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同窓会の場所

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第二章

「今回の同窓会の幹事伊代ちゃんだぞ」
「伊代って尾久保さんか」
 松本はその名前を聞いて言った。
「あの黒髪ショートで小さかった」
「今ああなってるぜ」
 黒髪は長くなっていて背は小さいままだが胸が随分目立っている、垂れ目で優しい感じの顔立ちだ。
「結婚して名字は太田さんになってな」
「へえ、結婚したんだな」
「それでな」
「あの娘が幹事だからか」
「このお店になったんだよ」
「あの娘とどう関係があるんだ」
「あれっ、お前覚えてないのか」 
 この同級生は松本の今の言葉におやという顔になって応えた。
「そうだったのか」
「そうだったって何がだよ」
「伊代ちゃん中学でバスケ部だっただろ」
「バスケ部、そうか」
「そうだよ、吉田先輩とな」
 今この店のおかみの彼女と、というのだ。
「吉田先輩も結婚して名字変わってるけどな」
「世の中何かと変わるな」
「今は太田さんなんだよ」
「太田さんって」
 またこの名字を聞いてだ、松本は言った。
「ってことは」
「ああ、伊代ちゃんの旦那さんと先輩の旦那さんはな」
「親戚か」
「兄弟なんだよ、伊代ちゃんの旦那さんは弟でサラリーマンで」
 それでというのだ。
「先輩の旦那さんはお兄さんでここの板前さんなんだよ」
「そうだったんだな」
「バスケ部の時に先輩によくしてもらったらしいんだ」
「尾久保さんだった頃にか」
「それでな」
 さらにというのだ。
「旦那さんが兄弟同士でな」
「義理の姉妹になってか」
「さらに縁が出来てな」
 そうもなってというのだ。
「それでだよ」
「このお店を会場にしたんだな」
「同窓会のな」
「謎は解けたよ、縁か」
「そうだよ、しかし悪くないよな」
 同級生は卵焼きを食べつつ言った。
「ここのお料理美味いしな」
「お酒もな」
「だからな」
「ここが会場でもか」
「美味いならな」
 料理も酒もというのだ。
「それでいいだろ」
「そうだよな」 
 松本もそれはと頷いて好きなウイスキーを水割りで飲んだ。 
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