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展覧会の絵

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第九話 聖バルテルミーの虐殺その九

「お料理好きなのよ。これでも」
「そうなんだね」
「まあ。それで今日は部活なくて」
「今ここにいるんだ」
「そういうことなの。それでね」
「それで?」
「まあ。佐藤君が忙しかったら仕方ないわ」
 彼の顔だけでなく身体もだ。まじまじと見ながらの言葉だった。
「また今度ね」
「遊ぼうっていうんだね」
「そう。どうかな」
「考えておくよ。ただ」
「ただ?」
「僕は遊びには疎い」
 こうだ。十字は雪子のその目、奥に邪悪なものを満たしたその目を見て答えた。
「このことは言っておくよ」
「ああ、日本の遊びは知らないの」
「趣味はあるけれどね」
「趣味?何なの?」
「絵を描くことに」
 今もしているだ。それだというのだ。
「それと音楽鑑賞、読書かな」
「ふうん、静かな趣味ね」
「音楽ならね」
 何を聴くかもだ。十字は雪子に話した。
「カンツォーネに。それにオペラかな」
「イタリアにいたからかしら」
「そう。イタリアの音楽は好きだよ」
「イタリアねえ」
 イタリアに対してだ。雪子はその首を少し右に傾げさせてからだ。十字にこう述べたのだった。
「そのオペラとパスタとね」
「イメージするのはだね」
「そう。後はローマかしら」
 そうしたものをだ。とめどなく挙げていくのだった。
「他にはピサの斜塔とか。ヴェネツィアとか。それに」
「それに。後は何かな」
「シチリア?マフィアの」
 彼等のこともだ。雪子は十字に述べたのだった。
「犯罪組織もあるわね」
「何処の国でもあるけれどね。ただね」
「ただ?」
「マフィアも最近はかなり悪質になってきてね」
 雪子がマフィアの話を出してきたことを受けてだ。十字は自分の話のペースで進めていくことにした。彼はマフィアについてだ。このことを話したのである。
「そう。麻薬をね」
「麻薬・・・・・・」
 麻薬と聞いてだ。雪子の目が動いた。そしてだ。
 その視線を動かしながらだ。こう言ったのである。
「ああ、あれね」
「麻薬を扱っていて。それを売買してね」
「イタリアでも麻薬の問題があるのね」
「何処の国でもあると思うよ」
「そうね。麻薬ね」
「知っているかな。麻薬については」
「特に」
 知らないとだ。雪子はその視線を泳がせて十字に答えた。
 その泳がせたのは僅かだった。普通に見ても気付かれないものだ。
 だがそれでも十字は見逃さなかった。そしてだ。
 雪子のその口の動きも見た。口の動きは微妙に歪んでいた。無論十字はこのことも見逃さなかった。彼にとってはこのことも見るべきものだった。
 しかし雪子はこのことに気付かない。そのうえで言うのだった。
「知らないわね」
「そうなんだ」
「この町にも流行ってるのかしら」
「そうだとしたら大変ね」
「ええ、そうね」
 何処か白々しく、微かにではあるがこう言う雪子だった。
「あれはやったら壊れるのよね」
「そうだよ。快楽と共にね」
 十字はその雪子に述べていく。 
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