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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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怪しい男

 
前書き
最近なんでこんなにハマってるんだろうってくらい昔読んでた漫画やらアニメを見まくってる。そしてこれに関してはなぜここまでやる気になったのかわからないくらい取り組めてる笑 

 
シリルside

「「ハァ・・・ハァ・・・」」

俺とウェンディの渾身の一撃を受けた天使は地面へと倒れると微動だにしないままでいる。気を失っているのかと彼に一歩近付こうとしたところ、俺たちは突然起きた出来事に目を疑った。

「え?」
「何・・・これ・・・」

目を閉じて倒れている天使の身体がみるみる消えていき空気に同化していくではないか。その光景を俺は見たことがあり、思わず口元を抑えた。

「そういえばお母さんもグラシアンさんと戦ってた天使も同じことになってた」

自らの意志で死を選んだお母さんとグラシアンさんに敗北し身体が消失した天使。それから考えるに、今目の前で起きていることから言えることは一つしかない。

「これが天使が死ぬってことなのか」
















レオンside

地面に倒れ動かない天使。それを見て俺とシェリアは戦いが終わったことを察し、目を合わせる。無事に勝利を納めた直後に目があったことで二人とも吹き出してしまった。

「やったね、レオン」
「あぁ。ありがとうな、シェリア」

シェリアが俺の手を取ってくれなければ恐らくこの結果にはたどり着けなかった。そう思い感謝の言葉を述べてすぐに彼女を引き寄せようとしたところ、目の前から物音が聞こえそちらへと視線を向ける。そこには先ほどまで意識を失っていたはずの天使が震える脚で身体を支えながら立ち上がっていた。

