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Fate/magic girl-錬鉄の弓兵と魔法少女-

作者:セリカ
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無印編
  第九話 絡み合う運命   ★

 初日から全男子生徒の敵と認識された俺だが、それなりに学校生活を満喫している。
 まあ、なのは達三人と一緒にいないと鬼ごっこが始まるので学校生活の中でもなかなか気が抜けない。
 もっとも所詮は小学生だし、この程度なら可愛いものだ。
 男子生徒諸君も真正面から来るのみで裏で物を隠す等の行為は行わないのというのも一因ではある。

 そんなこんなで転入して初めての週末の昼休みである。
 いつものようになのは達と食事をしていると

「士郎、今週の日曜空いてる?」

 といきなりアリサに尋ねられた。

「いきなりだな。どうかしたのか?」

 正直にいえば珍しい。
 学校ではよく話してはいるが校外で会う事は今までなかったし、無論誘われたこともない。
 それにすずかの話ではアリサもお嬢様とのことで習い事やら結構やっているはずだ。

「なのはちゃんのお父さんがコーチをやってる少年サッカーの応援に行くんだけど」
「士郎君も一緒にどうかなって思って」

 すずかとなのはの言葉になるほどと頷く。
 だがタイミングが悪い。
 今週末はやることが詰まっている。
 勿論、月村家の執事の仕事も休みをもらっている。

 ちなみ土曜日に街の魔力探知用の簡易結界の形成。
 日曜にかけて鍛冶場を作るつもりだ。
 裏に古びた小屋があったのでそれを一気に大改装するのだ。
 さすがに手が空きそうにはない。
 それに昨日、忍さんに銃器やらいろいろと発注もしている。
 支払いは俺が所持する宝石から支払ったが、これからのことを考えると銀細工のアクセサリーでも作った方がいいかもしれない。

「すまないな。今週は予定が詰まっている」

 せっかく誘ってもらって申し訳ないが今回は断らせてもらおう。
 魔力反応があった今、あんまり悠長に構えているわけにはいかない。
 しかもあれからも魔力反応は不定期ながらあるのだから余計にだ。
 それに現状かなり大きな魔力が発動しない限り、なかなか感知できない。
 そのため感知してからその場所に向かってももう魔力の持ち主はいないのだ。
 魔力の発生場所が家の近くなら話は別なのだが。

「はあ、まあ急だったから仕方がないけど、少し気にした方がいいわよ。
 あんた、学校が終わればすぐに帰るし、男子は仕方がないにしても浮いてるわよ」
「まあ、否定できないな」

 アリサの言うとおりだな。
 だがいくら身体に精神が引っ張られても今までの経験があるのだ。
 完全に年相応とはいかない。
 それに学校が終わってすぐに帰るのは執事のバイトの件も関係しているためだ。
 これも俺の生活に関わることなので手を抜くわけにはいかない。

「でもクラブも何も入ってないわよね? 結構誘われたでしょ?」
「まあ、家庭の事情としか言いようがないな」

 体育の授業の際に、すずかと同等の運動能力をかわれ男子達から色々誘われたのだが全部断っている。
 ちなみに、なのはの運動神経に関しては明言しないでおく。

「そんなに習い事とかしてんの?」
「そうだよね。すずかちゃん達も結構しているけど」
「アリサちゃん、なのはちゃん」

 アリサとなのはの言葉に、すずかが静かに二人の名前を呼ぶ。
 それだけで踏み込んではいけないと察したらしい。
 そのうち気付くことになるだろうが教える必要はないだろう。
 二人とも気にしそうだし。

「そういえばアリサ達は一体に習い事は何してるんだ?」

 俺の話はおしまいとばかりに話を変える。
 俺の意思が伝わったのか三人ともすぐに自分達の習い事の話になる。
 他愛のない話をしながら、俺達はのんびりとお昼を満喫した。


 そして、土曜日になり朝食を摂り、投影した木刀で鍛錬をして、結界の準備に取り掛かる。
 この作業、実は結構簡単だ。
 なぜならこの海鳴市に魔術師が俺一人だけという事が関係する。
 ぶっちゃければ、海鳴市の霊脈を一人で自由に使えるのだ。
 結界を張るという意味ではかなりやりやすい。
 もっとも街全体を覆うので街の太い霊脈に基点を最低十個作らないといけないので時間はかかる。

