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展覧会の絵

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第十八話 我が子を喰らうサトゥルヌスその十

「私をどうして殺すつもりなのよ」
「中国の刑罰でね」
 十字が出した国はこの国だった。
「稜遅刑というのは知ってるかな」
「何、それ」
「人間をゆっくりと。一片ずつ切り取っていくんだ」
 それがだ。稜遅刑だというのだ。
「あえてじっくりとね」
「私を切り刻んで殺していくっていうの」
「そう。君にはそれを行うよ」
「お兄ちゃんの前で」
「じゃあいいね」
 早速だった。十字はその手にナイフを出してきた。そのナイフで。
 まずは雪子の着ているパジャマ、それに下着を一瞬で切り裂いた。そこから白い見事な裸身が出て来た。
 だが十字はその裸身には目もくれずだ。そのうえでだった。
 雪子の身体を一片ずつゆっくりと切っていった。まずは。
 指だった。右手の薬指が最初の間接から切られる。切断された。
 それから太腿の一片を切り取る。それから今度は。
 乳首、そして頬に。徐々にもがき苦しみながら切り取られた。
 雪子はその度に激痛で絶叫する。だがそれはもう只の騒音だった。 
 十字は淡々と切っていき裁きの代行を行った。それが終わったのは二日後だった。
 教会に戻ってきた十字に神父が問う。どうだったかと。
「終わったよ」
「最後の罪人が死んだのですね」
「うん。今回の事件のね」
 全員だ。裁かれたというのだ。
「そうなったよ」
「お疲れ様でした」
「骸はいつも通りね」
「外にですね」
「然るべき場所に晒しておこう。ただ」
 晒すがそれでもだというのだ。
「今回の裁きの代行は稜遅刑だったからね」
「その骸はですね」
「八つ裂きどころではないよ」
 最も惨たらしいと言われるその有様どころではないというのだ。
「一体幾つあるかね」
「お分かりになられないまでに」
「裁きの代行を与えたよ」
 こう言うのだった。
「特に念入りにね」
「では切れ端は」
「残ったもの。屑はね」
 肉や骨の端はだというのだ。
「溶かしておこう。掃除をして集めてね」
「では硫酸で」
「そう。それで消してしまおうね」
「骸の処理もお任せ下さい」
 神父は淡々と述べる。彼もまた。
「それでは今より」
「僕もするよ。ただね」
「ただとは」
「暫く裁きの代行をしていてね」
 それでだというのだ。
「何も食べていないし飲んでいないからね」
「では、ですね」
「うん。シャワーを浴びて」
 それからだというのだ。
「何か食べるよ。飲みものもね」
「パンがあります」
 主の身体、まずそれがあるというのだ。
「それに果物、林檎に無花果があります」
「いいね。それは」
「はい、それにスモークした鴨にポテトのサラダがあります」
「では飲み物は」
「主の血が」
 ワイン、それがあるというのだ。
「それがありますので」
「有り難う。ではシャワーの後でね」
「召し上がられそのうえで」
「骸の処理をしよう。今回もね」
「罪人はどういった感じだったでしょうか」
「充分に恐怖と絶望、苦痛を味わって」
 そしてだというのだ。 
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