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チートゲーマーへの反抗〜虹と明星〜

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L10話 それぞれのsufferings【交錯】







早朝……速人&那由多は澁谷家直営のカフェで開店時間前に朝食とした。

速人は口をつけたコーヒーカップを置き、トーストに齧り付く那由多へと尋ねる。


「そういや……昨日。」
「あ?」
「何で戦わなかったんだ?」
「……別に。」


何か嫌なところを突かれたかのように目の玉を背ける那由多。

コーヒーカップが音を立てた。


「お前は明らかに変身しようとしていた。でもあの時…それを辞めた。なぜ


ドン!!

木の机が那由多の拳に揺れる。


「だから!別に逃げたわけじゃねぇ!!」
「じゃあどういうことなんだよ。」
「———かのんたちの誘導を……」
「ふん。お前らしくもないことを。」


速人はコーヒーを一気に飲み干して、その美しい眼光で那由多を見る。


「お前が何に悩んでいるかは興味ないが……」
「?」
「俺が何かあった時、お前だけが頼りなんだ———頼むぜ……」
「速人……」


目を背けながらも期待の言葉をかける速人。

2人は喧嘩ばかりの腐れ縁———同じ師匠を持ちながら、その性質は真逆と言って差し支えない。

だからこそ信頼できる———表と裏のように、どこかでそれが繋がっているから……だろうか。


「さてと……」


コーヒーを飲み干した速人はノート……歌詞を殴り書いたそれを開く。

その使い古され方を見て、ここまで熱心に考えているのが瞬時にわかる。

そんなノートを那由多はチラッと見る。


「なんか……『星』って感じだな。」
「もうちょい語彙力ある言葉で言えねぇのかよ———」
「うっせぇ。」
「可可のアイデアを体系化しただけなんだが……それだけでここまで書けるとは思わなかったぜ。」
「ほーん。」
「お前から聞いといてその態度かよ……」


そんな話をしているうちに、ドアベルが鳴り響かせてかのん&可可が帰還する。

そしてかのんは生気のない瞳を携えて、テーブル席へと突っ伏す。


「はぁ……。はぁ……。」
「(歌えなかったのか……まずいな——このままだとあの生徒会長にイチャモン言われんのは明白だし……うーん。あっ、そう言えば———)」


速人はそのままかのんに言葉もかけずに、那由多に話を振る。


「そう言えばお前の言ってた葉月…

すると……可可は隣にいる那由多へと怒りをぶつける。

『むん!チョットはかのんを心配するのデス!!』
「いや俺じゃなかろう……?」


理不尽な話が那由多を襲う。しかしながら話のすり替えに失敗した以上は、かのんに声をかけるしかあるまい。


「歌えなかったのは仕方ない……克服法を見つける以外あるまい。」
「まだ何も言ってナイデスよ……?」
「やめろ尺が伸びる。」
「はぁ……」


那由多の静止が可可に困惑を残してしまう。


「さてさて……ほんと、困っちゃったな。」



—————※—————



結ヶ丘高等学校 中庭。速人とかのん、可可、そしてダンスコーチたる千砂都が生徒会長 葉月恋と対峙する。

そして事情を話した……が。


「辞めた方が良いのではないですか?フェスで醜態を晒せばこの学校の評判に関わります。」
「まだ歌えないと決まったワケではアリマセン!」
「そうは思えませんが。」


事情を話した瞬間にこの有様。可可は強い口調で言い返したが、それでも恋は冷徹にカウンターを飛ばした。

俺は表情を歪めながら恋に言い放つ。


「フェスの辞退はありえんな……それに、大スポンサーたるエルシャム王の下命がある以上、そう易々と辞められねぇだろうに。」
「………」


流石に王様が槍玉に上がれば、恋も大きい口を叩く事はできない————

それもそのはず。彼こそ母親の悲願であった学校設立を支援してくれた大スポンサーである。

そして……速人は恋の側に立つ。


「全く、お前の【じいさん】も単なる王様ってわけじゃないらしい。」
「………!?!?!?」


恋の表情が一瞬、見たこともない……呆気に取られたようなソレになる。

まるで得体の知れぬものを目にしたように、動揺を隠せない。


「何を……!?」
「知らなかったのか?」
「どこでそんな話を——!」


詰め寄ろうとする恋に、速人は口に指を当てる。その仕草に鬼気迫りかけていた彼女は冷静さを取り戻す。

状況を見計らって千砂都は恋に結論を告げる。


「とにかくやれる事はやってみようと思う。まだフェスまでの時間はあるし、理事長先生たちの許可は得てるんだし、なんの問題もないでしょ?」
「……嵐さんの練習の邪魔にならなければ良いですが。」


