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剣の丘に花は咲く 

作者:5朗
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第五章 トリスタニアの休日
  第五話 赦し

 
前書き
士郎  「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ――ッ!!」
ジェシカ「オーイエス! オーイエス! オーイエス!!」
士郎  「イくぜイくぜイくぜ!」
ジェシカ「オーイエス! オーイエス! オ――イエ――ス!!」
士郎  「おおおおおお――ぉ?!」
スカロン「ふぅ~……腰の凶器を下げろ」
士郎  「すすすっす、スカロン?」
スカロン「パンツを上げて這い蹲りな犬」
士郎  「ちょちょちょちょ……どういうこと?」
スカロン「お前はヤリ過ぎた……よって」
士郎  「よって? な、何?」
スカロン「貴様の凶器を去勢する」
士郎  「ぴっ?! そそそそれはご勘弁を~っ!!」
スカロン「逃がすかああああああ!!」
士郎  「去勢は! 去勢だけは嫌だああああああァァァァ!!!」

 ついにスカロンの堪忍袋の緒が切れた! 己の女を封じ込め! 一時一人の男として、父親として修羅になったスカロンから士郎は逃げきれるか?!
 去勢されるのか?! それとも逃げきれるのか士郎!!
 ……っていうか、そろそろマジで去勢されたほうがいいんじゃねこいつ……。

 次回『折れるものなら折ってみよ!』

 そそり立つ男の象徴!! 叩き折れるかスカロンッ?!?!
 

 
 トリステイン王宮の執務室で、アンリエッタは高等法院のリッシュモンと会談を行っていた。
 広い執務室の中には、アンリエッタとリッシュモンの二人しかいない。二十人は優に座れる巨大な机を挟み、アンリエッタと向かい合って座るリッシュモンは、眉間に皺を寄せた険しい顔でアンリエッタを見下ろしている。

「陛下は必要だともうされますが、これ以上税を上げますと、平民どもが苦しむこととなりますぞ。下手をすれば、平民が反乱を起こしかねません」
「わかっております。ですが必要なことなのです。アルビオンを打ち破らなければ、トリステインは先に進むことはできません」
「それでは、陛下は遠征に必要な費用を得るために、平民が苦しんでもいいと?」
「……遠征への費用は確かに莫大ですが、調達は不可能ではありません。トリステインに住む者全てが団結し、倹約に努めれば可能です。わたくしも上に立つものとして、手の届く範囲では、既に行っております。文句を言う前に、あなたも倹約に努めればいかがですか?」

 リッシュモンの問いに答えることなく、アンリエッタは豪奢な服を着るリッシュモンに皮肉げな笑みを向けた。

「さて、さて、これは困りましたな。確かに仰るとおりですが、しかし陛下。例え戦費をまかなえる目処がたったとしても、我々高等法院の大半は、遠征については反対をしていると言うことを覚えて置かれてください」

 顎を撫でながら笑うリッシュモンに、アンリエッタも笑みを返す。

「わかりました、覚えておきます」
「それでは、私はそろそろ下がらせてもらいますが……一つ陛下にお聞きしたいことが」
「何か?」

 頭を下げたリッシュモンが、顔を上げることなく声を上げた。

「何故、アルビオンに攻め入るのですか?」
「……このままレコン・キスタを放置すれば、必ずこの国をまた攻めてくるでしょう。ならば、不意をうたれる前に、こちらから動かなければいけません」
「……わかりました、それでは、失礼いたします」

 アンリエッタの返答に、小さく頷いたリッシュモンは、執務室を出て行った。
 リッシュモンがいなくなり、執務室に一人残ったアンリエッタは、椅子に深く座り込みながら、頭痛を堪えるように、片手で顔を塞いでいる。

「……わたくしは一体、何をやっているのでしょうか」

 違う、違うのだ……
 何が……放置すればまたせめて来るからだ? 
 何が、不意をうたれる前に攻めなければだ?
 はっ……あはは……何てひどい女でしょうわたくしは……。
 ただの復讐でしょう、アンリエッタ。
 ウェールズ様を殺したレコン・キスタが憎くて憎くてしょうがないんでしょ?
 だから、国を巻き込んでも復讐を成し遂げたいのでしょ?

