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展覧会の絵

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第八話 絞首台のかささぎその十四

「藤会については。私も」
「裁きの代行をしたことがある」
「いえ、それはないです」
 このことはだ。神父は否定した。
 そしてそれが何故かもだ。彼は十字に語った。
「私の務めとして。神に与えられていないので」
「だからこそだね」
「はい、それはしていません」
「なら。神父のできることを」
「はい、しています」
 そうだとだ。神父は十字に落ち着いた声で答えたのだった。
「神の子羊を救う様にしています」
「そうだね。それが神父の務めだね」
「だからこそ教会にもいます」
 この教会にだ。その為にもいるというのだ。
 そしてこのことを言ってからだ。神父から十字にこう言った。
「では。いい時間になりましたので」
「そうだね。今はね」
「夕食にしましょう」
「今宵の夕食は何かな」
「パンにです」
 まずはこれだった。十字も神父もパンを食べることが多い。
「それに神の血に」
「ワインだね」
「それとマカロニです」
 それもあるというのだ。
「ペンネですが」
「ペンネというと」
「ペンネアラビアータです」
 まさにペン先の様な形をしたマカロニだ。パスタとしてオーソドックスなものの一つと言える。神父はそれもあるとだ。十字に対して述べたのである。
「トマトにガーリックを使っています」
「それはいいね」
「あと。野菜を茹でています」
 それもあるというのだ。
「人参にブロッコリー、そしてキャベツです」
「いいね。野菜は好きだよ」
「チーズ、それに食後に果物もあります」
 それもあるというのだ。
「ですから御期待下さい」
「わかったよ。それじゃあね」
 十字は期待もだ。表情にも顔にも出さない。そしてだ。
 そのうえでだ。こう言ったのである。
「一緒に食べよう」
「その様に」
 こう言ってだ。二人でだ。そのイタリア風の夕食と食べた。そしてその食後だ。
 十字はテーブルで無花果を食べてからだ。こう神父に尋ねたのだった。
「それで野菜を茹でたね」
「はい」
「ではその後の茹でたスープは」
「それからも料理を作ります」 
 神父は微笑んでだ。十字にそうすると答えた。
「それは御安心下さい」
「そうしてくれるんだね」
「全ては無駄にしてはなりません」
 神父はこの考えをだ。十字に述べたのだった。
「神からの頂きものですから」
「その通りだね。茹でた後のスープもね」
「口にするべきですから」
「そう。僕もそう思うよ」
「神に仕える者として贅沢は許されません」
 この考えもだ。神父は十字に答えた。
「ですから」
「僕は料理ができない」
 十字はぽつりと述べた。
「そうしたことはね」
「そうですね。枢機卿はそうしたことは」
「できないんだ」
 まさにそうだとだ。十字は神父に答えたのである。 
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