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星河の覇皇

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第八十三部第一章 防衛ライン到達その九

「そうした国はサハラにも多かったな」
「はい、国の存亡を賭けた戦争に勝利しても」
「人材をあまりにも多く失い過ぎ」
「その後の復興や発展が出来ず」
「亡んだ国もありました」
「人を粗末にする国は亡びるものだ」
 アブーは冷たい声で言い切った。
「そもそもそうした国に人はついてくるか」
「その時点で結論が出ていますね」
「そうした国には誰もついてこない」
「政府にも」
「それがどれだけ恐怖政治であっても」
「やがては滅びる、人が国家を形成するのだからな」
 それ故にというのだ。
「人が産業も行政も司法も立法も軍事も行なう」
「国家とは社会ですからね」
「その社会は人のものです」
「若し人がおらねば」
「国家はありません」
「そういうことだ、だから将兵はだ」
 その彼等はというのだ。
「いいな」
「はい、一人たりともですね」
「粗末にしてはならないですね」
「例え何があろうとも」
「出来る限りの命を救い」
「そうして戦うべきですね」
「その通りだ、主席も言っておられる」
 アブーもまた長兄である彼の名を話した。
「その様にな」
「流石主席です」
 幕僚の一人が鋭い声で述べた、その声にも声を出す表情にも媚びやそういったものは一切ない。完全に本音の言葉だった。
「人がなくてはです」
「国家はないな」
「独裁者がどれだけの権力を持とうとも」
「一人で国は成り立たない」
「左様ですね」
「だからだ、国家はだ」
 それはというのだ。
「人を護るべきだ、だから艦艇は追い付けなくなってもだ」
「人は連れていく」
「彼等は」
「そうしていきますね」
「見捨ててはならない」
 絶対にとだ、アブーは言った。そして彼もフラームも将兵達を見捨てることなく防衛ラインに向かっていった。
 その動きは決死のものだけあって迅速だった、それで追撃を行っているアッディーンも言うのだった。
「今のティムール軍に追いつくことは出来ない」
「左様ですね」
 ラシークが応えた。
「これでは」
「そうだ、敵も必死だ」
 そのティムール軍もというのだ。
「だからだ」
「彼等に追いつくことは無理ですね」
「速度はこのままでいくが」
 それでもというのだ。
「それはだ」
「無理として」
「考える、そしてティムール軍は防衛ラインもな」
 それもというのだ。
「整える」
「そうなりますか」
「敵の速度、そして既に防衛ラインの施設に入っているな」
「不眠不休で」
「それではだ」
 そうした状況ならというのだ。
「最早だ」
「防衛ラインの施設もですか」
「されてしまう、だが」
「それでもですね」
「そのことを前提にしてだ」
 そうしてというのだ。 
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