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星河の覇皇

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第八十三部第四章 戦線崩壊その四

 オムダーマン軍の将兵達も時を待っていた、それぞれの持ち場にいて。
 ある若い兵士が自分がいる砲艦の前で自分の座席から後ろにいる士官に尋ねた、
「砲術長、もうですね」
「ああ、命令が出たらな」
 士官は兵士にすぐに答えた。
「その瞬間にだ」
「主砲の一世発射ですか」
「それに入る」
 このことを言うのだった。
「だからだ」
「今はですね」
「いいな、持ち場はだ」
「絶対に離れるな」
「頼むぞ、トイレは言った」
「はい、もう」
 既にとだ、兵士は士官に答えた。
「済ませました」
「ならいいがな、まだならな」
「その時はですか」
「持ち場を離れると言ってな」
 そのうえでというのだ。
「行って来い」
「行っていいんですか」
「トイレは仕方ないだろ」
 兵士に笑って返した。
「流石に」
「まあそれは」
「出るものは出るからな」
「だからですか」
「その時はな」
 トイレ、その時はというのだ。
「いいな」
「持ち場を離れると伝えてですね」
「そして行け、わかったな」
「そうさせてもらいます」
「それでしゃがんでな」
 イスラムの用足しは立ってはしない、座ってするのが小さい方でもするものだとコーランで定められているのだ。
 ただしだ、士官はここでは別の意味で言った。
「つまりじっくりとな」
「していいですか」
「急いでも出るものは出ないだろ」
「それはそうですね」
「だからな、それ位はな」
「時間をかけていいですか」
「まさかその場でするか?」
 士官は兵士に笑って問うた。
「しないな」
「それは流石に」
 兵士も笑って返した。
「ないですね」
「それはトイレでするものだ」
「だからトイレはありますし」
「そこでするなんてことはな」
「絶対にしたら駄目ですね」
「そうだ、しかしもう済ませたならな」 
 それならとだ、士官は兵士に笑って述べた。
「いいな」
「はい、少なくとも俺は」
「ならいい、私も済ませた」
「砲術長もですか」
「戦闘中にもおよすのは嫌だ、それにだ」
「それに?」
「失禁とかな」
 戦闘への恐怖でのそれはというのだ。
「お話にもならないな」
「ですね、やっぱりする奴いますよね」
「ああ、私は見たことはないがな」
「いますか」
「誰だってな、それも何でもな」
 士官は兵士にその失禁の話もした、こうしたことはこの時代でも戦場であればやはり存在するものであるのだ。 
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