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イベリス

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第六十三話 夏が近付く中でその三

「モーツァルトだって作曲していないと苦しいっていう位によ」
「作曲していたんですね」
「そうよ、才能があるからって好き勝手していたら」
「才能が枯れたら」
「もうその時は周りに誰もいなくて」
 そうした状況に陥っていてというのだ。
「それでよ」
「終わりですね」
「そう、覚醒剤で捕まった元プロ野球選手もね」
「あの巨人に行った」
「あの人もね」
 彼にしてもというのだ。
「同じよ」
「あの人も酷い行いでしたね」
「もう何やってるのっていう位にね」
「酷過ぎましたね」
「野球選手としては凄くても」
「あんまりでしたね」
「だからね」
 それでというのだ。
「ああなったのよ」
「覚醒剤までやって」
「逮捕されてね」
「ああなったんですね」
「そうよ」
 まさにというのだ。
「あの人もね」
「そうですか」
「人格が酷過ぎると」
「破滅するんですね」
「どれだけいいところがあってもね」
 それでもというのだ。
「性格がどうかよ」
「それに尽きますね」
「そう、それが悪いなら」 
 それならばというのだ。
「ある程度ならまだよくてもね」
「あんまりにも悪いとですね」
「人間の屑位になったら」
 それこそというのだ。
「破滅するからね」
「だからですね」
「そう、本当にね」
「性格も大事ですね」
「モーツァルトさんのこと言ったけれど」
 副部長は再びこの偉大な作曲家の話をした。
「よく性格破綻者って言われるわね」
「下品な冗談大好きでお金の使い方が酷かったんですよね」
「そうなの、発達障害だったとも言われているし」
「障害ですか」
「長嶋茂雄さんもそうらしいわね」
「ああ、長嶋さんならわかります」 
 咲にしてもだ。
「ああした人ですね」
「モーツァルトさんもそうだったらしいのよ」
「そうだったんですね」
「けれど無欲で無邪気で悪意のない人で」
「悪人じゃなかったんですね」
「良くも悪くも純粋な人だったらしいわ」
 モーツァルトはそうだったらしい。
「子供っぽくてね、嫉妬したりもしない」
「そうした人だったんですか」
「だから滅茶苦茶嫌われてはいなかったの」
「そうですか」
「ベートーベンさんよりずっとね」
「あの人は嫌われてたんですね」
「極端な癇癪持ちで尊大で頑迷で気難しかったから」
 ベートーベンはそうだったという。
「お付き合いはね」
「しにくい人だったんですね」
「けれど高潔で公平な人だったから」
「嫌われていても」
「慕う人は慕っていたから」
 敵に囲まれていてもだ。 
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