 わかっている。
 わかってはいるのだ。
 だけど……とめられない。
 どうしても……とめられない。
 
 ……わたくしは、ウェールズ様の復讐をとげたいの?
 ……それとも……。
 わからない……それさえもわからない……わたくしは……わたくしは一体……。
 

 ノックの音が執務室に響く。
 手を顔から離したアンリエッタは、苦し気に歪んでいた表情を元に戻した。

「どうぞ」
「アニエス・シュヴァリエ・ド・ミラン、参上つかまつりました」
 
 扉を開け入ってきたのは、一人の女騎士。
 短い金髪が揺れる下には、澄んだ青い目が輝き。身を包む鎖帷子の上には、百合の紋章が描かれたサーコートを羽織っている。
 そして、腰には杖ではなく剣が差してある。
 つまり、彼女はメイジではなく、ただの平民であることを示していた。
 目の前まで歩いてきた女騎士――アニエスはアンリエッタの前で膝をつくと、懐から出した書簡を差し出した。
 
「調査結果です」
「ご苦労様です」

 書簡を受け取ったアンリエッタは、無言で調査結果を確認すると、一度強く目を閉じ、天井を仰ぎ、

「……あなたもですか」

 小さく呟いた。

 





 自覚はあった……。
 自覚はあったのだが……。

「ねぇ、シロウ。チップが背中に入ったの……とってくれない?」
「……胸が苦しいの……緩めてくれない……ねぇ……お願い」
「両手塞がってて……だから、汗……拭いてくれない……胸の汗が気持ち悪いの……ねぇ、お願い」
「……口がさみしいの……もうっ、そうじゃないって……キ・スでしょ、ほら、ね」

 最近ジェシカがやたらと積極的になってきた。
 やたらとくっついてくるし、誘惑してくる。
 さらに、それに対抗するようにルイズもまた……。

「もうクタクタ……シロウ命令よっ……あ、足を揉みなさい! ……んっ、そ、そこじゃないわ……も、もうちょっと上よ……ん……あっ……っ……ぁ」
「服を締めすぎて痣になっちゃった……し、シロウ……こ、この薬塗ってく、塗りなさいっ! ……ひっ! だ、大丈夫よ! ちょ、ちょっと気持ちっ……冷たかったのよ……つ、続けなさい……っ……ん……ぁ……」
「さ、寒いのよこのベッド……だ、だからシロウで暖を取るの! 寒いからよ! へ、変なことしないでよ……あ、そ、その……おねがいします……」

 ブレーキを踏むことなく突っ走る二人は、まるで互いの限界を試し合う、チキンレースをしているようだった。
 幸か不幸か? 二人の度胸? は強すぎたためか、二人はブレーキを踏む機会を測れず……結果。


「……シロウ……あ、あたし、我慢できない……今……誰もいなから……お願い……ちょっとだけ、あなたを……」
「シロウが火を点けたんだから……責任とって鎮火してよね……ほら……水はここにたっぷり……ね……シロウ……」


「シロウは、やっぱり……胸が大きい方がいいの? ちっちゃい胸じゃ……だめ? ち、ちっちゃな胸でも……で、できることがあるのよ……」
「う~~っ! 失敗した! あっんのオヤジっ! ベタベタな手で触ってくるなんて! う~……気持ち悪い! ……だ、だからね、シロウ……気持ち悪いのを上書きして……わたしの……全部に触れて……」


 周囲への警戒を怠ってはいなかった。
 見られたということはない筈だ。
 だから、原因は他にあるのだろう。
 可能性としては二つ。
 匂いか声か。
 換気したとはいえ、一晩では完全に抜けきれなかったのか、鼻が麻痺した自分のではわからなかった。
 ドアや壁があるとはいえ、口や手で押さえていたとはいえ、不意な声は漏れてしまっていたかもしれない。
 ……流石に……倉庫や客席、廊下では自重しておけばよかったか……いや、我慢しようとしたんだが……最近俺こればっかりだな……。
 ということは、これはやはり自業自得ということか。

 目の前に迫る怪物から目を逸らすことなく、士郎はゴクリと喉を鳴らす。
 怪物は、そのグローブのような手をこちらに向かって伸ばすと、肩を鷲掴みにする。ギリギリと力を込められ、骨が軋む音が聞こえるようだ。歪もうとする顔を、歯を食いしばることで耐える。
 炯々と鈍く輝く目で、怪物はこちらを睨みつけ、ゆっくりと口を開く。

「……シロちゃん……ちょっとヤリすぎよ」
「あ、ああ……す、すまない」
「すまないですむと思ってるのかしら?」
「うっ……そ、それは」
「あたしはね、若くして死んでしまった妻の分までジェシカちゃんの可愛がろうと思ってこんな風になったの」
「そ、そうなのか?」
「そうなのよ……だけど……」

 顔を下に向けたスカロンが、ゆっくりと顔を上げる。
 士郎に顔を向けたスカロンの顔には、いつもの不気味な笑みはなく。

「あまりヤリ過ぎたら……男の……父親の俺が出てしまうじゃねえか……どうしてくれるシロウ」

 口の端を曲げ、咬み殺さんばかりに睨みつけてくるスカロンの顔があった。
 
「すっ――」
「だから、ね。ヤルなとは言わないけど。ちょっと、抑えてね……ね、シロちゃん」

 反射的に謝ろうとする士郎の声に、いつもどおりの不気味な笑みを浮かべたスカロンが声を被せた。
 顔をヒクつかせながらも頷いた士郎に、スカロンは肩から手を離すと、ぽんぽんと士郎の肩を叩く。じっと士郎の顔を見つめたスカロンは、一度ニッゴリと笑うと、士郎に背を向けた。
 