 というわけで昼前までかかり街に基点を設置して、俺の家の霊地を終着点になるように霊脈に魔力を少しだけ奔らせ魔力探知用の結界を作り上げた。
 これで街で魔力反応があれば察することができる。
 もっとも感知できるといっても、俺がこの街にいる間だけで街から出てしまえば感知できなくなるものだが。

 小屋の修繕は昼からという事ではおにぎりを握って食べる。
 そんなときに石窯が無性に気になった。

「……石窯を使ってみるか」

 思い立ったが吉日。
 今晩は石窯を使いパンを焼く。
 そういうわけでフランスパンの下拵えをしておく。
 今日は無理だが、そのうち色々焼いてみよう。

 そして昼食を食べたら、裏の小屋の修繕を行い始める。
 修繕する個所はもうチェックしているので作業に迷いはない。
 一部の床や屋根が傷んでいる程度なのでそれほどかからずに修繕は終わりそうだ。

 小屋の修繕は俺の予想通りすぐに終わった。
 それからは炉を作り、砥ぎ場などの準備をしていく。

 だが何が大変って鍛冶場の道具を整えるのもだが、小屋の中や炉の中に魔法陣を描くことだ。
 なにせ魔剣を作るんだから霊地から魔力を汲み上げる必要がある。
 そして、剣を鍛える炎も汲み上げた魔力を燃料を使うので炉の中にはそれ用の魔法陣を描く必要がある。
 そのため小屋の中心に魔力を汲み上げる魔法陣を、そこから伸びる様に炉や砥ぎ場などに陣が描かれる。
 大きさは大したことないのだが細かい。
 なにせ小屋の中の蛇口から出る水まで魔力を纏わせる。
 つまりあらゆるモノに魔力を纏わせ、それを使い剣を鍛える。
 それこそ魔剣を鍛える魔術師の鍛冶場なのだ。

 それにこの魔法陣が乱れると魔力が乱れて半端な剣しか出来ないので慎重に慌てず丁寧に魔法陣を描いていく。

 でなんとか一日で形にはなった。

「ふむ。なんとかなるものだな」

 汗だくになったのでお風呂に入って時計を見ればすでに夜の八時。
 さすがに空腹なので、下ごしらえしていたフランスパンを焼き始める。
 さらに挽肉があるのでハンバーグと粉吹芋を作る。
 ハンバーグのソースはデミグラス。
 さらに鯛のマリネをお皿に盛り完成。

「いただきます」

 少し遅くなった夕飯を食べて、ソファーで紅茶を少し楽しみ、少し早いが眠りについた。


 そして、次の日には軽く鍛錬をして朝食を摂り、まだ作業が続く。
 なにせ今日のが本番。
 小屋の中の魔法陣は完成している。
 もちろん炉も砥ぎ場も完成している。
 なのであと必要なモノは一つのみ。
 だがこの最後の一つが大変なのだ。

 これから作るのは循環の結界である。
 魔剣の鍛冶場とは先に語ったように汲み上げた魔力を全てに纏わせる。
 だが、ここに問題がある。
 魔剣を鍛え精製するための魔力が淀むと上質の魔剣は出来ない。
 よって魔力が溜まらないように、淀まないように、常に循環させる必要がある。
 何が問題かというとこの結界の大きさである。
 今回描く循環用の魔法陣は小屋を中心に半径二メートルの大きさである。
 それをアゾット剣で描いていく。
 ただもくもくと

 もくもくと

 もくもくと

 もくもくと描き続ける。

 そして

「で、出来た」

 作業にかかること約六時間。
 魔法陣が書き終わる。
 で描き終わったら、今度は溶かした宝石を流しこんでいく。
 これで魔法陣は完成した。

 魔法陣の細かいところを確認していく。
 問題はない。
 なら最後の仕上げだ。
 起動させる。

「―――Anfang(セット)

 俺の詠唱と同時に魔法陣がぼんやり光り、そして見えなくなる。
 そして、炉には自然と炎が生まれ、魔力は循環していく。
 防音、認識阻害の結界は俺の家の周りにあるので小屋の周りに張る必要もない。
 防音に関してはこれから同居人が増えたら別だが、今は不要だ。
 小屋の中、外と最終確認を行うがどこも問題ない。
 うまく魔力も循環しているし、炎の魔力も申し分ない。
 無事完成したことに満足する。
 だが