そんな捨て台詞に近い言葉を呟いて、恋はその話を終結させ、その場を立ち去っていった。捨て台詞ではあるが、その言葉は今のかのんに負い目を感じさせるに事足りた。


「ごめんねちいちゃん……」
「ううん!心配しないで!ダンスもバッチリ練習してるから!————そうだ!放課後、時間ある?」



—————※—————




東京 霞ヶ関 某所……人のカタチを見る魑魅魍魎が一室に集う。

議長らしき者が一声をかける。


「皆……今日の議題は———わかっておるな?」


議長の隣にいる人物がその問いに回答する。


「あの男の件……ですか。」
「その通りだ。」


議長はゆっくりと首を動かし、議題について淡々と……不機嫌さを露わにして話し始める。


「あの男は我々の情報を世間に流しすぎた。今の所メディアコントロールで、ウワサ程度にしかなっておらんが———今後はわからん。そればかりではない、仮面ライダーとなって我々のエージェントを潰しまわっていると聞く。」
「やはり、消えてもらうしかございませんか……」
「しかし———」


評議員の1人が懸念を述べる。


「彼を殺せば、あの人……いや、【得体の知れぬ】者が芋づる式に現れるかも———」
「では……どうするべきか。」


すると……1人が手を挙げる。


「私に……お任せください。」
「ほう、ウィル。君が……」
「私とジェイコブで対処いたしましょう。彼と私が一番若い。」
「そうか……では採決だ。彼に委託する者は立ってくれ。」


人々が………立ち上がった。



—————※—————




「」フラフラ

「あのお兄さんなんでキョロキョロ
「しっ、見ちゃダメよ……」


女子高生の聖地 原宿。この地域を含め、結ヶ丘ができてからはエルシャム王国の影響か、自由な風潮を象徴するような街となった。

つまるところ、人の賑わいも極致を見せたのだが……そこに挙動不審な男 中川那由多が。


「クソっ……ぐわーっ!」


後悔とやるせなさに苛まれ、よくわからない奇声を上げる那由多。その念を持って歩いているからなのだ。

さて……そんな彼の数メートル直線上に人影が。


「」チラチラ


その人影———もとい、そのJK 平安名すみれ。以前に隼人たちと少し一事のあるクラスメイト。

さて、そんな彼女は周りの視線を気にしながら、口にクリームをつけながらクレープの味に大袈裟なほど歓喜する。


「うわ〜♪美味しそーう!!」チラチラッ


注目を集めたい彼女ではあるが、悪目立ちすらする気配は皆無である。

「場所が悪かったみたいね。」

流石に彼女も目立っていないことを察したのかその場を去ろうとするが……


「おわっ!」
「ギャラクシィ!!」スッ


刹那。衝突しかける那由多とすみれの2人。しかしすみれはすんでのところで躱した。

そして那由多のタックルの餌食になってしまったのは……


「目が…目がぁ!アーッ!!」
「ちょっ———私のクレープ!!」


顔がクリームまみれの那由多に、すみれは怒り心頭で肩を揺さぶる。


「ちょっとどうしてくれんのよ!!あのクレープ意外に高かったんだから!」
「いや知らねぇよ〜!」


顔はクリームまみれの無様な姿で叫び声を上げる那由多。

ここに速人がいれば間違いなく大爆笑の上でネタにしまくっていたに違いない。


さて、こんな悪目立ちする彼を……高みから見物する者たち。


「あれが……」
「あぁ。彼が……中川那由多。私の友人が育ての親として様々な武術を教えているそうだ。」
「そうですか————」
「約束通り君の弟に合わせてやった……いや、これから関わることになるのかもしれないが。これで思うこともないだろう?」
「………イフトさん。」
「どうした?中川菜々……いや、優木せつ菜くん?」


そう、優木せつ菜……その彼女が生き別れた弟を複雑な表情で見つめる。


「私は侑さんに教えてもらいました。大好きを貫いていい…思い通りに生きてもいいって。そんなこと気づくのが遅すぎました———あの子を見てるとそう思うんです。」
「どうかな……彼には彼なりの苦悩があるだろうに。」
「そう…ですね。」
「また相見える日が来るだろう。次は……直にな。」
「え?」


意味深な一言を最後に……イフトらはその場を後にした。



 
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