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Fate/magic girl-錬鉄の弓兵と魔法少女-

作者:セリカ
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無印編
  第八話 新たな出会いと学生生活   ★

 先日、すずかの専属執事という仕事の初日を迎えた。
 学校から帰ってきたすずかを

「おかえりなさいませ。すずかお嬢様」

 と出迎えたら、すずかが固まった。

 もっともすぐに復活したのだが、かなり驚かれた。
 それにしてもルヴィアの時といい、アルトの時といい、俺は執事をするという運命にあるのだろうか?
 人生の中で執事という仕事に関わる確率の高さに、そんな事を思ってしまう。

 もっとも今回は執事の仕事は給料もかなりいいので現金をあんまり持っていない俺としてはかなりありがたい。
 だが残念ながらかなり厄介な条件が付いている。
 しかもその厄介な条件が今日からである。

 ……そろそろ現実逃避もやめにしよう。
 内心ため息を吐きつつ、教室を見渡す。

「今日はみなさんに新しい友達を紹介します。では自己紹介してね」
「はい。衛宮士郎といいます。
 趣味は機械いじり、特技は家事全般です。
 これからよろしくお願いします」

 クラスメイト達からは拍手で迎えられた。
 というわけで人生二度目の小学校である。

 ちなみに桜達はよくガラクタいじりと言っていたが、ガラクタではないのだ。
 まあ、刀剣観賞や自己鍛錬も趣味なのだが小学三年生の趣味ではないので発言は控えておいた。

 改めて俺の人生を振り返ると、吸血鬼になったりと色々なことがあった。
 だからある程度のことは覚悟していた。
 だが今回のことに関しては自分の予想の斜め上をいっている。
 もっとも学費も月村持ちなのでこちらの懐は痛まないのだが、悲しいものがある。

 それにしても偽造戸籍の子供を私立の学校に入学させ、さらにすずかと同じクラスだ。
 本当にどれだけ手をまわしたのだろうか。

「じゃあ、衛宮君の席はあそこね。
 教科書がまだ届いてないから高町さんに見せてもらってね」
「わかりました」

 先生の言葉に返事をして席に着く。
 さすがに急な入学だったためか教科書が間に合わなかったらしい。
 教科書を見せてもらうために机を寄せあう。

「高町なのはです。よろしくね」



「衛宮士郎です。改めてよろしく。高町さん」
「にゃはは、なのはでいいよ」
「そうか? なら、なのはと呼ばせてもらうよ。
 俺も士郎でいいから」

 小声でなのはが声をかけてくれたので堅苦しくなり過ぎない程度に返事をする。

 それにしても聞き覚えのある名字が出てきたな。
 高町なのは、恭也さんと美由希さんと同じ姓。
 どこか恭也さんや美由希さんと似た感じがあるから二人の妹だろうか。

 それにしても美由紀さんも綺麗な人だったが、なのはもかなり可愛い子である。
 将来有望なのはほぼ間違いないだろう。
 だがそれよりも俺が気になることがある。

 それが遠坂を上回る膨大な魔力。
 恭也さんは魔術に関しては知らないと言っていた。
 なら単純になのはに素質があるというだけなのだろうか?

 それに最近妙なこともある。
 本当に魔術を使わない戦闘の事を考えて、銃のことを忍さんの頼んだ方がよいかもしれない。

 俺が最近やけに警戒する原因となる事の起こりは四日前。
 突如この世界に来て初めて他人の魔力を感知したのだ。
 だが一瞬という事もあり、結局魔力の持ち主と遭遇することは出来なかった。
 そして、三日前の夜に再び魔力を感知したのだ。
 武装を整え、魔力反応があった場所に辿りつくと壁は壊れ、アスファルトは陥没していた。
 どう考えても戦闘の跡。

 さらに二日前には俺が結界強化のために地下室にこもっている間に何らかの動きがあったのか、海鳴市の神社の霊地に妙な淀みがあった。
 ここまで集中して反応や痕跡があると本格的にこの街に魔力感知のための細工をする必要がある。

 現在の状況に内心ため息を吐きつつ、授業を聞く。
 いまさら小学生の授業を聞いたところで理解が出来ないところは特にない。
 だが俺が過去に小学校で受けていた授業よりはるかにわかりやすい。
 さすがは私立の学校といったところなのかもしれない。