「ああ、そうそうシロちゃん。今日はルイズちゃんとジェシカちゃんと一緒に買い物に行くから、お店の準備お願いできるかしら……もちろん一人でね」
「あ、ああわかった」

 否と言える訳もなく、士郎はスカロンの言葉に頷いた。






「さて、後はこの食料を店に持って帰れば終了なんだが……ちょっと買いすぎたか?」
 
 両手で抱えるようにして持った大量の食料品を抱え直すと、士郎は苦笑いしながら店に戻るため歩き始めた。近道をしようと、表通りから離れた裏通りを歩く。暫く時間がたち、もうすぐ店の前というところで、裏通りから士郎が出ようとした瞬間、タイミングを図ったように横から人影が飛び出してきた。
 
「きゃっ」
「おっと」

 荷物で両手と視界を塞がれていたが、士郎は横から飛び出してくる者には事前に気がついていた。だから士郎は、ぶつからないよう、タイミングをずらして裏通りから出ようとしたが、その者が何かに足を取られたのか、小さく悲鳴を上げて転げそうになるのを視界の端にとらえたため、受け止めようと裏道から出たのだ。
 
「大丈夫か?」
「え? あ、あれ? な、なんでしょうこれは?」

 地面に転がる直前、不意に現れた暖かな壁に顔を突っ込みだ彼女は、自分を支えた壁を確かめるように、自分を支えるものをぺたぺたとなで始めた。顔を隠すようにフードを深く被っていることから、前がよく見えないのだろう。ペタペタと動く手が上に上がっていくと、手はついに士郎の顔まで伸びていった。真っ白な、まさに白魚のような指先が唇に触れるのを感じると、流石に困ったような声を士郎は上げた。

「あ~すまないが、そろそろ手を放してくれないか?」
「きゃっ?! え? だっ、誰ですか?」

 両手が塞がっていたことから、胸で転けそうになっていた少女を支えた士郎は、ペタペタと触れてくる少女に、戸惑った声をかけると、驚いて飛び離れた少女に笑みを向けた。

「さて、どうしてこんなところにいるのか、理由を聞いてもいいか?」
「え? あっ……シロウさん? ……どうしてここに?」
「ただの偶然なんだが。あなたこそ何故こんなところに?」
「そ、それは……」

 フードの奥に見えた顔は、この国の王である、アンリエッタ・ド・トリステインご本人であった。
 呆れるような士郎の声に、未だ状況が把握できないのか、戸惑った様子を見せるアンリエッタ。
 アンリエッタが何か言おうと口を開こうとしたが、 

「ここにはいないっ! もっと捜索範囲を広げろ! まだ遠くには行っていないはずだ!」
 
 近くから兵士たちの怒声が聞こえ、口を閉ざした。
 騒ぐ兵士に顔を向ける士郎の顔に、つま先立ちして顔を近づけたアンリエッタが、士郎の耳元で囁く。

「ここでは……どこか隠れられる場所はありませんか。事情はそこで……」

 フードの奥から強い視線を向けてくるアンリエッタに、小さく頷いてみせた士郎は、兵士たちからアンリエッタを隠すように身体を移動させた。

「わかった。近くに俺とルイズが暮らしている場所がある。幸い今は誰もいないからな。まずはそこに行こう」






「高級品ではないが、味はなかなかなものだぞ」

 小さなベッドの上に座り、珍しそうに顔をキョロキョロと部屋を見渡しているアンリエッタに、士郎は手に持ったカップを手渡した。

「ありがとうございます」
 
 礼を言いながらカップを受け取り、カップに口を付けたアンリエッタは、目を大きく見開いた。

「っ! 美味しい」
「それはよかった」

 思わずと口から漏れた言葉に、士郎は目を細め小さく笑い。アンリエッタは恥ずかしげに目を伏せ、飲み干したカップを士郎に手渡した。

「ごちそうさまでした」
「お粗末さまです」

 受け取ったカップを部屋の隅に置くと、椅子替わりの木箱をアンリエッタの前に置き、士郎はその上に座った。木箱とベッドの高さは同じ程度であるため、座っても士郎はアンリエッタを見下ろす形となっている。
 アンリエッタは視線を落とし、両手を絡み合わせるようにして何かを考えているようだ。
 暫らくアンリエッタが話し出すのを待っていた士郎だが、一向に口を開かない様子に、自分から口を開いた。

「で、一体何があったんだ?」 
「えっ? あ、それは、近くまで来る予定があったので、ルイズに会おうと思って抜け出したんですが……思ったより騒ぎになってしまったようですね」
「当たり前だ。少し前に誘拐騒ぎがあったんだからな」
「それは、わかっているのですが……」

