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チートゲーマーへの反抗〜虹と明星〜

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11話 Fateful encounter【運命の出会い】









「どうせ私なんか、何もできない根暗女ですよばーか。」
「そこまで言ってねぇよ……」


再びハイライトのない目で横たわるかのん。
那由多を除いた速人たち一行はやれることをやろうと、たこ焼きを焼いたり、キュートな服を着てみたり羞恥心のようなそれを取り除こうとした。

しかし結果は棒振り。

そもそも本当に羞恥心が関係あるのか……?


「不对!カノンさんは絶対歌えマス!可可はその瞬間を見てマシタ!!」
「たまたまだよ…!今の姿が本当の私なんだよ———」
「クヨクヨしないでください!!可可はかのんがいるから頑張れているんデス!!」
「可可ちゃん……」


可可のストレートな言葉がかのんに響く。どこまでもまっすぐで表裏のない素直な女の子……そんな可可だからこそ、人を励ませる。

しかし、かのんの不安は拭えない。


「でも、一度は歌えたのにまた歌えなかったんだよ!?どうしたらいいか……」
「———分かりマシタ。では今は無理に歌おうとするのはやめマショウ。今回のライブは可可が1人で歌います。」
「「えっ!?」」
「は…!?」


可可の提案にその場の3人は驚き……そして唯一の男である速人はあからさまに不機嫌な顔をする。


「可可。お前本気で言ってるのか?」
「はい。かのんさんはステージに立つだけでいいんデス。可可は決めマシタ……かのんさんが歌えるようになるまで諦めないって!!」
「苦し紛れを————」


速人は行儀悪くも、かのんの部屋に陣取る机に腰掛ける。そしてかのんに自前のノートを見せつける。


「俺はお前たちのために、歌詞の原案を書いている。可可とかのん、2人が踊り歌う姿を想像して書いてる。だからかのんと可可のどちらも歌えなきゃこの歌詞は意味ねぇんだよ!!」
「速人くん……」
「だから……可可のためだけじゃなく、俺のためにも頑張ってくれないか?」


「俺のために頑張れ」

その言葉に目を見開いたかのん。その告白のような甘い言葉と自分を貫くような金と青の瞳に、頬を赤らめる。


「(ず、ずるいよ速人くん……そんな言葉で———)」


ドギマギするかのんに、声かけようとした千砂都。しかしその声はすんでのところで本人に止められた。


「わかってるちぃちゃん———わかった!2人で一位取らなきゃだもん…!いいライブができるように頑張る!!!」
「はいデス!!」


微笑と共にいい声の返事をする可可。


「ソウと決まれば!!可可、3人に見せたいモノがありマス!!」
「「「!!?」」」




—————※—————



キャッスルドラン内部。

エルシャム王 小原魁が高級ソファでくつろぐ中で、1人来客が訪れる————イフトだ。


「よっ、イフト———その様子だと何か都合の悪いことが起こったらしいな。」
「ご明察。」


魁は置いていたワイングラスに、赤いワインを注ぐ。そして勘が当たったことに少し笑みを見せながら、グイッとその液体を飲む。


「さしずめ、アイツの身が危ういんだろう。」
「そうだ。だから……」
「俺たちが動く……か。別に構わんが、それを目の当たりにしたあの者たちがビビってやる気を失わないといいんだがな。」
「その心配はない。彼らはもうすでに次のステージに進み出している……そう、才も言っていたさ。」
「ほう……..そりゃぁ楽しみだ。」


ゴン!と音を立てて、ワイングラスが地に着いた。



—————※—————




速人たちはイベントで使われる予定のステージへとやってきた。そして可可はそのブツを紹介する。


「じゃジャーン!!」
「なにこれ…?」
「初ライブするにあたって用意したグループ名付きの看板とブレードデス!」


かのんと可可のポップな似顔絵が描かれた看板。それをオタク感満載のハチマキとオレンジとスカイブルーのブレードを振り回す可可。

あまりにノリノリな可可に速人たち3人は困惑する。

すると、かのんがあることを指摘する。


「この看板の名前……?」
「可可が考えたグループ名デス!可可のクーとかのんさんのカーをあわせて、『クーカー』!!」
「そのまんまだな……まぁこの際どうでもいいか———」


速人がこういうわけはそこまでグループ名にこだわりを持ってはいない……というより、いい結果を残すためにそんな余裕はないと言ったところか。

ふと、かのんは少しばかり浮かれた足取りで使われるはずのステージを感慨しながら、遊歩する。


「ここで……ライブするんだ….!」
「はい!10組ほど参加するそうデス!」
「10組……その中で、1位か。」


改めてその目標を噛み締める速人たち。


スーッと息を吐き、心を落ち着かせた………


すると———後ろからときめき輝く声が速人の耳に入る。


「ここがスクールアイドルフェスのライブ会場……トキメイちゃう〜!!」
「ユーちゃん、声大きいよ〜」
「(アイツ……まさか。)」


速人が侑を気にかけていたのも束の間。侑はすぐに前にいるかのんたちに気づき、そばに置いてある看板を見た途端に目を輝かせながらかのんと可可の側にやってくる。


「もしかしてスクールアイドルの方ですか!?」
「え!?ま、まぁ……スクールアイドル駆け出しというか———」
「この前始めたばかりデス!」
「あのクーカーってアイドルグループ名?あとどこの学校スクールアイドル部ですか!?やっぱりこの辺だと……!!」
「ちょ、近い近い!!」
「」ゾクッ