「何?」
「ウソでしょ?」

俺たちのあの攻撃を受けてもなおも立ち上がってくるその強さに目を見開く。すぐに臨戦態勢に入ろうと構えたが、さっきの影響か全然魔力が高まってこない。

「君たちは・・・」

このまま戦いになったらもう負けるしかない。そう考えていたところ、天使はふらつきながら顔を上げる。その顔を見て、俺たちは言葉を失い、構えを解いた。

「君たちは・・・愚かな・・・判断をした・・・後に必ず・・・後悔・・・するであろうミスだ・・・」

生気を失った瞳、俺たちに身体は向いているがその焦点はあっていない。顔色もみるみる色を失っていき、それに同調するように足下が消えているのが目に入る。

「もし・・・あの時・・・彼を渡していればと・・・後悔する日が天使は・・くる・・・よ・・・」

みるみる崩れていくその身体。しかし彼はそれに構うことなく俺たちへと語りかけ続けてくる。

「私たちの行動は・・・慈悲だった・・・それを受け入れて・・・」
「余計なお世話だ」

ご丁寧に忠告してくれているのだろうが、彼の言葉を俺たちは理解しようとはしない。なぜならーーー

「俺たちは何があっても仲間を売ったりはしない」

今までみんながそうしてくれたように、俺たちも絶対に仲間を見捨てるようなことはしない。例えそんな状況になっても、俺たちは最後まで抗い続けるだろう。

「そう・・・か・・・」

俺たちの声を聞いた天使は憐れみの表情を浮かべたかと思うと、すぐに笑みを浮かべてみせる。

「君たちの・・・健闘を・・・祈っているよ・・・」

その一言だけを残し彼は消え去った。あとに残されたのは小さな小さな白い天使の羽根だった。
















シリルside

「シリル~!!」
「ウェンディ!!」

俺とウェンディが目の前の出来事に固まっていたところ、後ろから聞き慣れた二人の声が聞こえてくる。

「遅かったね、セシリー」
「おはよう、シャルル」

ずっと眠っていたのだろう二人に嫌みを込めた一言。その後ろからラウルも飛んできており、相当急いで来たようだ。

「ちょっと~!!ボロボロじゃん~!!」
「大丈夫なの!?ウェンディ」
「レオンとシェリアは!?」

次々に来る質問に答えようとしたところ、背後からゆっくりとこちらへ向かってくる足音がしたため振り返る。

「そっちも無事だったんだね」

その足音の正体はバリーザウィッチの元へと向かったレオンとシェリアだった。

「二人が戻ってきたってことは・・・」
「うん!!」
「ぶい」

互いを支え合いながらやってきた二人。ウェンディの問いにシェリアは笑顔で答え、レオンは無表情のままピースサインをする。

「え?何?」
「どういうこと~?」
「もしかして・・・」

俺たちの様子に何かを察した三匹はこちらに説明を求めるように視線を向けるが、全員がどや顔を見せたことで全てを察したようで三者三様の反応を見せていた。

「すごいじゃない!!ウェンディ!!シリル!!」
「えぇ~!!見たかった~!!」
「ラウたち何もしないで終わっちゃった!?」

褒め称えてくれる者、残念そうにしながらも笑顔を見せてくれる者、寝坊したことを後悔する者、でも三匹とも俺たちの勝利を聞いて笑顔を見せてくれていた。

「肩貸すわよ」
「いやいや~、みんなで手分けして運ぼうよ~!!」
「大丈夫だよ、心配しなくて」
「私たち歩けるから」
「ダメ!!これくらいはラウたちにさせて!!」

何も協力できなかったことがよほど悔しかったらしく人型になると俺たち全員を運ぼうとしてくれた。特にラウルはレオンを背負った上にシェリアまで掴んでおり、二人の勝利を心から祝っているようだった。

「そういや・・・天使に遭遇したことカミューニに伝えないといけないよね?」
「そっか、なんか調査してたはずだもんね」

三人に運ばれている中、シェリアの言葉にウェンディが返す。確かに評議院は天使との遭遇のことを調べていたから、この情報は早めに伝えておかないといけないよね。

「もしかして俺たちが天使倒した第1号なんじゃね?」
「わぁ!!それは熱い!!」

俺とウェンディは最初に会った天使とは違ったけどリベンジを果たしたといっていいはず。しかもそれがこの危機的状況に風穴を開けた第一人者だとしたら・・・もう考えただけでニヤケが止まらない。

「あれ?そういえば・・・」

勝利の余韻に浸っていたところ、俺はあることを思い出していた。しばらくそちらに思考を寄せていると、急にしゃべらなくなった俺に疑問を抱いたのか、ウェンディとセシリーが声をかけてくる。

「シリル?」
「どうしたの~?疲れちゃった~?」
「いや、何でもないよ」

何事なかったように笑顔で取り繕う。でも、それでも一つだけ気になることがあった。

(なんで評議院の使者は俺たちの手伝いじゃなくてローグさんたちの方へいったんだ?)

ミネルバさんが評議院の使者に呼ばれたと言っていた。つまり俺たちが危機的な状況であることを評議院が把握していたということ。そうじゃなければ、このメンツで依頼に来ている俺たちが苦戦しているなんて考えることができるはずがない。

(たまたま使者がいたけど戦えるほどの力がなかったから助けを呼んだ?それもなくはないけど・・・何か引っ掛かる・・・)

一つの疑問が芽生えると次から次へと疑問がわき出てくる。何が正解かと悩んでいると、ユウキさんやミハエルさんたちがこちらへやってきているのを見かけ、思考をやめた。

「ま、今はいいか」

とにかく俺たちはリベンジを果たしたことには間違いがない。そしてそれは依頼主である彼らにとっても朗報であるはず。その事を報告し彼らがどんなリアクションをしてくれるのかを期待していると、不安なことなど頭から吹き飛んでしまった。

















第三者side

プルプルプルプル

書類の山に目を通しながら頭を抱えていたジュラ。そんな彼の耳に聞こえてくる通信用魔水晶(ラクリマ)の着信音。

「む?」
「どこからですか?」
「知らない地名からだ」

通信用魔水晶(ラクリマ)には発信された地名が表示される。その地名に心当たりがないジュラは眉間にシワを寄せていた。

「これ、シリルがいった国の地名じゃね?」
「え?本当?」
「確かな」

ジュラとメルディのやり取りを後ろから見ていたカミューニが覗き見ると彼はそれがどこかすぐにわかった。彼の言葉を信じて通信を繋げると、その言葉通りシリルたちの姿が見えてきた。