 叱りつけるような士郎の言葉に、アンリエッタは悲しげに顔を落とす。 

「もうそろそろルイズも戻ってくるはずだ、汚いところだが、それまでここで待っていてくれ」

 そう言って、士郎が木箱から腰を浮かそうとすると、ベッドから手を伸ばしたアンリエッタがそれを引き止めた。

「ま、待って下さい」
「ん? お茶のお代わりを持ってくるだけだが?」
「あ、そうなんですか」

 パッと手を開き、アンリエッタが外套から手を離すと、士郎は背を向けドアに向かって歩き出す。離した手を不思議そうに見下ろしていたアンリエッタだが、何かを思い出したように、ハッと顔を上げると、士郎を呼び止めた。

「ち、違う! そうじゃありません! 待って下さいっ!」
「何だ?」

 ドアノブに手を掛けたまま、士郎は首だけをアンリエッタに向ける。 

「ルイズに会いに来たのは、ルイズにお願いがあったからです」
「お願い? なら、なおさらルイズが必要じゃないのか?」

 首を傾げる士郎に、アンリエッタは真っ直ぐに視線を向ける。

「必要なのはあなたです。エミヤシロウ……あなたのお力をお借りに来たのです」
「俺の力を」
「明日まであなたのお力をお借りできませんか? わたくしの護衛をお願いしたいのですが」
「何故俺なのか、理由を聞いても構わないか。護衛が必要というのなら、いくらでも用意できるはずだろう?」
「……信用出来るものが少な過ぎるのです」

 唇を噛み締めるアンリエッタを、士郎は腕を組んで見つめている。

 ……若くして王となれば、賞賛や羨望だけでなく、嫉妬や妬みも向けられるだろう。
 それに……この間の誘拐騒ぎ……。
 ……信じられるものが少ないか……王だからとはいえ、こんな少女が……。

「わかった。俺で助けになるのなら」
「本当ですか!」

 バッと顔を上げたアンリエッタの顔には、迷子の子供が、やっと親を見つけたような安堵の表情が浮かんでいた。そんなアンリエッタに、士郎は安心させるように笑い掛ける。

「ああ、だからそんな不安な顔をするな」
「そ、そんな顔してましたか?」

 ぺたぺたと自分の顔を確かめるように叩くアンリエッタに、士郎は手を伸ばす。

「……ぁ」
「ああ、不安そうな顔をしていた。今にも泣き出しそうなほどにな」

 強く大きく、しかし優しくアンリエッタの頭を撫で始めた。
 士郎の手の動きに合わせ、首が微かに動くが、アンリエッタは頭を撫でられるままにしている。
 頭を撫でられるなんて、過去数える程しかされたことがなかった。
 それも男の人からこんな風になんて……。
 
「……そんな顔してましたか」
「してたぞ。まるで小さな子犬みたいだったぞ」
「子犬ですか……」

 士郎と視線を合わせることなく、アンリエッタは士郎との会話を続ける。
 誰もいない屋根裏部屋の中、サラサラと士郎がアンリエッタの頭を撫でる音が響く。 
 
「一国の女王を、子犬扱いですか。とんでもない人ですねシロウさんは」
「あ~……すまない」
「……でもいいです」
「いいのか?」
「はい、いいんです」
「そう、か」

 話しを終えるのを教えるように、軽くぽんぽんとアンリエッタの頭を叩くと、士郎はアンリエッタの頭から手を離した。

「それで、何時から俺は護衛につけばいいんだ?」
「……」
「姫さま」
「……」
「姫さま?」
「……あっ、は、はい! な、何ですか?!」

 自分で自分の頭を撫でていたアンリエッタが、士郎の呼び声にやっと顔を上げると、真っ赤に染まった顔で慌てて立ち上がった。
 わたわたと手を振る姿に、思わず顔が緩む。
 真っ赤な顔で睨みつけてくるアンリエッタに、士郎が視線だけで謝る。

「今からです。それとこの格好のままでは目立ちますので、着替えたいのですが何かありますか?」

 染み一つなく白い、まるでそれ自体が輝いているような清楚なドレスを広げるアンリエッタに、士郎がルイズ用に買った平民の服を見せる。

「ルイズの服があるが」
「それを貸してください」

 士郎から服を受け取ると、アンリエッタは士郎にニッコリと笑い掛けた。

「着替えるので後ろを向いていてください」
「あ、ああ」

 言われるままに、くるりと後ろを向いた士郎の後ろで、アンリエッタがドレスを脱ぐ音が聞こえる。
 ルイズの服を着るのはいいが、サイズは合うのか?
 士郎の心配は的中し、

