェードから逃げられると思ってんのかァッ!? デカ乳の姉ちゃんッ!」
「やっと見つけたぜぇ! あんただろう!? 俺達のことを嗅ぎ回ってたって言う……特務捜査官ってのはよォオッ!」
「……ッ!」

 後方から迫る数台のバイクも、軽やかなジャンプで瓦礫を飛び越して道路を疾走していたのである。ノバシェードの追手が、2人に狙いを定めようとしていた。
 
 

 
後書き
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