| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

透明な宝

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
次ページ > 目次
 

第四章

「ああしてなの」
「ビー玉を大切にしていたんだ」
「そう、それでね」
 そのうえでというのだ。
「集めもしていたの」
「義春はまだ集めてないけれどね」
「そっくりよ」
 本当にというのだ。
「お祖父ちゃんとね」
「遺伝かな」
「好みが遺伝するか、いえ」
「いえ?」
「お祖父ちゃんと同じ好みなのね」 
 遺伝ではなくというのだ。
「これは」
「好みがなんだ」
「ビー玉見て凄く奇麗って言ったから」
 それでというのだ。
「遺伝じゃなくてね」
「そっちなんだ」
「そうかもね、けれど遺伝でも好みでもね」 
 そのどちらでもというのだ。
「私の好みじゃなくてもわかるわ、奇麗って思ったら」
「それならなんだ」
「それでね」
「集めてだね」
「大事にしたくなるのよ、それはお金じゃなくて」
 これの問題ではないというのだ。
「高いとか安いとかね」
「そうした問題じゃなくて」
「奇麗だと思うかどうか」
 このことがというのだ。
「問題なのよ、それでお祖父ちゃんと義春は」
「ビー玉が奇麗だとだね」
「感じたのよ、だから二人にとっては」
 まさにというのだ。
「ビー玉がね」
「奇麗なものだね」
「最高にね、それでね」
「義春もだね」
「これからビー玉を大事にしてくれるわ」
「あの子にとってとても奇麗なものだからだね」
「そうなるわ、なるべくしてなったわね」
 笑顔で言ってそうしてだった。
 佐緒里は義春がビー玉をいつも奇麗にして飾っているのを夫と共に温かい目で見守った。彼は成長すると彼の曽祖父がそうした様にビー玉を集めもした。そして常に奇麗だと言って飾り磨いて大事にしていった。彼もまた一生そうしていった。


透明な宝   完


                  2022・9・14 
次ページ > 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