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リュカ伝の外伝

作者:あちゃ
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お前を嫁にもらう前に、知っておきたい事がある

 
前書き
よく会う人物と初めて会います。

言ってる意味が解りません。
当人はもっと分かりません! 

 
(グランバニア城:城内カフェ)
ラッセルSIDE

先日、付き合っている彼女にプロポーズをした。彼女の名はリューナ。
まだお互い学生だし、彼女なんかは飛び級で留学してるくらい若いから、早い様な気もするが、リューナのスペックが高すぎて焦りからプロポーズをしてしまった。

俺と天秤に掛けてるもう一人の彼氏が、貴族でもあり優秀だったから負い目を感じたのかもしれない……
友人達にその事を言われて気付かされた。
彼女(リューナ)を失うのは本当に辛いから。

勿論、リューナの返事はOKだった。
彼女からは『ラッセルは将来有望だし、お父さんに迷惑は掛けないだろうから好きだよ』と言われ、評価が高かった事は凄く嬉しかった。

だが彼女から結婚(の前に婚約だが)に際して重要な……避けては通れぬ事があると言われた。
何事かと緊張して聞いてみると、「私の両親を紹介したい」との事だった。
当然の事であろう。俺もご両親にはお会いしたい。

初めての海外旅行になるが、未来の妻のご両親に挨拶をするのだから、彼女の生まれ故郷であるラインハットまでの往復2ヶ月強の旅行を計画(頭の中で)していたのだが、リューナに『魔法(ルーラ)で連れてくるから、グランバニアで食事会をしましょ』と提案される。

仕事関連や学校行事等で2ヶ月強も出かけるのは拙いと気を使ってくれたのだろう。
だが思わず『リューナってルーラを使えたの!?』と訊いてしまった。
しかし苦笑いをしながら『ううん、使える人に頼むのよ』と……

使える人……
と言う事は宰相閣下に頭を下げるのか?
嫌だな、アイツに頭を下げるのは!

でもルーラを使用するのが最も効率的だ。
奴の嫌味を我慢すれば済むだけの話なのだし、嫌な事はサッサと終わらせたい気持ちもあったから、直ぐにでも宰相閣下の下に行こうとしたが、『あ~……わ、私の両親の事だから、手配はこちらでしておくわ。ラッセルは挨拶の事だけを考えておいて♥』と気を使われてしまう。

申し訳ない気持ちが凄いが、宰相閣下相手に口喧嘩(こちらからの暴力込み)で渡り合えてたし、今回は彼女にお任せした。
リューナの尻なら問題無いが、結婚後は尻に敷かれる事が確定である(笑)

そして当日となり、昨日の晩から緊張がMAX!
以前からご両親(特にお父上)の事は聞いており、『怒らせると凄く怖い。でも、そう簡単には怒らない』との事だった……けど、こんな若い娘さんと結婚したいと言ってくる男に対して怒らないでいてくれるだろうか?
そんな事ばかりを考えてしまい、もう胃が如何にかなりそうだ!

もう一つ俺を悩ませてるのは……
今回、食事会という事で気を使ってくれた城内カフェのマスターが、平日ではあるが日中に俺達用に貸し切り状態にしてくれたのだが、何故だか部外者が数名紛れ込んでいやがる。

部外者その1……ラングストン近衛騎士隊長閣下。
まぁ彼は、公務員(軍人)にも関わらず、平然と城内カフェで趣味の料理を生かしてアルバイトをしているので、今回は大目に見たい。

部外者その2~4……ウルフ宰相閣下・レクルト総参謀長閣下・ジョディー上級メイド。
こいつら何なんだ!?
何時(いつ)もつるんでやがって仲良いな!

今回はリューナのご両親がメインという事もあって、カフェ内での席では上座に当たる、入り口からは奥側に座ってもらおうと着席してるのだが、俺の背後側の入り口付近に連中が陣取り、がやがやと楽しそうにお茶を飲んでいる。

暫く部外者の事は気にしない様にして待っていると、店内に人が入ってきた。
「あらぁ……ウルフさん、ここに居たの? リュカさんが探してたわよ」
「いいんっすよ偶には。それにリュカさんもここに来るんでしょうし、関係なくなりますから(笑) それよりマリソルさんの席はあちらだそうですよ」

「お母さん。こっちよ」
俺の右隣に座ってたリューナが、振り返って今入店してきた人物を手招きする。
如何(どう)やらこの方がリューナのお母さんの様だ。凄く美人だ!