「士郎君、ここの範囲はわかる?」
「ああ、大丈夫だ。ありがとう」

 笑顔で返事をするとなぜか顔を赤くして向こうを向いてしまった。
 どうかしただろうか?
 なのはの行動に首を傾げつつ、無事に授業は終了した。

 そして授業が終わり、昼休みになると同時に俺は洗礼を受けた。
 まあ、転校生によくある質問攻めだ。
 授業と授業の合間の休みは時間が短いため皆昼休みを待っていたようだ。

「前はどこに住んでたの?」
「イギリスのロンドンだ」
「衛宮君って日本人だよね?」
「ああ、髪の色が変わってるけどね」

 などなど多数の質問であった。
 ちなみにロンドンに住んでいたというのは元の世界の戸籍上の話である。
 紛争地帯を巡っていたせいで正確な自分の位置はよくわからないが戸籍はイギリス住まいのままであったはずだ。
 髪は投影の使いすぎと死徒化という急激な肉体変化によるものだ。

 もっともあまりにも質問が多く、昼休みがつぶれると危惧したのだが、なのはの友達である、アリサ・バニングスさんが助け出してくれた。
 そして現在、すずかとなのは、バニングスさんと昼食中である。

「それにしても大変だったね」
「まったくだ。ここまで騒がれるとは思わなかったよ」

 俺とすずかの会話に二人が不思議そうな顔をする。

「なに? 二人って知り合い?」
「まあな。この学校もすずかのお姉さんの紹介だしな」
「へえ」
「それにしてもバニングスさんのおかげで助かったよ」
「アリサでいいわよ。なのはのことも名前で呼んでたみたいだし」
「ならそうさせてもらうよ」

 すずかとなのは、アリサの席は近いから俺となのはの小声での会話が聞こえていたみたいだ。

「でもこれから大変よ。すずかもなのはも男子から人気が高いから」
「アリサちゃん!」
「そ、そんなことないよ」

 アリサの言葉になのはもすずかも驚いた顔をするが、まあ当然のことだろう。
 穂群原に通っていた時に、遠坂と桜の二人と一緒に登校した時など凄まじかったの一言だ。
 なにせ学校の男子という男子が俺の命を狙って学校全体での鬼ごっことなったのだ。
 さすがに小学校ではありえない……と思いたいが

「アリサの言う事ももっともだが、アリサだって可愛いから人気あるだろ?」
「え? あう……」

 ん? アリサの顔が一気真っ赤だが大丈夫だろうか?
 アリサのそばに寄り、額をくっつける。

「「「なっ!」」」

 三人が固まって何やら口をパクパクさせているが、今は放置。
 少し熱いかな?

「な、なにしてんのよ!」
「なにって、顔が赤いから熱を計っただけだが?
 少し熱いが大丈夫か?」

 俺の言葉になにやらなのは達が集まってひそひそと話をし始めた。

「ねえ、士郎君って」
「うん。たぶん恭也さんと同じだと思うよ」
「っていうかそれ以上でしょ!」

 よく聞こえないので俺としては首をかしげるばかりであったが、無事に昼休みは終わりを迎えた。
 で四人で教室に戻るとそこは異界であった。

「「「「「「「「「「「え~み~や~!!!!」」」」」」」」」」」

 幽鬼のような虚ろな瞳をして、身体がゆらゆらと揺らしながら俺の方に集まってくる者達。
 そして、俺の名を怨念を込め呼ぶ声。
 忘れるはずがない。
 その姿、その声、穂群原での鬼ごっこの時に男子の姿と声そのもの。

「っ!」

 弁当箱を自身の机に放り投げ、全速でその場で反転。
 一気に体勢を低くし、初速から最高速で駆ける。

「「「「「「「「「「「え~み~や~!!!!」」」」」」」」」」」

 だが教室の扉も幾人もの男子で塞がれている。
 逃げ場はない?
 まさか、逃げ場はまだある。
 空いている窓から教室から廊下に飛び出し、そのままの勢いで壁を蹴り、天井を駆け抜け、男子の包囲網から抜け出す。

「逃がすな!!」
「捕まえて吊るしあげろ!!」

 後ろからは小学生とは思えない叫びが聞こえてくる。
 あの幽鬼のような瞳で全速力で駆けてくる姿はまるで死徒のようだ。
 ってそんな呑気な事を考えている場合ではない。
 昼休みが終わるまでおよそ十五分。
 その間逃げ切ってみせる。

 そして、俺は無事に生き残った。
 ちなみに放課後はなのは達と一緒に帰ることになったので鬼ごっこは起きなかった。

 こうして俺の人生二度目の小学校の初日は騒々しい中なんとか終えたのである。 
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