「少し苦しいですね」

 士郎が振り向くと、弾けんばかりに服を押し上げるアンリエッタの姿があった。
 それだけでも充分過激であるのに、
 
「そうです、こうすれば」

 止める間もあればこそ、自然な動きで胸のボタンを二つほど外した。
 それなり以上にある胸が、ボタンが外れるに合わせ、胸がプルンと震えるのを、目で追ってしまうのは仕方ない。

「どうですか?」

 上目遣いでこちらを見上げてくる姿に、思わず顔でなく胸にいってしまうのは……まあ、これも仕方ない。
 小さく何度も頷く士郎に、アンリエッタが不思議そうに小首を傾げる。アンリエッタの疑問の顔に気付いた士郎は、苦笑いを向けた。
 
「ちょっとばかり過激すぎだ」
「確かにそうですが、ルイズの服は小さいですので仕方ないかと」
「……俺が手を加えてもいいか」

 士郎が聞くと、アンリエッタが小さく目を見開き驚きを示す。
 
「そんなこと出来るんですか?」
「幸か不幸か人生経験は豊富でな」
「……それではお願いしても」
「了解した」

 そうして士郎は、女王さま改造計画を実行した……主に自分の理性のために。

 




「衛兵の数が多いな」
「そうですね」

 物陰から辺りを見渡す士郎の脇からアンリエッタも覗き込み頷く。
 女王が姿を消したとなればしょうがないとは言え、これに見つからずにくぐり抜けるのは。
 アンリエッタの今の姿は、先程のピチピチの服の上に、士郎が最速で作り上げたカーディガンもどきを上から着ている。……それでも、元がルイズの服から作ったものであるから、小さいが。
 顔には薄く化粧を塗り、髪型は緩くウェーブをかけている。
 結果、最初の夜の女タイプから、ちょっとエッチな近所のお姉さんタイプに変化していた。

「……至難だな」
「どうしますか」

 士郎を見上げるアンリエッタ。アンリエッタの肩を掴み、物陰に引き戻した士郎は、壁に背をつけ考え込む。
 アンリエッタを抱えて屋根の上を飛ぶか?
 いや、昼間では目立ちすぎるし、建物の高さもそんなに高くない。直ぐに見つかってしまう。
 さて、どうするか。
 士郎が悩んでいるうちに、衛兵がこちらに向かって歩き出してきた。それに気付いたアンリエッタが、士郎の手を引く。

「シロウさん、わたくしの肩に手を回してください」
「なに?」
「早く」
「お、おい」

 戸惑う士郎の腕を引くと、自身の肩に導く。

「恋人のように、わたくしにくっついてください」
「恋人って? ちょっとま――」
「行きます」

 有無を言わせず、アンリエッタは士郎を引っ張るように物陰から出る。
 歩きながらアンリエッタはボタンを外すと、露わになった胸元に、士郎の残ったもう一つの手を引き込む。
 柔らかく暖かい滑らかな肌は、汗でかすかに湿っており、指先が濡れる感触がする。戸惑う士郎の耳元に、顔を近づけるアンリエッタ。

「もっと近づいてください。わたくしを隠すように」
「む……わかった」

 衛兵の横を通り抜ける。衛兵がチラリとこちらに顔を向けた気配がした。士郎はアンリエッタに覆いかぶさるように身体を寄せているため、衛兵からアンリエッタの顔は見えない。精々身体ぐらいしか見えていないだろう。
 衛兵達はイチャイチャとくっついている士郎達に舌打ちを一つすると、士郎達の横を足早に過ぎていった。

「無事やり過ごせましたわね」
「あ、ああ」

 硬い声で返事を返す士郎に、訝しげな顔を向ける。

「その、手はいつ離せば」
「っ?! っ……こ、このまま……しばらくはこのままで、まだまだ衛兵はいますから」
「そうは言ってもな姫さ……あ~」
「『アン』と呼んでください」 
「『アン』か?」

 士郎の言葉に頷くと、頬を淡く染めながらアンリエッタが士郎を見る。

「わたくしはシロウと呼びますから」
「わかったアン。それでどうする。もうすぐ日が落ちるが、何処かで宿を取るか?」
「……」
「アン?」
「…………」

 ポーと見上げてくるアンリエッタに顔を近づけると、ボッという音が聞こえる程に一気に赤くなった顔を下に向けると、微かに顎を引くように頷いた。

「……はい……シロウ」

 小さく蚊の鳴くような声を上げたアンリエッタは、士郎に擦り寄っていった。







 士郎たちが宿を取ったのはところは、粗末な見るからな安宿だった。宿の店主に案内された部屋は、士郎でさえどこから手を付ければいいか迷うほどの汚さだった。汚いというよりも、破壊されているといってもいいだろう。
 しかし、何処から手を付ければいいかわからなくとも、こんなところで女性を休ませるのは流石にと思い、アンリエッタをドアの前で待たせ、士郎は片付けを始めた。

