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優勝と言うと

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第二章

「本当にな」
「そうなんだな、しかしな」
 ここでクラスメイトは寿に言った。
「一つ言っていいか?」
「何だよ」
「いや、二〇〇八年な」
 クラスメイトはこのシーズンの話をしてきた。
「阪神最初強かったよな」
「ぶっちぎりでな」
 寿もそれはと答えた。
「もう優勝間違いなしってな」
「言われたよな」
「あの時は無念だったよ」
 寿はその顔に苦渋を満ちさせて答えた。
「よりによって巨人が逆転優勝したからな」
「十三・五ゲーム差をひっくり返してな」
「後半失速して」
「逆に巨人が調子を上げてな」
「他のチームなら許せたよ」
 寿は全身に黒い瘴気を帯びさせた、そうして目を真っ赤にさせて言った。
「けれどよりによって巨人だったからね」
「怒るんだな」
「巨人は百億年位最下位でいいよ」
 瘴気を消して述べた。
「もうね」
「巨人は弱くてもな」
「それでいいよ、弱い巨人最高だよ」
「今年観てたら思うな」
「あのままどんどん弱くなって」 
 そうしてというのだ。
「目指せ暗黒一兆年皇国」
「百億から随分増えたな」
「百倍ね、けれど本当にだよ」
「巨人は弱くていいな」
「そうそう、もう負けまくって」
 そうなってというのだ。
「それでだよ」
「ずっと最下位だな」
「それでいいよ、ただあのシーズンは」
 苦い顔でだ、寿はまた言った。
「残念だったよ、去年もね」
「優勝を逃したな」
「最初は絶好調でもね」
 二〇〇八年の様にというのだ。
「やっぱり後半失速して」
「佐藤さん不調になってな」
「そうなったから」
 だからだというのだ。
「本当にだよ」
「去年も残念だったな」
「一九七三年、一九九二年に続いて」
 二十世紀の話もした。
「それだよ」
「二〇〇八年、二〇二一年もか」
「残念だよ」 
 こう言うのだった。
「阪神の困ったところだよ」
「前半よくて後半失速はか」
「他にもあったし」 
 ここに挙げたシーズン以外にもといのだ。
「本当にだよ」
「困るな、それでな」
 クラスメイトはここでまた言ってきた。
「その二〇〇八年前半で本出たよな」
「ブイやねん阪神かな」
「そうだよ、もう優勝間違いなしってなってな」
 殆どの者が確信してだ。
「そう言ってな」
「その本僕持ってるよ」
 強い声でだ、寿は塾のクラスメイトに答えた。
「僕もね」
「そうなんだな」
「いや、優勝したと思ったら」
 それがというのだ。
「まさかだったよ」
「それで去年テレビで特番あったな」
「あかん阪神優勝してまうだね」 
 寿は即座に答えた。 
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