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目が見えず耳が聞こえなくても

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第二章

 彼に優しく接した、そうして。
 彼は手術を受けた、それで包帯が取れると。
「見えるか?」
「聞こえるの?」
 両親は我が子に必死に語り掛けた。
「そうだったら言って」
「どうかな」
「うん、何かまだはっきりとじゃないけれど」
 それでもとだ、佐京は両親に答えた。
「見えるし聞こえるよ」
「そうか、それはよかった」
「本当にね」
 両親は我が子の返事を聞いてほっとしてそれぞれ言った。
「見えて聞こえるなら」
「何よりだ」
「ずっとお見舞いに来てくれたよね」
 佐京は両親に微笑んでこうも言った。
「お父さんもお母さんも」
「わかっていたのか?」
「目が見えなくて耳が聞こえなかったのに」 
 両親は息子の言葉に目をきょとんとさせて応えた。
「それでもなの」
「わかるのか」
「学校の先生もクラスの皆もね」
 佐京は自分の言葉に驚いている両親にさらに話した。
「いつも来てくれて病院の先生や看護師さん達もね」
「あの人達のこともか」
「わかるの」
「毎日来てくれてとても優しくしてくれて」
 それでというのだ。
「温かかったよ、その温かさがいつもわかってたんだ」
「そうなんだな」
「見えなくて聞こえなくても」
「そうだよ、それでもわかるんだよ」
 目や耳が使えなくてもというのだ。
「凄くね、だから僕この温かさ忘れないよ」
「そうか、それじゃあな」
「これからもそうしてね」
「うん、僕はそうされたから」
 人に優しくしてもらったからだというのだ。
「今度はね」
「佐京がそうするか」
「人に優しくするのね」
「そうしていくよ」
 こう言ってそうしてだった。
 視力と聴力が戻った佐京は人にとても優しく接する様になった、そして誰よりも優しく温かい人だと言われた。それは一時目が見えなくなって耳が聞こえなくなってその時に皆から優しくしてもらったからだと彼はいつも言った。


目が見えず耳が聞こえなくなっても   完


                   2023・4・18 
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