「……二日でそれも一人でするものではないな」

 そのまま後ろに倒れこむ。
 正直疲れた。
 魔法陣を描くのはかなり神経を使う。
 それも約六時間地面を這うように黙々と描き続ける。
 さらに二時間ほどかけて描いた魔法陣に溶かした宝石を流し込むのだ。
 学校に入る前に作っておくべきだったと少し後悔する。

「ところで一体今何時だ?」

 朝の七時には作業を開始したはずなのだが……
 太陽の位置もかなり高いというかもう昼を過ぎているだろう。
 午後の三時ぐらいか?
 とりあえず汗を流して、夕飯の買い物に行くことにしよう。
 夕飯の材料がない。
 そんな事を考えながら浴室に向かう。

 汗を流し、一杯の牛乳で喉を潤す。
 とその時

「魔力! それもかなりでかい」

 コップを置き、小屋に駆け込み、先日用意した戦闘用のズボンとシャツ、手袋、ブーツを身につけ、赤竜布のコートを纏う。

 そして、小屋から飛び出し一気に跳躍し、発生源を目指す。
 だが妙だ。
 魔力がどんどん広がっていく。
 どういう事だ?

 そんな疑問もビルの上から街を見て理解した。
 巨大な樹が街を支配していた。
 とその時、もうひとつ魔力を見つけた。
 左1kmのところだ。
 ちなみに死徒になり強化の魔術を使わなくても2kmぐらいまでなら十分見ることができる。
 そこに立っていたのは

「……なのは?」

 肩にイタチのような動物を乗せて杖のようなものを持ったなのはだった。
 なのはが杖を振ると周りに魔法陣が出来あがる。
 あれを見るとあれだ。
 カレイドルビーなる呪われたマジカルステッキを思い出す。
 やめよう。
 あれは思い出してはいけない。
 呪われたマジカルステッキの記憶を封印し、なのはを見つめる。
 なのはの杖に魔力が集まり、先端から小さな魔力光がいくつも放たれる。

「なるほどコアを探しているのか。それにしてもあれは魔術ではないな。
 肩に乗ったイタチと話していたようだが使い魔か?」

 正直疑問が多すぎる。
 あの魔術に関しても構成が違いすぎる。
 なのはの正体も気になるので、この樹の処理は任せるとしよう。
 もっともこの樹の処理が終わったら少し話す必要はあるか。

 しかし、知り合いが相手となると隠す必要があるな。
 少なくともまだ正体を知られたくはない。
 そうとなると顔全体を隠す必要もあるな。
 そんな事を思いつつあるものを投影しておく。




side なのは

「リリカルマジカル ジュエルシードシリアル10……封印!」

 レイジングハートから放たれた光はジュエルシードを捕え、ちゃんとレイジングハートに回収された。
 それと同時にレイジングハートから蒸気が排出される。

「ありがとう、レイジングハート」
「Good Bye」

 私の思いに応えてくれたレイジングハートに感謝し、赤い宝石を握りしめる。
 無事に封印できた。
 だけど目の前にあるのは夕焼けに染まる壊れてしまった街。
 気付いていたのに、気のせいだと思ってしまった。
 私がちゃんとしていないから。
 それがただ情けなく思えてしまう。
 そんなときいきなり私とユーノ君の周りに細い剣が突き刺さる。

「なにっ!」
「後ろだ!」

 咄嗟の出来ごとに固まることしかできない私。
 それでもユーノ君の言葉で慌てて振り返る。
 後ろには私たちのいる場所より少し高いビル。
 あそこの屋上から投げたのかな?
 剣が斜めに突き刺さってるからそう予想してみる。
 だけどそんなことを考えている暇なんてあるはずがなかった。

「無駄な抵抗はしないことだ。無益な殺生は好まん」

 さっきまで私達が向いていたほうから声がした。
 慌てて再び振り返る。
 塀の上には上下黒の服に、黒の手袋をし、赤いコートとフードを纏って、白い髑髏の仮面で顔を隠した子がいた。
 そして右手には指と指の間に三本の剣が握られていた。

 でもなぜかその子を見た時、私は恐怖もなにも感じなくて、ただ寂しそうに見えた。

 だって

 赤い月の光に染まる

 数えるのが馬鹿らしく思えるくらいの剣が突き刺さった荒野が見えたから

 
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