| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

展覧会の絵

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第十六話 最後の審判その六

「それはあります」
「ああ、裁判官とか警察官とかかな」
「そんなところですね」
「そうだね。悪いことをしたら捕まるよ」
「例え法を逃れ隠れていても」
 先生は表のことから話していた。だが。
 十字は彼の世界のことからも話していた。教会のそこからだ。
 そしてそのうえでだ。先生に言うのだった。
「神は御覧になられているのですから」
「そしてだね」
「はい、裁かれます」 
 そうなるというのだった。
「そうなります」
「成程ね。それではね」
「それではですね」
「僕は教室に戻るけれど君はどうするかな」
「僕も出ます」
 今いる部室からだ。そうするというのだ。
「そうします」
「そうか。それじゃあね」
「今度はまた別の絵を描きますので」
「どういった絵かな、一体」
「死、でしょうか」
 審判の次はだ。それだというのだ。
「それを描くかも知れません」
「また暗い題材だね」
「暗いですか」
「死というとね」
 どうしてもそう思ってしまうとだ。先生は首を捻りながら十字に答える。
「そう思えるね」
「確かに。ですが」
「死は絶対に人に訪れるね」
「如何なる場合であっても」
「そうだね。そういうものだからね」
「描く価値はあります」
 十字はこう先生に答える。そうしてだった。
 先生と共に部室を去り入り口で別れた。そのうえでだ。
 校内を歩いていく。その十字の前に。
 あの四人がいた。彼等はふて腐れた感じの顔で柄の悪い歩き方で廊下を進んでいた。彼等はその面白くなさそうな顔でこんなことを言っていた。
「おい、どうするよ」
「ああ、あの二人か」
「特に女の方だな」
「どうしたものかね」
「思うんだけれどな」
 菅がだ。その卑しさも出た顔で仲間達に言った。
「あの女もう一度俺等のおもちゃにしないか」
「ああ、戻ってきたんならそうだな」
「そうしてやるのがいいよな」
「じゃああいつのところに行くか?」
 今度は山岡が言った。
「今からな」
「いや、今もう時間ないしな」
「そろそろ授業だぜ」
 鳩山と一川が山岡の提案にだ。やはり面白くなさそうな顔で言う。
「俺達全員単位やばいしな」
「留年したら面倒だぜ」
「じゃあ放課後だな」
 山岡は二人の言葉にすぐに考えを変えてこう言った。
「放課後あいつ呼び出してな」
「ああ、体育館裏にするか?」
 菅がその呼び出す場所を言った。
「そこどうだよ」
「そうだな。そこがいいな」
 山岡は今度は菅のその提案に頷いた。
「放課後体育館裏にな」
「二人共呼んでな」
「思い知らせてやるか」
 こうした話をしていた。彼等は自分達の下卑た欲求を満たしそれ以上にその浅ましい不満を解消させようとしていた。だがその話は全てだ。 
 十字は聞いていた。彼は気配を消して全て聞いた。そうしてだった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