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おぢばにおかえり

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第七十一話 詰所の中その五十二

「それじゃあ阿波野君が、だけれど」
「それでもですね」
「それなら仕方ないね、まあ焦る状況でもないし」
 それでというのでした。
「頑張ってね」
「僕がですね」
「このことだけは」
「まあせめて高校を卒業するまでは」
 また私の方を見て言います、それが本当にわかりません。
「そうしたことは」
「阿波野君も奥手なんだね」
「まあそれはその」
「千里ちゃん言ったらどうかな」 
 ここで大教会長さんの弟さんの次郎さんが言ってきました、いつも詰所の事務所におられるといいますか詰所といえばこの人みたいな感じです。
「是非ね」
「私が?」
「そう、阿波野君にね」
「私が何を言うんですか?」
 それが本当にわからないので聞き返しました。
「一体」
「ああ、それがわからないんだね」
「どういうことなのか」
「まあわからないならいいけれどね」
「そうですか」
「ただ千里ちゃんも奥手で」
 それでというのです。
「阿波野君もなんだね」
「奥手ってこの子結構言いますけれど」  
 私に対してはです。
「何かと」
「何かされたかな」
 次郎さんは私に笑って聞いてきました。
「言われる以外に」
「それは全然ないです」
 それも全くです。
「触れたことも」
「触れるなんてとんでもないですよ」
 新一君の今の言葉は全力で否定するものでした。 
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