店員(ラングストン近衛騎士隊長)に案内されて、お義母さんはリューナの前の席に腰を下ろす。
「初めまして。リューナの母、マリソルです」
「は、初めましてお義母さん! リュ、リューナと……む、娘さんとお付き合いさせてもらってるラッセル・クリステンセンと申します!」

慌てて立ち上がり頭を下げて自己紹介した。
見とれるなと言うのが無理なくらい美しい女性である!
思わず凝視していると……

「自分の彼女の母ちゃんに、鼻の下を伸ばしてんじゃねーぞ」
と、部外者の宰相野郎が野次を飛ばしてきた。
解ってるわ! 部外者なんだから引っ込んでろ!!

俺は落ち着きを取り戻そうと部外者連中に対する罵詈雑言をイメトレしていて気付く。
そう言えばあの野郎、先刻(さっき)『リュカさんもここに来る』って言ったよな?
何でだよ!? 何で陛下まで来るんだよ!? 部外者は出ていってくれよ……俺の人生がかかったご挨拶なんだから。

色々な感情が混濁して、少し……いやかなり混乱していると、入り口から聞き覚えのある澄んだ男性の声が聞こえてくる。
「あ、こんな所に居やがった。おいピピン……居たぞ、お前の上司が! 先刻(さっき)の報告はコイツにしてくれよ。僕は忙しいんだからさぁ」

片手には何かの書類が入ってるであろう茶封筒を持って陛下まで入って来た。
忙しい人が何しに来た? 忙しいのはこっちだよ!
俺はこれからお義父さんに、結婚の挨拶をするんだよ!

「か、閣下……何してるんですか、こんな所で!?」
とピピン大臣に対して……
「えっ? 何って……茶を飲んでるんですけどもぉ、何か?」
と応える宰相閣下。最悪だあの人……いや、あの連中。

「アイツ性格悪いなぁ、やっぱり(笑)」
何時もの様に優しく澄んだ声で笑いながら、陛下は俺の目の前の席に腰を下ろし、店員(ラングストン近衛騎士隊長)に紅茶を注文する。
いやいやいや……何所に座ってるんですか選りに選って!

「あ、あの陛下……そ、その席は本日予約が入ってまして……そのぉ……別の席に座って頂きたいのですがぁ……」
と言うよりも店から出て行ってほしいのですがぁ!

「あ、誰か来んの!? ゴメンね気付かなくて」
「リュカさん、大丈夫よ。その席はリュカさんが座る場所よ」
慌てて立ち上がった陛下に、優しい声で着席を促すお義母さん。

「……はぁ?」
「プフゥ~~~ッ!!!」
理解の追い付かない俺は、かなり間の抜けた声を出したが、それを聞いたリューナが腹を抱えて笑い出す。因みに後方の部外者席からも、笑い声が聞こえてきた……しかもピピン閣下の声も追加されてた。

「アハハハハッ。ご、ごめんなさいラッセル。フッ、フフフフフッ!」
何故笑ってるのか……何がごめんなさいなのか……まだ俺には理解出来てないが、貸し切り(部外者込み)の店内から笑い声が連鎖する。お義母さんも口元を押さえて笑っている……笑ってないのは理解出来てない俺と陛下だけだ。陛下も進んで笑いそうだが……?

「この期に及んで未だ言ってなかったんだリューナ……」
「ご、ごめんなさい。ラッセルのこの反応が見たかったから(テヘペロ♥)」
何だ……悪戯っ子を窘める様に陛下がリューナの事を軽く叱る。

「済まんねラッセン。娘が思ってたよりも悪戯好きで」
「あ、あぁ……いえ……そんな! 別に俺は何とも思ってないですよ陛下……『娘』?」
え? は? 娘!?

「はじめまして、リューナの実父のリュケイロム・グランバニアです。宜しくお願いします」
「……………えぇぇぇぇっ!!!!!!」
嘘ぉ!?

「ぎゃははははっ、予想通りのリアクション!」
「笑っちゃ悪いよウルフ君。アレは普通のリアクションなんだから」
「そういうレク(レクルト)だって笑ってるじゃん」

俺の後ろの方で言いたい放題言い笑っている部外者連中。
笑い声だけで言えばピピン大臣やラングストン閣下の声も聞こえる。
いや、そんな事は如何(どう)でもいい!

リューナが陛下の娘!?
ヤベェって!
何がヤベェのか分からないが、何か絶対ヤベェって!

ラッセルSIDE END



 
 

 
後書き
付き合ってる彼女の家に挨拶へ行ったら、
上司が出てきた……
そんな感じ。 
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