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展覧会の絵

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第十七話 死の島その七

「今は証拠を探してくれ。そして街の不審者を虱潰しに調べてくれ」
「そうしてですね」
「証拠集めですね」
「それしかない」 
 決め手に欠けると思った。だが、だった。
 本部長はこの姿を見せない犯人に対してこう言うしかなかった。
 命令もだった。これしかなくだった。彼は言うのだった。
「今はそうしよう」
「わかりました。それでは」
「まずは証拠集めですね」 
 誰もそれが集まるとは思えなかった。集れば既に集っていると思ったからだった。だがこれも誰もだが今はそうするしかないとわかっていた。それでだった。
 彼等は証拠集めに出ることになった。殺された四人についても調べだしたのだった。
 しかしその頃下人間である十字は教会の画廊においてだ。こう神父に話していた。
「この国の警察もね」
「枢機卿はですね」
「捕まえられないよ。いや」
 それどころかだというのだ。
「見つけられないよ」
「その影すらですね」
「僕は人には見つけられないよ」
 そうだというのだ。
「絶対にね」
「イタリアでそうであった様にですね」
「そう。警察のこともわかっているから」
「それ故に」
「僕は人には見つからないよ」
 そうだというのだ。
「何があってもね」
「そうですね。それでは」
「うん。次の務めに取り掛かるよ」
「今度はどの者に裁きの代行を下されますか」
「あの理事長かな」
 由人、彼だというのだ。
「彼にもこのうえない絶望と苦痛、そして」
「恐怖を味あわせてですね」
「裁きの代行を下すよ」
 四人の時と同じくだというのだ。
「念入りにね」
「では今日にでも」
「そうだね。今日にでもね」
 まさにだ。今日にでもだというのだ。
「彼に裁きの代行を下そう」
「では場所は」
「ここだよ」
 教会だというのだ。今回もまた。
「ここの地下で行おうか」
「左様ですか。しかしですね」
「水は今回は使わないよ」
「それではなくですね」
「また別の裁きの下し方を選ぶよ。そうだね」
 神父と話しながらだ。十字は絵達、彼の描いたそれを見ていた。
 そしてその中でだ。彼は言ったのだった。
「車輪がいいかな」
「それですか」
「それに今度は生き物を使おうか」
「大きいものでしょうか。それとも」
「小さいものがいいね」
 表情を変えず淡々とだ。十字は述べた。
「そちらにしよう」
「畏まりました。それでは」
「生き物といえばね」
 十字はここで思い返したのだった。彼の過去の裁きの代行を。
 そしてその代行についてだ。神父に対して話したのだった。
「以前も何度か使ってきたよ」
「どういったものをでしょうか」
「蛇も使ったね」
 イブを誘惑し人に林檎を食べさせたこの生き物もだというのだ。それが為に蛇はキリスト教においては最大の悪と考えられる場合が多い。
「そして他にも」
「犬もですね」
「犬もいいものだよ。犬に襲わせると」
「その悪人は身体を引き裂かれますね」
「そう。生きたまま手足を食い千切られ」
 そうしてだというのだ。
「そのうえで内臓もね」
「引き摺り出されそのうえで」
「やはり生きたまま貪るからね」
「生きながら貪られて死ぬのですね」
「あれもまたいい裁きの代行だよ」
 絶望と苦痛、恐怖を与えるというのだ。 
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