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X ーthe another storyー

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第九話 風使その九

「自分が絶望に浸る時を」
「貴女がそう言ってもです」
 丁はあくまで自分への憎悪を語る妹に目を閉じて俯き加減に述べた。
「私は貴女の姉であり」
「私を愛しているというの」
「はい、たった二人の姉妹ですから」
 それ故にというのだ。
「ずっと傍にいて欲しいと思っていましたし今も」
「こうしてなの」
「夢の中でお話出来て」
 それでというのだ。
「嬉しいです」
「そうなのね、けれど私は違うわ」
「私をですか」
「憎んでね」
 そうしてというのだ、だがその目にも言葉にも憎しみの色は一切出さずそのうえで丁に対して話していら。
「苦しめてあげるわ」
「そうですか」
「そうしたら姉さんも終わるわね」
「終わる?何が」
「夢見でいる必要もなくなるわね」
 こうも言うのだった。
「人間が滅べば、いえ天の龍が皆戦えなくなれば」
「死ねば」
「そう思うならいいわ」
 戦えなく即ち死ぬと捉えた丁にこう返した。
「姉さんが。兎に角私が戦いに勝てば」
「わらわはですか」
「もうね」 
 その時はというのだ。
「夢見でいることはなくなるわね」
「天の龍が全て死ねば人間の滅亡は決まります」  
 これが丁の返答だった。
「そうなれば人間を護るわらわは」
「そうね、だからよ」
「天の龍達をですか」
「七人全員ね」
 それこそというのだ。
「戦えなくしてあげるわ」
「そうですか」
「その時を楽しみにしていて、ではね」
「今夜はですか」
「これでお別れよ」
「わかりました」
「覚えておいてね、姉さん」
 去ろうとするその時にも言うのだった。
「夢見の務めもよ」
「あと少しですか」
「ええ、きっとね」
「そうならない様にします」
 去る妹に告げた、だが。
「・・・・・・・・・」
「そうなる筈がないわ」
 何かが呟いた、丁の唇を歪めさせて。だがその声は庚にも聞こえはしなかった。だがそれでもであった。
 牙暁は庚に夢の中で話した。
「お姉さんは」
「わかっているわ、貴方はね」
「わかっているつもりです」
 夢の中で座る庚の右後ろに立って言うのだった。
「貴女の本心は」
「ええ、ではね」
「何としてもですか」
「夢見でなくして」 
「そのうえで」
「もう一人のね」
「あの人をですね」
「何とかするわ、何時からかしら」 
 庚はその流麗な眉を曇らせて話した。
「姉さんはね」
「お一人ではですね」
「なくなったわ、何故かね」
「そうですね」
「ああなって」
「そしてですね」
「このままではね」
 まさにというのだ。 
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