「おぉ!!レオン!!シェリア!!シリル殿にウェンディ殿も!!」
『一応妾たちもおるぞ』
「合流できたのね!!よかった!!」

全身包帯だらけのメンバーが多いが、無事に連絡が取れていることに安堵するジュラとメルディ。しかしすぐに彼らは頭を切り替える。

「連絡が来たということは・・・」
『はい!!』

ジュラの問いにいい返事をシリルがすると、レオンが白い羽根をピラピラと見せつけるようにちらつかせる。

『国王に扮していた天使を俺たちが倒しました!!』
『しかも三人も!!』
『これはその戦利品』
『国も闇ギルドから解放できたよ!!』
「「!?」」

依頼成功の報告・・・本来なら喜ばしい限りなのだが、彼らの言葉に二人は驚愕し、立ち上がる。

「天使!?天使がいたのか!?」
『え?はい』
「しかもそれを倒したの!?」
『んだ』
『なんで訛った?』

想像を上回る彼らの言葉に顔を見合わせるジュラとメルディ。そんな彼らとは違い、カミューニは淡々と質問をぶつけた。

「その傷の感じからするにシリルとレオンで一人ずつ、シェリアとウェンディで一人倒したって感じか?」

後ろ側に立っているローグとミネルバはかすり傷一つない。天使の実力が高いことは彼らは重々承知のため、無傷で済むことはないとわかっていた。そのため二人は戦闘に参加しなかったのだと考えそう問いかけたのだが、返ってきたのは意外な言葉だった。

『いえ、天使が予想以上に強くて・・・俺とシェリアで一人、シリルとウェンディで一人、あとはグラシアンさんが片してくれました』
「へぇ、グラシアンが・・・グラシアン?」

予想外の人物の名前に首をかしげるカミューニ。彼は目を白黒させた後、画面にその名前の人物がいないことで目を細めた。

「まさか天使を倒すために命まで賭けるとは・・・」
『死んでねぇよ!!』

泣いた真似をしている彼に向かって影の竜が突っ込みを入れる。それに青年は冗談冗談と笑ってみせた後、少し思考してからまた言葉を紡ぐ。

「三人を五人で倒したってことか?」
『まぁそう言えなくはないですよね?』
『正確には天使一人ずつを相手にしてましたけど』

詳しく話を聞いているうちに三人は幾度となく顔を見合わせた。グラシアンの実力は当然把握していたし、彼も天使との戦いのキーマンの一人に数えられていたのだから。
しかし、それでも彼が一人で天使を倒したということは彼らからすれば驚きでしかなかった。

「どうやって倒したかわかるか?」
『いえ・・・』
『俺たちが着いた頃には、もう天使の消滅が始まっていた』

ローグの言葉を聞いてますます混乱の渦に落ちていく。本人に聞こうにも彼はいまだに目を覚ます気配もなく、ただ眠りについているというのだから確認のしようもない。

「とりあえずわかった。お前らもケガヤバそうだし、一回帰ってきてくれ。港に治療班を用意させておく」
『わかりました』
『カミューニさんカミューニさん』

報告も終了したと思ったところでシリルとレオンが画面にくっつくくらい前に出てくる。何か重要なことに気が付いて通信を切られないようにしているのかとカミューニも身を乗り出すと、二人は嬉々として質問をぶつけてきた。

『天使倒したの俺たちが初めてですよね!?』
『しかも三人だよ三人!!すごいよね!?』

見た目も中身も子供のシリルと見た目は大人に近付いているものの中身は以前のままのレオンが楽しそうに・・・褒めてもらいたそうにキラキラとした笑顔を向けている。それを見たカミューニは小さく笑みを浮かべると・・・

「一人で倒せるようになったら褒めてやる」

そう一言だけ残し、通信を切った。

「まだまだ子供だな、あいつら」
「そう言うな、カミューニ殿」
「そうだよ。むしろ天使を倒したなんてすごい功績なんだから」

冷静さを取り戻したジュラとメルディに諭されタメ息を漏らしたカミューニ。彼は立ち上がり自身のコーヒーへと手を伸ばしそれを口へと含む。

「あいつらならいずれ倒せるとは思ってたよ。むしろ一人じゃ倒せなかった辺り、まだ伸び代はあるかもな」
「素直じゃないなぁ」

本来は彼も相当嬉しいはずなのにそれをおくびにも出さないことにやれやれとメルディが首を振る。そんな中、カップを手に持っている彼はそれをもう一口飲もうとして、動きを止めた。

