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仮面ライダーアギト 新しい誇り

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第九章

「俺も行く。それが運命なのだからな」
「そうですか」
 青年はその言葉を聞いてにこりと微笑んだ。それこそが彼の望んでいた言葉なのであるから。
「それでしたら」
「また命を落としてもいい」
 木野は遠くへ駆けていく若者達を見て言う。
「それが運命なら。人の為の礎となるのなら」
「命は惜しくはないと」
「怖い」
 しかし木野は言った。
「それは事実だ。しかし」
 それでも彼は言う。
「それでも俺は行く。もう迷いはしない」
「では」
「また会うんだろうな」
 青年に背中を向けて歩きはじめる。背を向けたままでその青年に声をかける。
「それも近いうちに」
「おそらくは」
 青年もその言葉に静かに答えてきた。
「ですが」
「その心信じる」
 かつての青年ではない。だからこその言葉であった。
「しかしその前に」
「その前に」
「やることがある。少しな」
「それは一体」
「コーヒーだ」
 それが木野の答えであった。
「浩二に頼んだコーヒーを飲んでから行かせてくれ。それでいいな」
「それでしたら」
 青年は笑ってその申し出を受けてきた。
「どうぞ。ごゆっくり」
「ゆっくりというわけにはいかないだろうがな。それでもあいつに頼んでおいたから」
「人は皆絆を覚えているのですね」
 青年はふと呟いた。
「誰もが」
「人を人にしているのは絆だ」
 木野はここで己の右腕を見た。弟の手を。
「それが無ければ人ではなくなる」
「はい。ではその絆を守る為に」
「俺も行く」
 彼もまたその場を去った。今青年の後ろでは。三人のライダーが新たな戦いに向かおうとしていた。



仮面ライダーアギト 新しい誇り   完


                                  2007・1・20
 
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