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展覧会の絵

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第十話 思春期その九

「それでもね。君は救われるよ」
「自棄になったら駄目だろ」
「その子が例えそうなっても神の愛はそれよりも遥かに大きなものだから」
「そういえば今さっき無限だって言ったよな」
「そう。だからこそね」
「俺も救われるってのかよ」
「そう。心に善きものを持っている人はね」
 救われる、そうなるというのだ。
「だから安心していいよ」
「だといいけれどね」
「そう。そして」
 そのうえでだというのだ。
「君は君の本心に従うべきだよ」
「よくわからねえこと言うな」
 望はここまで聞いてだ。眉を顰めさせて首を捻った。
「何だよ。救いとか本心って」
「やがてわかるよ。ではね」
「ああ、祈ってくれるんだな」
「そうさせてもらうからね。ではね」
 ここまで話してだ。そうしてだった。
 十字は二人の前を後にした。その昼は静かにだ。二人と会ったのだった。
 だが彼がそうしたのは彼等に対してだけではなかった。この日の放課後にだ。
 彼は今度は空手部の道場に向かった。そしてその中にはだ。
 一番はじめに来て稽古をはじめようとしている猛と雅がいた。無論二人共黒帯の道着を身に着けている。その二人に対してもだ。十字は無表情で言ってきた。
「もう稽古ははじめるのかな」
「あっ、確か君は」
「美術部の」
 二人もだ。十字に顔を向けてこう言った。
「佐藤十字君だったかな」
「イタリアから転校してきた」
「そうだよ。僕の名前は佐藤十字」
 彼からも答えた。
「覚えておいてくれるかな」
「というか。君有名人だから」
「知っているわよ」
 こう返す二人だった。やはり十字はその名をよく知られている。
 だが彼はそのことにどうも思わずだ。こう言うのだった。
「実は僕がここに来たのはね」
「絵かな」
「その題材を探してなのかしら」
「それもあるよ。ただね」
「ただ?」
「ただっていうと?」
「少し気になることがあったんだ」
 こうだ。二人に対して言うのだった。
「それでここに来たんだ」
「気になることって一体」
 十字のその言葉を聞いてだ。猛が首を捻った。
 そしてそのうえでだ。こう十字に尋ね返したのである。
「何なのかな」
「君の空手だけれどね」
 十字はその猛に対して言う。
「この前偶然見させてもらったよ」
「あっ、そうなんだ」
「うん。それでだけれど」
「よくね。言われるんだよね」
 困った顔になってだ。猛はこう十字に話す。
「心が弱いからそれが拳に出てるって」
「心が。だね」
「そうなんだ。だから気をしっかり持てって」
「私もいつも言ってるのよ」
 雅もここで十字に、そしてその猛に言ってきた。
「猛にないのは心だって」
「そう。気が弱いんだね」
「そうなのよ。腕はそれなり以上なのよ」
 雅は十次にもこう話す。
「それなのに。気が弱いから」
「大丈夫だよ」
 だがここでだ。十字はこうその困った顔で話す雅に対して告げた。 
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