「どうされた?カミューニ殿」
「ジュラ、お前はどう思う?」
「どう・・・とは?」

突然の問いにジュラは何も答えることができない。彼が何を聞いているのかわからないのだから、その反応は当然と言えた。

「シリルとレオンがウェンディとシェリアの手を借りなければ倒せない相手をグラシアンが一人で倒したってとこだ」

カミューニは彼の方へと視線を向ける。それに関してジュラは全く気にしていなかったが、言われてみて初めて気が付きハッとしていた。

「確かに・・・相性がよかったということか?」
「それはありえるかもしれない。だが、そうなると今までのことが説明できなくなる」

これまで多くの魔導士が天使と遭遇し、破れてきた。しかもほぼ全員が相手にダメージを与えることすらままならず、唯一のヒットもラッキーによる一撃のみ。

「レオン、シェリアが重要人物に上げられたのはあいつらが滅神魔導士(ゴッドスレイヤー)だからなのは話したよな?」
「うむ。現にシェリアがアルバレスの時の神・・・厳密には天使を倒しているからな」

ウェンディの攻撃が通じなかったのは話に聞いていた。その中でシェリアが攻撃を加えられたのは相手が神に類する力を有していたから。

「シリル殿は天使の子供。彼も時の神を倒しておることからその力が証明されている」
「そうだ。だからこいつらが最前線に配置されるメンバーだと思っていたが、グラシアンが倒したとなると・・・」
「何か見落としがあるってこと?」

メルディの問いに二人はだんまりしている。二人とも何が正解で何が間違いなのかわからず、答えることができないのだ。

「ん?待てよ」

しかし、カミューニはあることを思い出し、頭を抱えた。

「まさか・・・そういうことか・・・?」
「カミューニ殿?どうされた」

頭を抱え何かに気が付いたカミューニ。明らかに態度がおかしくなった彼を見てジュラが顔を覗き込むと、彼はそれに気が付いたのか、無表情になり顔を上げる。

「グラシアンはうちの病院に入院させておこう。もちろん意識が戻るまで面会は禁止だ」

それだけ言うと彼は扉の方へと歩いていく。二人も慌てて彼の後を付いていこうとするが、振り返った彼はそれを手で制止する。

「二人は待っててくれ」
「お兄ちゃん?」
「カミューニ殿!!どこに行く!?」
「俺も港にいってくる。すぐに戻るから心配すんな」

そう言って扉から出ていくカミューニ。彼にバレないようにと二人もこっそり扉を出るが、すでにその姿はなかった。

「お兄ちゃん・・・どうしちゃったの?」

















足早に通路を進んでいくカミューニ。その彼の後ろに、天井から降りてきた黒装束を纏った男が降り立ち、共に進んでいく。

「急にどうした?しかもこんなところで」
「メンドクセェことになったかもしれねぇ」
「何がだ?」

赤髪の青年は周囲を見回しながら人が誰もいないことを確認すると、振り向くこともせず後方の男へ話しかける。

「グラシアンの奴、あいつ(・・・)に気付いたかもしれねぇ」
「まずいのか?それは」
「普通に考えてマジィだろ、しかも今あいつのそばには・・・」
「あぁ、そういうことか」

全てを理解した男はそれ以上何も聞くことはしない。カミューニは見張りがいる正門からではなく、無人の裏口から評議院を出ていく。そんな彼の様子を木のような見た目をした老人は鋭い目付きで見送っていた。






 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
これにて悪者の王国編は終了です。長期休載しまくってすみませんでしたm(__)m
次からはちょっと思い付いたことがあるのでそれをやろうと思っていますが、もしかしたら日常編を挟むかもしれません。日常編というかただの修行編かもしれませんが・・・ 
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