「もういいぞ」

 十分後、士郎はドアを開け、アンリエッタを迎え入れた。
 元は白だったと思われるシーツや、足が一本欠けて三本になった椅子。それを部屋の隅に集め、投影したシーツを被せ隠すと、これまた投影したシーツや椅子を並べた結果。

「……凄いですね。あの部屋をここまで綺麗にするなんて」
「納得はいっていないがな」

 何とか『魅惑の妖精』亭の屋根裏部屋レベルまで引き上げた士郎にアンリエッタが、賞賛の目を向ける。首を振ってまだまだと応える士郎を、可笑しそうに笑い、真新しいシーツが掛けられたベッドに腰掛けると、自分の隣りを手で叩く。

「どうぞ」
「それでは失礼して」

 アンリエッタの隣に腰掛ける。アンリエッタは『魅惑の妖精』亭の屋根裏部屋でそうしたように、物珍しそうに辺りを見渡している。
 日が落ちると合わせるように、部屋の中が暗くなっていく。明かりをつけようと、士郎は部屋の掃除中に見つけ出したランプに火を灯した。
 ランプ内の小さな明かりが、淡く辺りを照らし出す。士郎がランプを置き、振り返ると、こちらを見つめるアンリエッタと視線が交わる。

 アンリエッタは輝いていた。
 日の光でもなく、月の光でもない、しかし、自然で柔らかな火の光に照らされて。
 怪しく、幻想的に、それでいて生々しくアンリエッタを照らし出している。
 美しく儚げな姿に、思わずそこにいるのを確かめたくなるが、手を握りしめて耐え、ごまかすように、話しかけた。

「ルイズの集めた情報は役にたっているか?」
「……ええ、とても役に立っていますわ」

 アンリエッタは顎を引き頷く。
  
「わたくしが欲しい情報を、ルイズは常に送ってくれます。わたくしの政策への声は、好意か悪意かはわかりませんが、誰かの手が必ず加えられますから……ですのでルイズが集めてくれる誰の手も加えられていない情報は貴重ですので」

 ベッドに倒れ込み、アンリエッタの身体がベッドを軋ませる。あちらこちらに染みどころかキノコが生えている天井を仰ぎ見ながら、アンリエッタは話しを続ける。

「わかってはいたんです……」
「……」
「聖女だと言われようとも……どれだけ賞賛され、敬われても、それは目の前の驚異が去るまでの間だけだと……案の定、現状のわたくしの評価は、手厳しくなっているようですね」

 アンリエッタは薄い笑みを浮かべる。

「しかし、それも仕方のないことだとは思います。今までわたくしは、政治について特別な教育を受けてはいませんでした。もちろん王になってからは少しでも力になれるよう、多くの努力はしてきました。幸い王が不在の間、ずっと支えていてくださっていたマザリーニがいましたので、色々と教わりながら手や口を出し始めたのですが……」

 こてんと首を倒し、アンリエッタは横に座る士郎を見上げる。

「シロウさん、どうやらわたくしはいらないみたいなんです」

 士郎を見上げるアンリエッタは、可笑しそうにくすくすと笑っていた。

「何かをしようとすれば諫められ、伝えられるものを確認しようとすれば止められる。そして最後は必ず『陛下は王座にいてください』と……」
「……」
「……わたくしは王になったのか、それとも王という人形になったのか」

 くすくすと笑っていた顔は次第に静まり、やがて人形のような無表情になる。
 そんなアンリエッタに、士郎は何も言わない。
 
「王となったのは、議論だけで決断をしない貴族たちが余りにも情けなく、頼りなかったからです」
「……」
「……ですが、今は王となったわたくしが、情けなく、頼りない存在になったのですね」

 じわりと泣き笑いが浮かぶ顔で、士郎に笑いかけると、士郎から顔を背けながらベッドから起き上がった。手を一つ持ち上げると、アンリエッタはゆっくりと目頭を抑える。

「……わたくしは……何のために女王になったのでしょうか?」

 今にも消えそうな声を漏らしたアンリエッタだが、バッと勢い良く士郎に振り向くと、恥ずかしげに士郎に声をかけた。

「すみません。愚痴ばかり言ってしまって。不快な思いをさせ――」

 謝ろうとするアンリエッタだが、頭を優しく撫でる感触に口を閉ざした。

「構わない」
「……」

 戸惑うような表情を浮かべるアンリエッタに、士郎は安心させるような笑みを向ける。
 
「愚痴や弱音をはく相手がいないなら、好きなだけぶつければいい。俺は気にしない」
「そ、そういうわけには、女王であるわたくしが、人前で愚痴や弱音をはくなど……」

 縋るような目を向けながらも、アンリエッタは否定するように顔を振る。ふるふると振るわれる頭から手を離さず、士郎はなおも続ける。

「俺はまあ、権威や権力に無頓着というか何というか……特別な地位にいるからといって、特に気にすることがない。王だ貴族だといわれても、正直言って興味などないし、ああそうなのかと頷く程度だ」
「え? あの? それって、どういう?」

