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星河の覇皇

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第八十二部第三章 国債の発行その二十五

「お好きではない様です」
「そうなのかですか」
「ですがそれでもです」
「今宵はですね」
「ご覧になられるとか、そして」
「好きでない作品もですね」
「そこに理由があるなら」
 観なければならないというのだ。
「笑顔で歌劇場に入り」
「そして観る」
「そうするものですね」
「それもまた、ですね」
「エウロパ貴族でありますね」
「全くです」
 二人でこうした話もした、そうしつつケーキとワインの残りを食べて夜は歌劇を楽しんだ。その同じ時に。
 ケベック王はペレアスとメリザンドを観ていた、だが。
 フランス語のその歌劇を観つつ隣にいる王妃に話した。
「フランス語だね」
「はい、昔の」
 王妃は王に答えた。
「ケベックでも使われている」
「フランス語だね」
「その歌劇ですが」
「随分違う感じがするね」
 王は王妃に述べた。
「当時のフランス歌劇は」
「ではカルメンもですね」
「ホフマン物語やロミオとジュリエットもだよ」
 そうしたフランス歌劇の代表作達もというのだ。
「どうも」
「陛下にとってはですか」
「今のケベック語と違うからね」
 フランス語と、というのだ。
「本当に」
「だからですか」
「聴いていて何を言っているかわかるし」
「劇の内容もですね」
「理解出来るけれど」
 それでもというのだ。
「違う言語の様にもね」
「思えますか」
「古典の言葉だね」
 今自分達が聴いている言葉はというのだ。
「そう思えるよ」
「どうしてもですね」
「これはやはり」
 王は考える顔になって述べた。
「私が古典慣れしていないせいかな」
「陛下は古典にも通じているのでは」
 実は学問好きなことでも知られている王だ、食事だけでなく学問も好きで国家元首としてそちらを奨励していることでも有名なのだ。
 それでだ、王妃も言うのだ。
「私よりも遥かに」
「そうだけれど何かこの時代は」
「十九世紀の言葉は」
「どうもね」
「左様ですか」
「まだ学問が足りないのかな」
 王はこうも思った。
「まだ」
「そう思われますか」
「どうもね」
「私はそうは思いません、普段使う言葉は」
 それはというと。
「慣れていても」
「当時の言葉は慣れていないので」
「聴いて理解出来れいればかな」
「陛下が感じられているのは違和感ですね」
「それだよ、フランス語だというのに」
 ケベックの公用語の一つだ、銀河語だけでなくこの言語と英語がケベックで公用語とされている言語なのだ。 
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