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ハッピークローバー

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第二十三話 安売りだったのでその十四

「大阪で生まれてな」
「大阪が大好きだったのよね」
「だから作品の舞台もな」
 それもだったのだ。
「大阪だったんだ」
「夫婦善哉とか」
「大阪の人達を書いていたんだ」
「それで大阪に住んでいて」
「幸せだっただろうな」
 愛していた街に住んでいてというのだ。
「少しの間と亡くなった時は東京にいても」
「東京で亡くなってそれで」
「大阪に帰ってお葬式が行われたんだ」
 一旦東京で行われ再び大阪で行われたのだ。
「そうだったんだ」
「あの人はそうなのね」
「それでお墓もな」
「大阪にあるわよね」
「上本町の方にな」
「近鉄の?」
「あそこにお寺が集まってる場所があるな」
 上本町の方にそうした地域があるのだ、豊臣秀吉が集めさせてまとめて見て治めやすい様にしたのである。
「あそこの中にあるんだ」
「そうなのね」
「だから今も大阪にいるんだ」
「大阪で眠っているの」
「幽霊が出るそうだがな」
「織田作さんの?」
「亡くなってから煙草屋にものを買いに来た話があるんだ」
 当時売られていたヒロポンをだ。
「そうした話もあるんだ」
「そうだったの」
「それで今もな」
 幽霊になっているならというのだ。
「大阪にいるのかもな」
「それだけ大阪が好きで」
「大阪を愛していてな」
 そうしてというのだ。
「幸せに過ごしているのかもな」
「そうなのね」
「織田作さんがそうだったからな」
 父はあらためて話した。
「咲もそこまで大阪が好きならな」
「ずっと大阪にいてもなのね」
「いいと思うぞ、本当にいい街だからな」 
 父も大阪への愛情を見せて話した。
「この大阪はな」
「親しみやすいわね」
「そうだな、しかしな」
「しかし?」
「奇麗な街じゃないな」
 笑ってこのことも話した。
「明るくて楽しくて食べものは美味しくて人情はあってもな」
「それはね」
 一華も笑って応えた。
「確かにね」
「奇麗な街じゃないな」
「ええ、街並みもそうでゴミも多くて」
「ごちゃごちゃとしてるな」
「そうした街よね」
「奇麗な街と言った人は聞かないな」
 こう言うのだった。
「やっぱり」
「大阪はそうよね」
「ああ、だからな」
 それでというのだ。
「そのことはな」
「誰も言わないわね」
「本当に言った人は知らないな」
 大阪が奇麗な街だとだ。 
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