 士郎が何を言いたいのか理解出来ず、ますます戸惑う様子を見せるアンリエッタに、士郎は照れ隠しのように残ったもう一方の手で頭をかくと、頭を撫でていた手を頬にずらし、微かに残っていた涙の跡を指先で拭った。

「あっ」
「その、つまり、だな。気を悪くしたら謝るが、俺にとってお前は、無理な我慢をする一人の女の子でしかない」
「……え」
「だから、女王だと我慢されても俺は納得がいかない」
「……」

 呆けたようにポカンと口を開けるアンリエッタの様子に、士郎は思わず顔を逸らしてしまう。 

「あ~」
「……」
「すまない。やっぱり気を悪くしたか」
「……」
「すまない、姫さ――」
「アンです」
「え?」

 士郎の謝罪を遮るように、突然声を上げたアンリエッタに、今度は士郎が戸惑った顔を見せた。そんな士郎に、アンリエッタが詰め寄っていく。

「アンです。シロウさん……アンと、呼んでください」
「あ、ああ」

 異様な迫力を見せるアンリエッタに、士郎はこくこくと頷く。

「シロウさんは、ずるいですね」
「ず、ずるい?」

 自分の顔を指差す士郎に、アンリエッタは真面目な顔をして頷く。

「ええ、ずるい人です」
「そうか、ずるいか」

 どこか落ち込んだ様子で肩を落とす士郎に、アンリエッタが穏やかな笑みを向けている。背を曲げる士郎に、手を伸ばそうとしたアンリエッタだったが、不意に聞こえてきた音に手が止めた。

「……あ」
「どうかしたか?」
「……雨が」
「ん? 降ってきたようだな」

 窓の向こうからは、突然の雨に文句を言う人の声が聞こえてくる。雨足は次第に強くなり始めている。雨漏りを心配しながら、士郎が天井を見上げていると、士郎の肩にアンリエッタが頭を当てたきた。

「……不思議です」
「何がだ?」
「雨が降っているのに……怖くないなんて」

 目を瞑り、寄りかかってくるアンリエッタを見下ろしながら、士郎は胸に渦巻く思いを飲み込むように頷いた。そして、アンリエッタがずり落ちないように肩を抱き寄せた。

「……そうか」
「あっ……」

 士郎の手が肩に触れると、弾かれるように小さく声を上げたアンリエッタに、思わず士郎の手が離れそうになったが、アンリエッタが士郎の手を上から抑えたことから、士郎の手はアンリエッタの肩から離れることはなかった。
 それどころか、

「もっと……強くしてください……」
「ああ」

 もっとと望むアンリエッタに応えるように、士郎は自身の胸に押し付けるかのようにアンリエッタを引き寄せる。
 士郎に肩を寄せられ、士郎の胸元に頭を付けたアンリエッタは、安心したような笑みを浮かべていたが、不意に顔を悲しげに歪ませた。

「……わたくしが……死なせてしまった…………わたくしは、赦されることがあるのでしょうか」
「……それは……すまない……」

 アンリエッタが何を言いたいのかわからないほど、鈍い鈍いと言われる士郎でも理解していた。
 赦される……か。
 アンリエッタの独白を聞きながら、士郎は思い出していた。
 人を救うといいながら、人を殺し、見捨てたことを。
 助けを、救いを求める人に手を差し伸ばすが、全てを救えることは出来なかった。
 子供だけでもと子を差し出す母親。
 気にするなと一人敵を足止めするため残る男。
 そういった者たちを見捨てた。
 敵だからと殺した。
 俺が殺した相手にも、大切に思っている者たちがいただろう。
 赦されるわけがないと理解していた……納得もしていた。
 だからといって平気な筈がない。
 ……自分を殺そうとしたこともある。
 ……そんな俺が今も生きていけるのは……。
 
「あれから……雨音を聞くと、いつも思い出してしまいます。わたくしは、赦せそうもありません……ウェールズさまを利用した者を……わたくし自身を……」

 胸に熱い湿った感触が広がっていくのを感じながら、強くアンリエッタを抱きしめる士郎の耳に、雨音に交じり……微かな嗚咽が聞こえる。
 俺が今、ここにいられるのは、それは……

