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イベリス

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第五十七話 梅雨だからその五

「後悔するわよ」
「実際はそうですね」
「だからね」
「入れるものじゃないですね」
「ペーパータトゥーならいいけれどね」
 これならというのだ。
「だって貼るだけでね」
「すぐに剝がせますね」
「実は映画とかの入れ墨はそうだから」
「俳優さんとか入れ墨あってもですね」
「実はね」
 これがというのだ。
「ヤクザ映画でもよ」
「ペーパータトゥーですね」
「だからすぐに剥がせるからね」
「それはいいんですね」
「遊びみたいなものだからね」
「そっちはいいですね」
「ちなみに遠山の金さんは描いていたのよ」
 この役の時はというのだ。
「朝の五時にスタジオに来てね」
「それで、ですか」
「そう、描いていたのよ」 
 そうだったというのだ。
「これがね」
「そうだったんですね」
「役者さんも大変ね、五時よ」
「朝のですね」
「その時間に撮影所に入ってね」
 京都太秦映画村である、東映の時代劇はここで主に撮影を行っていたのだ。今もロケに使われた場所が残っている。
「描いてもらってたのよ」
「あの桜吹雪を」
「それから撮影していたのよ」
「そう思うと大変ですね」
「そこまでしてね」
 そのうえでというのだ。
「金さんやってたのよ」
「五時から描いて」
「そうだったのよ、歴代の金さんはね」
「遊び人の金さんも大変だったんですね」
「これがね」
「金さんって面白いけれどね」
 一年の生徒の一人が言ってきた。
「今観ても」
「それはね」
 咲もそれはと応えた。
「娯楽番組でね」
「あの桜吹雪出す場面がいいよね」
「待ってましたって感じで出て来てね」
「悪党をやっつけてね」
「その後でお白洲で見せるのよね」
「その二つの場面がいいけれど」
 この作品の見せ場である。
「どちらも」
「それにはそうした努力があったのね」
「朝の五時からなんていう」
「そうよね」
「五時起きどころか」
「それだけでも大変なのに」
「五時に入るんだよ」
 撮影現場にというのだ。
「そう考えたらね」
「大変よね」
「それで描いてもらって」
「あの場面ね」
「桜吹雪を見せるね」
「とくと拝みやがれって」
 そう言ってである、この辺りの台詞は演じる役者によって違う。金さんといっても色々なタイプがあるのだ。
「あの場面ね」
「あれはね」
「そこまでしてだったのね」
「ペーパーじゃなくてね」
「それだとすぐなのに」
「こだわりがあったんだよ」
 製作者側にだ。 
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