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星河の覇皇

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第八十二部第三章 国債の発行その十七

「連合はギリシア神話や北欧神話、聖書の獣ですね」
「巨大な、ですね」
「テューポーンやヨルムンガルド、そして」
 ローエンハイムはさらに言った。
「あの七つ首の赤い竜」
「サタンともされる」
 実際はローマ帝国を意味するとされている、ヨハネの黙示録に出て来るこの獣は当時キリスト教最大の敵であったローマ帝国であったのだ。七つの頭がローマの七つの丘で十本の角がカエサルからの十人のローマ皇帝だったというのだ。
「あの竜ですね」
「はい、とかくです」
「連合は巨大な獣ですね」
「それも強大な」
「そして我々は」
 シェリーニは赤ワインを飲んでから言った。
「その獣を倒す存在ですね」
「テューポーンならゼウスであり」
「ヨルムンガルドならトールであり」
「そして竜ならば主です」
 そうなるとだ、ローエンハイムも応えた。
「そうなります」
「左様ですね、やはりです」
「連合は巨大な獣で」
 それでというのだ。
「我々はです」
「獣を倒す英雄ですね」
「そうなりますね、そういえば」
 ローエンハイムはステーキを食べつつさらに話した。
「昔からそうした絵がエウロパでは多いですね」
「エウロパに見立てた騎士や英雄が連合を見立てた巨獣を倒す」
「そうした絵画が多いですね」
「他の創作でも」
「左様ですね」
「絵画としてです」
 シェリーニはその絵の話をさらにした。
「芸術センスがあれば」
「言うことはないですね」
「ですが」
 それでもというのだ。
「これがセンスがない輩がです」
「芸術として何かを創作しても」
「そこに悪意だけが強ければ」
「もうガラクタが出来ます」
 芸術作品ではなく、というのだ。
「それだけで」
「左様ですね」
「何でも芸術ではなく」
「芸術でも何でもない」
「ましてや表現の自由でもない」
 その範囲に収まる様なものでもないというのだ。
「只の悪意の塊で」
「ガラクタですね」
「そうでしかないものがです」
「時として作られますね」
「はい」 
 ローエンハイムはその通りだと答えた。
「時には他宗教は自身が嫌いな個人を誹謗中傷する」
「そうでしかないものがですね」
「作られ」
「そして醜悪なものを人に見せてしまいますね」
「芸術センス以前に」
「それがあるなし以前ですね」
 シェリーニはステーキをまた食べた、ただソースがかけられているだけでなく最高級の肉の上にフォアグラもある。
 そのフォアグラを食べつつローエンハイムに話した。
「悪意のみですと」
「人には悪意がありますが」
「そこをどう芸術に昇華するか」
「ただ肖像画を引き裂いて焼いたり」
「ありましたね、過去には」
「人の顔を作って靴で踏ませるなぞ」
 その様なものはというのだ。 
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