「赦す」
「え」

 戸惑いながら顔を上げるアンリエッタの頬を伝うものを手で拭うと、その滑らかな頬に手を添え見つめ、

「俺は赦す。アンの全てを」
「それ、は、どういう……」

 士郎が何を言っているのか分からないといった顔を向けるアンリエッタを、士郎は急に抱きしめた。
 そして、囁く。

「誰もがアンを責めたとしても」

 ゆっくりと

「アンが自分自身を赦せなくても」

 優しく

「俺はアンを赦す」

 包み込むように囁く。

「……っ!」

 士郎の胸の中、目を見開き呆然としていたアンリエッタだが、何かのスイッチが入ったかのように唐突に暴れだした。

「ダメです……っ。それはダメなのですっ! わた、わたくしは赦されないのですっ。赦されるわけがないのですっ! 赦されるわけが……赦せないのです……」
「……アン」

 士郎から離れようと、アンリエッタはドアを叩くように両手で士郎の胸を叩く。胸に振動を感じながらも、士郎はアンリエッタを離さない。

「……ダメなんです」

 激しく士郎の胸を叩いていた手は、次第に弱くなっていき……最後は力なく垂れ、代わりにぽすんと士郎の胸に頭を当てた。

「そうか……だが、これだけは覚えていてくれ」

 胸にあるアンリエッタの頭を撫でながら、

「例え全ての人がお前を赦さなくとも……俺はアンを赦すと」
「……」

 士郎は伝える、

「それだけは、忘れないでくれ」
「……」

 少しでもいい、アンリエッタの支えになればと。

「……アンリエッタ?」
「…………」

 アンリエッタが何も反応を返さないことを不思議に思い、士郎が身体を少し離してみると、

「すぅ~すぅ~」
「寝てる」

 アンリエッタは士郎の胸に寄りかかるように眠っていた。
 士郎は苦笑を浮かべながらも、アンリエッタを起こさないよう、ゆっくりとベッドに寝かせると、腰をあげようとしたが、

「ん?」

 何時の間にか服の裾をアンリエッタが掴んでいたことから、士郎はベッドから離れることは出来なかった。何度か服の裾とそれを掴むアンリエッタの手に交互に視線を向けていたが、小さく溜め息をつくと再度ベッドに腰を落とした。

「ふむ……まぁ、いいか」

 小さく笑うと、雨足が強くなり、雨漏りが心配な天井を見上げる。
 そんな士郎を、薄く開けた目で見つめる者がいた。

(赦す……そんなことを言われても……わたくしは……でも……)

 アンリエッタは滲む視界で士郎の背中を見つめていた。
 滲む視界に、いくつもの像が結ばれては消えていく。
 煌びやかな衣装に身を包んだ若い男が、にこやかに手を差し出す。
 自信に溢れた壮年の男が、恭しく頭を下げる。
 彼らは示し合わせたかのように同じ様なことを言う。
 ゲルマニアの皇帝との婚約が破談となり、さらに女王となった自分の夫になるために擦り寄ってくる男たち……。
 だけど……そんな男たちと彼は……シロウさんは違う……。
 権力や地位に興味がないという男は、今までに何人もいた。しかし、そんな男たちの目は、言うことに反して欲望に濁っていた。
 地位や権力に興味がないという彼は……真っ直ぐにわたくしを見つめる彼の目は、本当にわたくしだけを見てくれていた。
 思い出すのは、今はもういない人。
 初めて恋をした人……愛した人。
 ウェールズさま……わたくしは……。
 様々な想いが胸を、頭を巡り、本当に眠りに落ちていくのを感じながら、アンリエッタは士郎の服の裾を握る手に力を込める。
 雨音は激しくなる一方だが……。
 士郎の後ろで眠りアンリエッタの顔には……。

「何かいい夢でも見てるのか?」

 幸せそうな笑みが浮かんでいた。

  

 
 

 
後書き
アンリエッタ 「雨の音を聞くと、震えが止まらなくて」
士郎     「そうか……」
アンリエッタ 「すみません」
士郎     「なら……」
アンリエッタ 「え?」
士郎     「雨の音なんか聞こえなくさせてやるぜぇ~!!」
アンリエッタ 「え? きゃああああ」
士郎     「良いではないか良いではないか!」
アンリエッタ 「あ~れ~」
士郎     「ははははっはは……へ?」



アンリエッタ 「ほらほら! 雨音を気にさせなくするんじゃなかったのかい! 何だいその体たらくは!!」
士郎     「ヒイイイイ!」
アンリエッタ 「何がヒイイイイ! だっ! 犬のようなあんたはワンだよワン! ほら鳴きな! 叫びな!」
士郎     「わ、わおおおん! きゃいいイン!」
アンリエッタ 「アハハハハっハハハハ!!」




 士郎が手を出したのは、女王は女王でも女王様であった。
 襲うはずが襲われた結果になった士郎は、無事女王様の下から逃げ出せるのか?!
 犬から人に戻れるのか!
 士郎よっ! ……っていうかもう犬でいいんじゃね? 
 
 次回『女王様、犬と呼んでください』

 士郎よ! 人としての尊厳を捨て! 犬となるか?!
 
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