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展覧会の絵

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第十四話 泣く女その十二

「そして目と耳を置いておくよ」
「そうしてですね」
「そう。何かあればね」
 手を打つというのだ。こう言ってだ。
 十字は席を立った。そうしてだった。
 彼は学校に行った。そこでサッカー部と空手部のランニングをしているのを見た。朝の部活においてだ。それぞれの服を着て走っている。
 だがそこに彼等の姿はいない。一人もだ。
 その彼等を見ながら学校に入る。そして春香のクラスの前を通ると。
 彼女もいなかった。そのかわりに彼女のクラスメイト達の話が聞こえた。
「春香どうしたのかしら」
「何日も学校に来てないわよね」
「病気?」
「望君も来てないしね」
「二人共どうしたのかしら」
 彼女達は首を捻ってだ。眉をひそませながらひそひそと話をしていた。
「望君は前からだけれどね」
「それに春香もって」
「何でなの?これって」
「二人共ってちょっとないわよ」
「おかしいわよ」
 こう話す。そしてだ。
 十字はその話を聞いて彼女達の中に何食わぬ顔でいる雪子も見た。雪子はただ話を聞いて頷いているだけだ。ただそうしているだけだったがそれでもだ。
 その心配そうに見せている仮面の目は邪悪な笑みを浮かべていた。それを目に見せていた。
 それも見てだった。十字は自分のクラスに向かう。午前中は普通に授業を受けただけだった。
 だが昼にはいつもの屋上に出た。そこで先輩達に話を聞いた。先輩達はこの日も屋上でだべってそのうえでパンや牛乳を食べていた。十字はその彼等に空手部のことを聞いた。
「ああ、空手部?」
「あの部がどうしたんだよ」
「一年生の部員で道場の跡継ぎの部員がいましたね」
「ああ、そういえばいたな」
「そうだよな」
 先輩達は十字の話を聞いて顔を見合わせて頷き合った。
「江崎っていったか?確か」
「許婚もいたよな、同じ空手部でな」
「ああ、あの強い娘だよな」
 先輩達はまずは自分達で話す。それからだ。
 十字に顔を戻してだ。こう返した。
「で、その二人がどうしたんだ?」
「何かあったのかよ」
「最近元気がないそうですけれど」
「俺達空手部に詳しくないんだよな」
「悪いけれどな」
 先輩達は十字の問いに答えた。今回はこうした返事だった。
「けれどな。ツレに空手部の奴いるからな」
「そいつに話を聞いてみたらどうだ?」
「わかりました。それで後はサッカー部の人と料理部の人も紹介してくれるでしょうか」
 先輩達から情報を得られないと見てだ。十字は情報元を変えた。
「よかったら」
「ああ、いいぜ」
「じゃあ紹介するな」
 先輩達も十字の願いに対して快諾で応えた。そうしてだ。
 十字は先輩達にその日のうちにそうした部活の二年生達を紹介してもらい彼等から話を聞いた。そうして四人の情報を集めたのだ。同時に先輩達から別の四人の情報を詳しく聞いた。
「ああ、一川とかな」
「あの連中かよ」
「はい、彼等は普段は何処にいるのでしょうか」
 その遊び場についてだ。先輩達に尋ねたのだ。まずは。
「学校にいないことも多いですね」
「学校だったら体育館裏とかでだべってるけれどな」
「街だったらゲーセンにいることが多いみたいだぜ」
「体育館裏、そしてですか」
「ああ、街のゲーセンだよ」
「そこに結構いるぜ」
 そこだとだ。先輩達は十字に話す。
「店の名前は確か」
「あれだよ、ジャイアンツだよ」
 店の名前も出た。
「ほら、清原塾の近くにあるな」
「ああ、あそこか」
「名前それだったんだな」
「そうだよ。名前はな」
 名前だけでなく場所もわかった。十字にとっては思わぬ収穫だった。
 彼はその収穫に心の中で神に感謝した。そしてその感謝と共に先輩達にさらに尋ねた。 
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