| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第百二十八話 一同、泉で泳ぐのことその三

 その中でだ。幻庵は言うのだった。
「肉を焼いてすぐにこれだケ」
「しかも服着たままでだからな。着衣での水泳も大事だってな」
「全くキムの旦那もジョンの旦那も相変わらずだぜ」
「何の情け容赦もないでやんすよ」
 チャンとチョイも泣きながら泳いでいる。
「ったくよ、俺達も肉食いたいぜ」
「折角の骨休めになると思ったら全然違ったでやんすよ」
「まあ今更言ってもな」
 どうかとだ。山崎も泳ぎながら言う。
「仕方ないからな」
「そうなんだよな。旦那達の際限のスパルタは変わらないからな」
「滝だけで済めばいいでやんすが」
 チャンとチョイが言うとだ。言ったそばからだ。
 上からだ。岩なり流木なりが落ちて来た。
 それを見てだ。山崎は思わず叫んだ。
「おい、殺す気かよ!」
「旦那達は本当に半端じゃないぜ!」
「あっし等ここで終わりでやんすか!?」
「死にたくなければ岩や流木を砕け!」
「そうして進むのです!」
 そのキムとジョンも来た。彼等も何時の間にか服を着てそのうえで滝を昇っている。何故か二人はその滝をごく自然に進んでいっている。
 そうしながらだ。彼等はチャン達に言うのだった。
「私達もそうする!」
「こうしてです!」
 二人はそれぞれ滝から飛び出てだ。滝の水面から並行にだ。
 蹴りを放ち前から来た岩と流木を砕く。そのうえでだ。
 何もなかった様に滝に戻りだ。泳ぎを再開しながら彼等に話す。
「こうするのだ。わかったな」
「では先に進みましょう」
「この連中冗談抜きでオロチよりやばいだろ」
 そのオロチの血を引いている山崎も唖然となる。
「っていうか今何やったんだよ、今」
「最早この二人に常識は通用しないケ」
「ただひらすらしごく鬼だな」
 幻庵もアースクェイクも言葉もない。
「わしにしても無理だケ」
「しかもこの滝ってな」
 アースクェイクは上を見上げた。するとだ。
 その滝の上にだ。さらにだった。
 滝が見えていた。その直角の滝が何段も続いている。
 それを見てだ。彼等は言うのだった。
「何段あるんだよ」
「というかどうなってんだ?この山」
「無茶苦茶にも程があるでやんす」
「うむ、現地の人に御聞きしたところだ」
 キムはまた岩を砕いた。滝を泳ぎながら半月斬を出して砕いたのだ。
「三十段ある」
「百メートルの直角の滝が三十段です」
 ジョンも話す。
「それだけある」
「そこを全て昇るのです」
「わかったな。では頂上まで昇るぞ」
「そうしますよ」
「死ぬな、今度こそ」
 臥龍は真顔で言った。
「流石にこれは無理だろ」
「ああ、もう諦めたぜ」
「あっし等の命は今日で終わりでやんすよ」
 チャンもチョイも完全に今の人生を諦めた。今度こそ死ぬと確信したのだ。
 だが督戦隊も一緒にいてはどうしようもなかった。彼等はだ。
 滝を昇っていく。そうして岩や流木を受けているのだった。
 そんな彼等を泉から見ながらだ。際どい、胸が露わになっている紫のワンピースの黄蓋がだ。こんなことを言ったのだった。
「相変わらずえげつない修業じゃのう」
「あれ、死ぬでしゅよ」
 彼女の隣にいるチンも応える。
「一歩間違えなくてもそれこそ」
「キムとジョンはいつもああしておるが何を目指しておるのじゃ?」
「悪人の更正でしゅ」
「どう考えてもしごきの為のしごきじゃが?」
「二人が気付いていないだけでしゅ」
 何と本人達は気付いていないのだった。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