速人の左目が危険信号を発する———というのも、侑の後ろ……歩夢の目が死んでいる。あからさまに不機嫌なのは見て取れるが、速人には得体の知れない恐怖が込み上げてきた。

流石に危険回避のため、侑とかのんに割って入る。


「まぁまぁ落ち着いて……コイツら結ヶ丘高校のスクールアイドル部———そして俺はコイツらを護る者 天羽速人だ。アンタらは?」
「え?」


予想外にも質問されたことに拍子抜ける侑。速人はそのまま彼女に追い打ちをかけるように言う。


「お前……【仮面ライダー】だろ?」
「えっ、どうして…?」
「俺にはそう【視】えたんだが?」
「……!」


彼の目……青い右目と黄金の左目がその事実を示した。そのデタラメじみた先見性は侑に、目の前の人物が同類であると理解させるには十分すぎる要素だった。


「君も…仮面ライダー?」
「あぁ。天羽速人……またの名を仮面ライダーセイバー。」
「私は虹ヶ咲学園普通科2年 高咲侑。仮面ライダーゼロワンやってます……?」
「へぇ…俺より一個年上か。」
「でも速人くん、後輩って感じしないけどね〜あははは……」


〜〜〜〜


かのんと歩夢たちは互いに自己紹介し、事情を話し合った。


「えぇ〜!歩夢さんもスクールアイドルなのデスか!?」
「うん…と言っても、まだ始めたばっかりなんだけどね。今回はこのイベントにエントリーしてる1人のライブを見にきたんだ。」
「ナルホド、そうでしタカ….」
「でも私たちも始めたばっかり————というかまだ始まってすらないというか……ねぇ?」
「こっち見んな。」


気まずそうに速人に視線を向けるかのんだが、その視線は逸らされる。

苦笑いでお茶を濁す一同。


さて、そんな速人がそらした視線の先に……男が迫っていた。


「よう速人。ライブ会場の下見か?」
「あ、師匠。」
「「「才(マサ)さん!!」」」


俺 伊口才の登場は、この場にあったすべての話題を強奪し、我が手中へと収めた。

そして俺は……侑の方へと視線を向ける。案の定、侑の顔からは血の気が引いていた。


「どうして……それに師匠って!?」
「え?————あぁ、この人俺の武術の師匠の伊口才。実質俺の親代わり……みたいな人だ。」
「親代わり……?」


速人が見せた俺への慕情は、侑にとっては異質でしかなかった。

彼女にとって俺は冷酷で無慈悲な存在。現に、彼女の胸に強烈な拳をお見舞いしたのだからな。

だからこそ困惑した……何故にこの無情な男が親代わりなどやれているのか。誰彼構わず破壊してしまいそうな彼がなぜ———と。


そんな困惑に構わず、速人は俺の膨らんだポケットに目をやり、微妙な表情を見せる。


「さては……また賭けたな?」
「あぁ———5ゲーム【打って】きた。」
「全く、麻雀にポーカーにブラックジャックに丁半博打、チンチロリン、パチスロに……ギャンブルも大概にしろよな。」
「まぁ、いーじゃねーか。全部勝ってんだしw」


俺の行き当たりばったりな回答に、困り眉を見せる速人。そばにいたかのんたちも俺のアウトローな趣味を苦笑いする。

そんなたわいもない会話を終え、ようやく俺は侑の方へ視線を向ける。


「ふーん。お前も仮面ライダー……か。」
「ま、まぁ……」


図々しい質問にジト目で俺を睨む侑。

彼女が仮面ライダーゼロワンであることはこの場では俺が一番よく理解しているはずだ。そう思えば、俺の演技じみた発言に歩夢と侑は冷ややかな感情を抱くのは当然のことだろう。

しかし侑は「この人も仮面ライダーだ」などと馬鹿げた発言はしない。なぜなら……


「そういや今日はハンバーグとポテトフライだろ?」
「あぁ。俺の……好物だからな。お前らもどうだ?」
「はい!ぜひ!!前に食べたマサさんの料理とーっても美味しかったデス!!」


談笑する速人たちを見れば、告発することの意味がよく理解できるだろう。

もし、告発するとしたら……


「………」ニコニコ
「」ゾクッ
「侑ちゃん?」


小刻みに首を横に振る侑。流石に侑の願いとあっては歩夢も自らの意思を曲げるほかあるまい。

さて……そんなときに、速人は侑に紙切れを渡す。


「おら。」
「これは?」
「俺の連絡先……増援が必要なら是非掛けてこい。俺か、馬鹿な相棒がすぐ助けに行ってやる。」
「それって……」
「はぁ———お前ってやつは……先輩の癖に結構鈍感だな。」


速人は面倒くさそうに、頭を掻きむしった。


速人は……手を差し出した。


「今日から……友達。」
「———!!」


侑は少し目を泳がせたのちに———



「うん。よろしくっ♪」



笑顔で握り返した。



 
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