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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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イエローオーブ

<エコナバーグ>

日が落ち星空が天空を支配する頃、アルル達は約束通りエコナの屋敷へ訪れて、夕食を共に戴いている。
このままエコナの屋敷に宿泊させてもらう予定の為、既に割り当てられた部屋に各々荷物を置いて、ラフな恰好で食事を楽しんでいる。
勿論話題は、今日のちびっ子喉自慢大会だ。

「可愛さで言えば、マリーがダントツでしたから!」
ウルフはこの台詞を何度と無く繰り返してる…
「分かったわよ!しつこいわねぇ…」
いい加減ウンザリなアルルが、ちょいキレ気味に言い放つ。

「でも、今回は喉自慢大会だからねぇ…歌唱力が物を言う大会だ!ミスコンじゃないんだよ」
ウルフの気持ちを逆撫でするかの様に、リュカが正論を言い放つ。
「そんなこと関係ない!マリーが1番だった!」
「ウルフ君………最近君は義父に似てきたぞ………もしかして、実は血が繋がっているのか?」
暴走気味のウルフに、冷静に突っ込みを入れる義兄ティミー。
アルルやカンダタも笑いながら頷いている。

「実の息子が、実の息子らしくないから、俺がそれを補完してるんです!ちょっとは責任を感じて下さいよ!」
まさかの切り返しに、開いた口が塞がらないティミー…
まるで父親と会話している気分になる。


「まぁまぁ…今度参加する時は、ウチから多少手心を加えるようにと言うとくから…」
「「そんな事はダメ!」」
エコナは好意のつもりで言ったのだが、それをリュカ・ビアンカ夫妻が声を揃えて拒絶した!
先程の和やかな表情とは変わり、真剣な顔でエコナを睨む夫婦。
「実力が伴わない評価は、自分も他人も不幸にする!」
「そうよ!今回の評価は、マリーの実力に見合った物だったわ!」
誰もが唖然とする2人のコメント…

「リュ、リュカはん等って…結構厳しい親なんやねぇ…」
誰もが、リュカは子供に甘いと思っていた…
しかし考えてみれば、ティミーもマリーも王子である事や王女である事を隠し、平民の子供達と共に市井の学校へ通わされていたのだ。
本人の能力以外の要因で、評価をされないようにと、リュカは気を使っていたのだ。

「努力せずに得た地位では、向上心を持ち得ない。一生懸命に頑張って優勝したアルエットちゃんは、今後も歌の練習を続けるだろう。来年の彼女は、今日よりも歌が上手くなっている!」
「それは分かるけど…自分の子には、苦労させたくないやんか!?」
「無用な苦労ならば、親として全力で取り去ろうとは思うけど…するべき苦労は与えるべきだよ。大して上手くもないのに、周りから『歌が上手い』と持て囃される娘を、僕は見たくない!下手な歌に酔いしれている娘なんて………」
ビアンカがリュカを見つめ深く頷く。

「はぁ…やっぱ、リュカはんの生き方は勉強になるわぁ~…」
エコナはリュカの生き方に感嘆の溜息を漏らしながら、テーブルの上に黄色い宝玉を1つ置く。
「エコナ…これって…」
アルルが期待を込めて彼女に尋ねる。

「せや…アルル達がお探しの『イエローオーブ』や!結構な値はしたけど受け取ってや」
「ありがとうエコナ!これでバラモス城へ行く事が出来るわ!」
アルルはイエローオーブを両手で持ち、心からエコナへお礼を告げる。
「でな…別に交換条件ってわけやないんやけども…リュカはんにお願いがあるんや…」
エコナから改まって話しかけられるリュカ…
即座に顔を曇らせる。
「何…?面倒な事言われるくらいなら、イエローオーブは要らないよ!」
先程までの立派な子育て感を台無しにする台詞は、流石リュカであろう。
「ちゃうねん!交換条件やない!オーブはもうアルル等の物やねん…如何なる理由でも、返してもらうつもりは無いねん!」
「じゃ、何?」
愛人からのお願いに、邪険な態度の男…
何故にもてるのだろうか?

「先日な…イシスの女王自ら、この町を視察に来たんや。その時な…自慢されたんや…女王様の娘を…『見て見て!私とリュカの、可愛い娘よ!』って………ウチ、めっちゃ羨ましくて!だからウチにもリュカはんとの子供が欲しいねん!」
「「「「…………………………」」」」
誰もが言葉を失う…
それくらい突飛なエコナの願い…

「う~ん………まぁいいけど………早速、今晩頑張ってみる?」
軽い…凄く軽い口調で了承するリュカ。
「ちょ…父さん!そんな非道徳的な事を簡単に了承しないで下さい!」
当然ながら真面目っ子ティミーが強く反対する。

「何?簡単じゃ無ければ良いの?難しく考えた結果なら良いの?」
「そ、そう言う意味では…」
「それに、もう慣れろよ!お前、腹違いの妹が何人居ると思ってるの!?」
最早、皆諦めムード…
そんな中でティミーだけが頑張ってはいるのだが、リュカの非常識ぶりは覆らない。
「か、母さんからも何か言って下さいよ!」
何とか母の力を借りようと、ジト目で睨むビアンカへ縋る息子。
「………」

「大丈夫だよビアンカ…エコナが終わったら、直ぐに君の番だから!足腰立たなくなるまで頑張っちゃおうね!」
何時もの様に明るい口調でウィンクするリュカ。
そんなリュカの台詞に黙って頷く妻…もう彼女の頭の中は、足腰立たなくなる事への期待でいっぱいの様子。
「ちょ…」
尚も食らい付こうとするティミーの、服の裾を引っ張りマリーが止める…
声には出さず口だけを動かし「もう諦めて」と兄を止める…



エコナの屋敷に勤めるメイドの後日談だが…
「翌日のお屋敷は、至る所で独特の香りを漂わせてましたわ…エコナ様の寝室以外も…複数のお部屋から…」



 
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